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公開日 2017/09/19 14:01
シャープ「8Kアクオス」の魅力を開発者とクリエーターが熱く語る。「8K時代への流れは想定以上の速さ」
トークショー開催レポート
シャープの8K対応液晶テレビ「LC-70X500」の発売を記念したトークショーが開催された。
シャープからはTVシステム事業本部 国内事業部 8K推進部長の高吉秀一氏と栃木開発センター 第二開発部長の高倉英一氏、また8Kコンテンツ『LUNA』を製作した(株)ピクスの池田一真氏と(株)ロボットの諸石治之氏が出席。8Kハードウェア製作サイドと8Kコンテンツ製作サイドが、8K環境の現在について語りあった。
「LC-70X500」は12月1日に発売を予定している、初の8K対応となる70型液晶テレビ。市場想定売価は100万円前後(関連ニュース)。4K以上の解像度をそのまま表示可能であるほか、フルHDや4Kのソースを8K相当までアップコンバートする機能を搭載する。
トークショー前半では、このLC-70X500と8Kフォーマットの利点についてシャープの2名が解説。高吉氏は8K解像度の利点を「映像の臨場感、実物観、立体感が4K以上で、さらに美術品の細かな紋様・文字が見て取れるほど、今まで以上に高精細な表示ができる」と説明。8Kが映像にリアルさを感じるひとつの目安になっているというNHKの研究結果を引用しながら、2K、4Kからただ倍々に増やしてきたのではなく、体感できるメリットあっての8K導入であることを強調した。
2015年に発表された業務用8Kディスプレイから大幅に価格を抑え、100万円台で販売できる理由について司会から尋ねられると、「価格を抑えられたのは、FPGAで構成されていた内部パーツをICに置き換えられたことと、量産効果が主な理由。100万円台という価格設定は、それくらいがお客様に購入いただける上限だと分析したため」と答えていた。
LC-70X500と8Kディスプレイの紹介を終えた後は、8Kで制作された実写コンテンツ『LUNA』がLC-70X500で上映。制作に携わった池田氏と諸石氏の口から、企画の背景や実際の制作工程が詳しく語られた。
『LUNA』は池田氏が監督として、2016年にロボットが制作した実写映像作品。窓から差し込む日差し、街の夜景、月や星空など輝度表現をふんだんに盛り込んでいる。今回の上映では機材の都合上HDRではなくSDRによる上映ではあったが、演者の肌のキメまで表示する高精細さや輝度表現は8K以前のコンテンツとの違いを充分に見て取れた。
ディスプレイの高精細化やメディアの高度化が加速する中、「コンテンツメーカーとして8Kコンテンツのバリエーションや楽しみ方を提示するトライアル」として独自の作品を手がけてみようと考えたのが企画の大元だという。ドラマ仕立てとなったのは、それまでの8Kコンテンツはスポーツやドキュメンタリー、ライブ映像が多く、「一線を画した取り組みとして物語を中心にしたフィクションにしようという思いがあったため」とのこと。また、ポストプロダクションを担当する(株)イマジカが、渋谷に8K編集が可能なスタジオを開設したのもきっかけのひとつだったという。
制作にあたっては、「8Kらしい映像を強調するのではなく物語を主題として描く」「世界初の8K HDRドラマとして輝度のダイナミックレンジを生かし制作する」「実写とCGを組み合わせて新しい映像表現を切り拓く」という3つの課題を設けていたという。
製作現場に8K HDRが導入されるメリットとして、諸石氏は、「従来は0か1かしかなかった表現手法にレイヤーが生じ、様々な選択肢が選べるようになった」、池田氏は「ディスプレイの奥に本当に世界が存在する、という空気感まで表現できる」とそれぞれ変化を実感したようだった。
逆に従来の制作工程と比較して難易度が上がったのが映像合成や修正の作業。劇中1ヵ所だけ存在するグリーンバックの撮影シーンは違和感なく合成するのが難しく、演者の肌修正も作り物感が出てしまうため一切していないとのこと。その他にも色の出方、光の表現、解像度の向上によって見えてしまう映像の粗への対策など、できることが増えただけ苦労も多かったようだ。
撮影はソニーの8Kカメラ「F65RS」と、ハイスピード撮影が可能な4Kカメラ「Phantom Flex」を併用して撮影。作業用ディスプレイにはSDR用/HDR用を両方用いた。撮影したデータ量がかさみ、撮影日ごとにカメラからHDDへデータを完成した映像のデータサイズは5TB近く。映像素材にいたってはそれ以上で、HDD数個分にも登ったという。動画のレンダリング作業も「いままで煙草を一服すれば済んでいたものが、食事1回分にまで伸びた」(諸石氏)ということで、大容量データの処理速度が、制作現場における当面の課題となりそうだ。
制作スケジュールの特徴として、映像処理の工程が従来より非常に長く取られた。グレーディングなどHDRならではの処理や、CGと実写の合成、解像度を維持しながらのノイズ除去に労力を要したという。
イベントの終わりには、今後の8K時代到来を前にした思いをそれぞれの出席者が解答。池田氏は「キャンバスが広がったことで色々とできることが広がったので、トライしてお見せしたい」という制作への意気込みを、諸石氏は「サイネージによる空間演出など映像の新しい楽しみ方ができるのではないか」と表現方法の拡大について述べた。
高倉氏は「今回はSDRになってしまったが、次には『LUNA』をHDRでお見せできるような機器を開発したい」と8K機器のさらなる発展について意気込みを見せた。高吉氏は「カメラ、ビデオゲームなどでも8K対応を見込んだものが登場しており、8K時代への流れが想定以上の速さで驚いている。その中で新しい発見、使い方も出てくるのではないか」と8K業界全体の盛り上がりについて言及した。
