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公開日 2023/08/01 10:25

SCEA、「Sマーク」認証のさらなる定着で電気製品に対する消費者の安全確保を目指す

多発するリチウムイオン電池関連製品の事故についてNITEの講演も
PHILE WEB ビジネス編集部・竹内純
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■新たな広報活動を積極展開、「Sマーク」認知度は31%に上昇



電気用品の安全のための第三者認証制度「Sマーク」の妥当性の確保および普及促進のための広報活動等を行う電気製品認証協議会(SCEA)は、「2023年度定時総会」を開催した。併せて、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)による「リチウムイオン電池関連製品の事故実態及び原因と対策」と題した講演会も催された。

最新のWEBアンケート調査によるSマークの認知度は31%に上昇する

定時総会では、第三者認証制度としてのSマーク認証の信頼性向上を図る基本問題専門部会と広報専門部会の2022年度の活動を中心に報告。広報専門部会においては、特に一般消費者に向けたSマークの広報・普及促進のために「Sマーク広報推進WG」を発足し、様々な広報ツールを用いた新たな広報活動を進めている。

SNS(Twitter)を活用したSマークの情報発信・拡散をスタート、文化放送のラジオ番組「おとなりさん」と連携したCM・WEB記事・Twitter企画の複合展開、Sマークの取得に積極的な輸入事業者の紹介、セミナーでは目玉に据えた初の中国語による講演を数多くの中国エンジニアが視聴し、中国からの輸入製品のSマーク普及にも期待が高まる。また、小学校の家庭科の授業でSマーク教材(副読本)を採用いただくために全国小学校家庭科教育研究会へアプローチを計画している。

2年前よりWEBアンケート形式を採用して行われているSマーク認知度調査の2022年度の結果は31.0%となり、前年度の28.0%から3.0ポイントアップ、前々年度の25.3%からは5.7ポイントアップとなり、積極的な広報活動が奏功し、着実に上昇カーブを描いている。

ただし、同調査における「電気製品の購買時に銘板にSマークが付いているか確認する」という質問への回答は20.0%で、「認知度とは隔たりがあり、単に知っていることと購買活動につながるかは別物であると再認識することが必要」との見解を示す。任期満了後、引き続き会長に再任された横山明彦氏は「毎年数字が上がっているのはとてもいいこと。今後とも引き続き認知度の向上を図っていく」と大前提となる認知度を高めていくために、さらに気を引き締めて臨む姿勢を訴えた。

電気製品認証協議会 会長・横山明彦氏

2023年度の活動計画としては、我が国の電気製品を取り巻く環境が複雑化していくなか、その安全性向上に貢献するため、「2023年度活動計画」として次の5つの項目を掲げた。

▼Sマーク認証のさらなる普及と新たな定着に向けた取り組みの検討・実施
▼Sマーク認証基準の検討、市場買い上げ、リコールの事実関係調査等の実施
▼Sマーク付き電気製品の店頭普及実態調査および各種広報活動の実施
▼行政機関や流通事業者等へのSマーク認証の活用の要望
▼「国際情勢の把握と対応」

Sマーク認証のさらなる普及と持続的な定着を目指し、より一層の信頼性向上と普及促進に努めていく構えだ。

■リチウムイオン電池関連製品の事故防止は「正しく作る・使う・捨てる」



定時総会に引き続き、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)より、製品安全センター 燃焼技術センター センター長・神山敦氏を招き、「リチウムイオン電池関連製品の事故実態及び原因と対策」と題した講演会が催された。

独立行政法人製品評価技術基盤機構 製品安全センター 燃焼技術センター センター長・神山敦氏

1990年代の携帯電話(ガラケー)の普及に伴い採用に広まりを見せはじめたリチウムイオン電池は、現在ではスマートフォン、モバイルバッテリー、充電式掃除機、電動アシスト自転車、電動工具、携帯型扇風機など多岐にわたる製品に採用されている。

神山氏は、2000年過ぎに海外メーカー間による激しい価格競争で安価な商品が出回るようになると、品質管理が不十分な一部の海外製品を中心に事故が目立ち始めたと説明。製品別の事故発生件数は、当初はノートパソコンが目立ったが、ここ数年はモバイルバッテリー、電動工具、充電式掃除機で増えている。

近年は電動工具や充電式掃除機の海外製非純正バッテリーによる事故発生が増えている

とりわけ、事故が多発したモバイルバッテリーは、2018年に電気用品安全法の規制対象となり、技術基準への適合や出力電圧・外観についての全数検査等が求められるようになったものの、「事故発生件数はなかなか減少していない」と厳しい状況が継続している。

また、電動工具や充電式掃除機では、「海外メーカーの非純正バッテリーによる事故発生が増えている。純正バッテリーを模倣して設計された安価なもので、いいものも悪いものもあり、粗悪品が事故につながっている」と非純正バッテリーの危険性を指摘する。

ネットにも多数の事故事例が報告されているが、非純正バッテリーが抱える主なリスクを次のようにまとめている。
▼純正品と比較すると、設計・品質に問題があり、異常発生時に安全保護装置が作動しないリスクが高い
▼純正品と比べて品質管理が不十分な場合があり、普通に使っても事故に至るリスクが高い
▼事故が発生しても、取り付けた機器のメーカーの対応や補償を受けられない場合がある
▼リサイクルルートが確立されていないなど、廃棄が困難な場合がある

非純正バッテリーは純正メーカーが承認しておらず、「互換バッテリー」と称して販売されているケースが多い

様々な事故原因を分析してまとめると、「電池の品質管理不良」「製品に組み込む部品の品質管理不良」「製品組み立て時の作業不良」が挙げられ、これらの品質管理の不良になぜ気づくことができなかったのかについては、輸入事業者等が“製造事業者が高度な製造技術により、十分な安全性を考慮した設計のもと、常に同じ仕様の部品を用いて製品を組み立てている”と過信している点に落とし穴があると指摘した。

事故を未然に防止するため、「取り扱っている製品を輸入事業者自らきちんと確認する」「部品や仕様を変更する際、製造事業者からきちんと報告を受ける」「製造工程の検査記録に不備がないか確認する」「一般的に求められている安全装置・機構を備えているか確認する」などを輸入事業者自身が確実にチェックするよう訴えた。

なお、丸型PSEについては、対象となるのは交換タイプのバッテリーとモバイルバッテリーで、製品の中に組み込まれているリチウム電池は対象外となっている。

最後に、神山氏は事故を防ぐための心構えと行動として、「正しく作る、正しく使う、正しく捨てる」と力を込めた。なお、3つ目の“正しく捨てる”では近年、リチウムイオンバッテリーが不適切に不燃ごみやプラスチックごみとして捨てられ、押しつぶされたり破断したりすることで発火し、ごみ収集車やごみ処理施設での火災事故が多発している。多額の修繕費用が必要となったり、ごみ処理の受け入れが滞ったり、市民生活に支障をきたす社会的な問題としてクローズアップされている。

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