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公開日 2019/09/09 15:01

日本参入4年。“最高のホームエンターテイメント体験”を実現するために、Netflixがしていること

テレビやコンテンツの未来も含めた取り組みと展望を紹介
編集部:小澤麻実
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Netflixが日本でサービスインしてから、この9月で4年になる。同社は、「最高のホームエンターテイメント体験を実現する」ための取り組みについて改めて説明するプレス向けイベントを実施した。

PHILE WEBでは2015年から折々でインタビューや本社取材を行ってきたが、振り返って見えてくるのは同社のぶれない戦略だ。

2015年7月に行ったインタビューでは、事業の重要な成長要素として「テクノロジー」「コンテンツ」を挙げていた(記事はこちら)。

スムーズに動画を楽しめるようにするデータバッファリングや使いやすいUI、ユーザーに合わせたコンテンツのキュレーション。テレビメーカー等との連携。Netflixでしか見られないオリジナルコンテンツの制作推進や、4Kといった高品位フォーマットでのコンテンツ提供…。今回行われた発表会で紹介されたのも、まさにこれらの点。この4年間で重ねてきたブラッシュアップへの挑戦とその成果、そして新たな取り組みについてアピールを行っていた。

Netflix プロダクト最高責任者のグレッグ・ピーターズ氏

バッファリング軽減のための動画データ軽量化への取り組み

2015年以前は全てのコンテンツを画一的にエンコードしていたが、2015年からはタイトルの特性に合わせて実施するように。現在はさらに細分化され、ショットごとにエンコーディングを行う「プレ・ショット・エンコーディング」を採用しており、最低250kbpsまで抑えられるようになったという。

エンコードの最適化を進め、低ビットレートでデータを伝送できるようになったことをアピール

こうした取り組みによって、データ通信量1GBで視聴可能な時間は2015年以前は1.5時間だったところ、現在は6.5時間に。「1GB以下で『全裸監督』全8エピソードが全部見られます」(Netflix エンジニアリング・マネージャーのテヤン・ファン氏)。

また、コンテンツ配信についても、全世界のNetflix提供国からアメリカ本社のサーバーにアクセスさせるのではなく、各地域のISPと契約を結んでサーバーを設置。一部は日本にも置かれているという。これによりトラフィックを分散し、遅延を抑えられるため、快適な視聴体験を提供できるとアピールされた。

各地のローカルサーバーで使用されているもの。これ1台で100TBほどのデータ保存が可能だという

変化するネットワーク環境に対応すべく、コンテンツをセグメント分けして最適な画質に切り替えているという

そして常に変化するネットワーク環境のなかで、コンテンツを途切れることなく再生させるため、2秒ごとのセグメントに分け、ネットワーク環境に合わせて画質レベルを切り替えていることが紹介された。


タグづけやUI最適化によるコンテンツキュレーション

ユーザーが最小限のアクションで最適なブラウジングが行えるよう、コンテンツキュレーションやUIにも工夫が凝らされている。

各作品には、人力でタグを付与。さらにユーザーを、国籍や性別ではなく行動履歴を基準にした趣向でセグメントして分析し、キュレーションを行っている。

作品ごとに人力でタグを付与。登録時の好きなタイトル情報や行動履歴を基準にセグメント分けし、最適なコンテンツキュレーションを行う

表示させるイメージも、同一作品に複数を用意し、ユーザーのセグメントごとに最適なものを表示。どのユーザーがどのイメージに反応したのかや、これまでの視聴習慣などを付け合わせて分析を行い、精度を上げていくという。なお同じユーザーでも、視聴時間ごとにおすすめは変えているのだという。

「様々なユーザーの好みがある」ことから、1つの作品でも様々なイメージを用意して最適なものを表示していくという


メーカーとの連携による対応デバイスの拡大。特にテレビでの視聴推進に投資

直近ではJ:COMとのSTB共同開発を発表したりと(関連ニュース)、対応デバイスを着々と増やしているNetflix。その数は現在1,700以上にものぼり、多岐にわたる利用シーンをサポートしている。

対応デバイスを着々と増やし、多岐にわたるユーザーの視聴シーンをサポートしている

先日発表されたばかりの、J:COMと共同で開発するSTB「J:COM LINK」

なかでもテレビ=自宅で視聴すると視聴時間が増えることから、同社は「テレビでの視聴」を重視し、投資を行っているのだという。

登録時はモバイルの比率が高いが、6ヶ月後はテレビでの視聴が増加するというデータを提示

参入当初からテレビメーカーと積極的に協力しリモコンへの専用ボタン設置やて“Netflix推奨テレビ”の認定(関連ニュース)、ソニーとの「Netflix画質モード」の共同開発(関連ニュース)などの取り組みを行ってきたことを説明。現在、Netflixに接続するスマートTVの3台に1台がHDR対応。1,000時間以上のHDR対応コンテンツと、2,000時間以上の4K対応コンテンツを用意している。

テレビメーカー等とも積極的に連携。リモコンへの専用ボタン設置や“Netflix推奨テレビ”の認定などを行っている

発表会には、2019年度の「Netflix推奨テレビ」に認証されたソニーとパナソニックのテレビ開発に携わる小倉敏之氏と柏木吉一郎氏が登場。リビングにシネマ体験を届けるために、テレビに必要なものについて考察を披露した。

小倉氏は「テレビがまず進化し、それにコンテンツデリバリーがついてくるというコンテンツエコシステム全体の進化が大切。テレビの進化とは、視聴体験の進化。つまり画質・音質、視野占有率(画面の大きさ)、コンテンツに簡単に辿り着くためのUIの進化だ。画質については、マスターモニターで実現できていた制作者の意図と全く同じものを出すことが重要。輝度や色の正確な再現だけではなく、大画面でもマスモニの密度感まで出したいと考えている」とコメント。