シャープからはTVシステム事業本部 国内事業部 8K推進部長の高吉秀一氏と栃木開発センター 第二開発部長の高倉英一氏、また8Kコンテンツ『LUNA』を製作した(株)ピクスの池田一真氏と(株)ロボットの諸石治之氏が出席。8Kハードウェア製作サイドと8Kコンテンツ製作サイドが、8K環境の現在について語りあった。
「LC-70X500」は12月1日に発売を予定している、初の8K対応となる70型液晶テレビ。市場想定売価は100万円前後(関連ニュース)。4K以上の解像度をそのまま表示可能であるほか、フルHDや4Kのソースを8K相当までアップコンバートする機能を搭載する。
トークショー前半では、このLC-70X500と8Kフォーマットの利点についてシャープの2名が解説。高吉氏は8K解像度の利点を「映像の臨場感、実物観、立体感が4K以上で、さらに美術品の細かな紋様・文字が見て取れるほど、今まで以上に高精細な表示ができる」と説明。8Kが映像にリアルさを感じるひとつの目安になっているというNHKの研究結果を引用しながら、2K、4Kからただ倍々に増やしてきたのではなく、体感できるメリットあっての8K導入であることを強調した。
2015年に発表された業務用8Kディスプレイから大幅に価格を抑え、100万円台で販売できる理由について司会から尋ねられると、「価格を抑えられたのは、FPGAで構成されていた内部パーツをICに置き換えられたことと、量産効果が主な理由。100万円台という価格設定は、それくらいがお客様に購入いただける上限だと分析したため」と答えていた。
LC-70X500と8Kディスプレイの紹介を終えた後は、8Kで制作された実写コンテンツ『LUNA』がLC-70X500で上映。制作に携わった池田氏と諸石氏の口から、企画の背景や実際の制作工程が詳しく語られた。
『LUNA』は池田氏が監督として、2016年にロボットが制作した実写映像作品。窓から差し込む日差し、街の夜景、月や星空など輝度表現をふんだんに盛り込んでいる。今回の上映では機材の都合上HDRではなくSDRによる上映ではあったが、演者の肌のキメまで表示する高精細さや輝度表現は8K以前のコンテンツとの違いを充分に見て取れた。
ディスプレイの高精細化やメディアの高度化が加速する中、「コンテンツメーカーとして8Kコンテンツのバリエーションや楽しみ方を提示するトライアル」として独自の作品を手がけてみようと考えたのが企画の大元だという。ドラマ仕立てとなったのは、それまでの8Kコンテンツはスポーツやドキュメンタリー、ライブ映像が多く、「一線を画した取り組みとして物語を中心にしたフィクションにしようという思いがあったため」とのこと。また、ポストプロダクションを担当する(株)イマジカが、渋谷に8K編集が可能なスタジオを開設したのもきっかけのひとつだったという。
制作にあたっては、「8Kらしい映像を強調するのではなく物語を主題として描く」「世界初の8K HDRドラマとして輝度のダイナミックレンジを生かし制作する」「実写とCGを組み合わせて新しい映像表現を切り拓く」という3つの課題を設けていたという。
製作現場に8K HDRが導入されるメリットとして、諸石氏は、「従来は0か1かしかなかった表現手法にレイヤーが生じ、様々な選択肢が選べるようになった」、池田氏は「ディスプレイの奥に本当に世界が存在する、という空気感まで表現できる」とそれぞれ変化を実感したようだった。
逆に従来の制作工程と比較して難易度が上がったのが映像合成や修正の作業。劇中1ヵ所だけ存在するグリーンバックの撮影シーンは違和感なく合成するのが難しく、演者の肌修正も作り物感が出てしまうため一切していないとのこと。その他にも色の出方、光の表現、解像度の向上によって見えてしまう映像の粗への対策など、できることが増えただけ苦労も多かったようだ。
撮影はソニーの8Kカメラ「F65RS」と、ハイスピード撮影が可能な4Kカメラ「Phantom Flex」を併用して撮影。作業用ディスプレイにはSDR用/HDR用を両方用いた。撮影したデータ量がかさみ、撮影日ごとにカメラからHDDへデータを完成した映像のデータサイズは5TB近く。映像素材にいたってはそれ以上で、HDD数個分にも登ったという。動画のレンダリング作業も「いままで煙草を一服すれば済んでいたものが、食事1回分にまで伸びた」(諸石氏)ということで、大容量データの処理速度が、制作現場における当面の課題となりそうだ。
制作スケジュールの特徴として、映像処理の工程が従来より非常に長く取られた。グレーディングなどHDRならではの処理や、CGと実写の合成、解像度を維持しながらのノイズ除去に労力を要したという。
イベントの終わりには、今後の8K時代到来を前にした思いをそれぞれの出席者が解答。池田氏は「キャンバスが広がったことで色々とできることが広がったので、トライしてお見せしたい」という制作への意気込みを、諸石氏は「サイネージによる空間演出など映像の新しい楽しみ方ができるのではないか」と表現方法の拡大について述べた。
高倉氏は「今回はSDRになってしまったが、次には『LUNA』をHDRでお見せできるような機器を開発したい」と8K機器のさらなる発展について意気込みを見せた。高吉氏は「カメラ、ビデオゲームなどでも8K対応を見込んだものが登場しており、8K時代への流れが想定以上の速さで驚いている。その中で新しい発見、使い方も出てくるのではないか」と8K業界全体の盛り上がりについて言及した。