ソニーの小倉敏之氏

パナソニックハリウッド研究所(PHL)に2001年から赴任し、H.264などの開発に従事していた柏木氏は「PHLに劇場と同じ設備を作って、クリエイターやエンジニアたちと意図が再現できているか確認しあいながらテレビ開発を行ってきた。パナソニックの4K/HDRの有機ELテレビはハリウッドのマスタリング現場でも使われている。家庭に提供しているテレビを、スタジオでも使ってもらえるようになった。いかに余計なものを足さず、引かず、意図をそのまま伝えるか。黒子に徹するということがいちばん重要で、いちばん難しいこと。でもこれを理念としてずっと開発を行っている」と語った。

パナソニックの柏木吉一郎氏

また、今後のテレビの進化について両氏は以下のように語った。

「テレビには、まだまだ進化する余地がある。『画質』とは『解像度』『ビット深度』『フレームレート』『色域』『ダイナミックレンジ』で構成されているが、これらは進化の余地がまだあるので、そこをどんどん追求していきたい。でもそれにはコンテンツがなければ意味がなく、それを実現してくれるのがNetflixだと思っている。Netflixとソニーのコンビは、史上最強だと思っている」(小倉氏)

「『シネマ体験を家庭で』という理念でテレビ開発を行ってきたが、この点においてはある意味ほぼ頂点を極めつつあるのではと思っている。パナソニックの最新モデルはDCI-P3のカバー率ほぼ100%だし、階調表現力など全てにおいて素晴らしい。4K/HDRテレビのベースはRec.2020で、世の中に存在する物体色の99.9%を表現できる。一方で、映画で使っているのはこの70%くらい。つまり映画自体が、残り30%くらい進歩の余地がある。そこが進化していけば、映像表現がもっと広がるのかなと思う。Netflixがそういうコンテンツを作ってくれることを期待している」(柏木氏)


高品位オリジナルコンテンツへの投資。
プロダクションI.Gと共同で世界初の4K/HDR手描きアニメ「Sol Levante」制作


Netflixと言えば、質実ともにクオリティの高いオリジナルコンテンツを多数制作している点も魅力だ(発表会では8月に配信開始したばかりの『全裸監督』の成功が随所でアピールされていた)。

現在はプロダクションI.Gと共同で、世界初の4K/HDR手描きアニメ「Sol Levante」を制作中(関連ニュース)。2019年内に世界190カ国へ配信予定だ。

「Sol Levante」画面イメージ

NetflixではSDRで制作された一部のアニメ作品をより高画質なHDRにリマスタリングして配信する試みを2016年から実施中だが、「Sol Levante」は、今後の4K/HDRアニメ作品制作の本格化を見据え、大元の制作現場から4K/HDR対応をするという挑戦だ。

3DCGではなく従来のアナログ的な“手描き”で作る4K/HDRアニメは本作が世界初とのこと。「Sol Levante」の監督・演出を務めた齋藤 瑛氏が登場し、作画技術監督の江面 久氏らもコメントを寄せた。

「Sol Levante」監督・演出 齋藤 瑛氏


発表会でも流れた「Sol Levante」メイキング映像

「デジタル技術の進歩が、作品の表現を高める方向ではなく、テレビシリーズを大量に回していく方向に使われていると感じていました。アニメの可能性はこんなものじゃないはず…と模索していたところ『4K/8K』という言葉が目に入るように。これは新しい映像表現にチャレンジできるぞ!ということで、2012年くらいから作画環境構築なども含めて研究していたんです」と語る齋藤氏。環境構築にあたっては、ケーブルを1本換えるだけで色が変わってしまったり、1万ピクセルを超えたくらいからシステムがクラッシュしたり…といった苦労もあったという。

「いまはモニターの選択肢も増えたりと、機材面が追いついてきたなと思います。でもハード面の整備もそうですが、人間側がいかに新しいツールに切り替えていけるか、ということも難しい。意識改革がいちばん深い問題だと思います」と課題も語る。

しかし、「現場で作業していると、SDRの世界だと諦めなければいけないことが沢山ありました。一定以上の明るさは全部白になってしまうとか…。4K/HDRによって、想像という翼に、技術という動力が追加されたように感じます。実写はカメラで物を撮ることからスタートですが、アニメは“想像すること”からスタートします。たった1本の線で入れたハイライトで、キャラの立体感が全く変わったりする。人だからこそ生み出せるものというのがある。4K/HDRはそこにふんだんに応えてくれるもの。アニメこそ、4K/HDRの表現を活用してその力を享受できるコンテンツだと思います」と、その可能性について語っていた。




Netflix プロダクト最高責任者のグレッグ・ピーターズ氏は「あらゆる人にあらゆる場所で感動を提供していくことがNetflixのミッション。素晴らしいコンテンツを届けるために様々なデバイスでの視聴に対応していくし、パートナーとの協業も行っていく。素晴らしいクリエイターが実現したいビジョンをできるだけそのまま届けられるよう、4Kやドルビーアトモスといった対応も推進していく」とコメント。今後は4Kコンテンツがデフォルトになるという姿勢を表明した。

なお、さらなる高品位映像の追求として8Kへ取り組む考えはあるか、という質問については「今すぐ8Kに取り組むことはない。まずは4K/HDRやドルビーアトモスのタイトルを増やすこと、“Netflix画質モード”などで、ユーザーの手元に届く質を確実に担保する方が大切だと考えている」とコメントした。

Netflixは向こう12ヶ月で16のオリジナル作品を公開予定。「今後も日本への投資を継続していき、日本の素晴らしい作品を、世界中に届けていくという使命を果たしていきたい」と語った。

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