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公開日 2024/03/18 15:30

クアルコム、準フラグシップ新SoC「Snapdragon 8s Gen 3」。ハイコスパAIスマホ向け

マルチモーダルAI処理を強化
山本 敦
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クアルコムは米国時間3月17日、モバイル向けシステムICチップ(SoC)のフラグシップシリーズに「Snapdragon 8s Gen 3」を新しく追加することを発表した。新チップは昨年秋に発表した「Snapdragon 8 Gen 3」の生成AI関連の性能などを引き継ぎつつ、いくつかの機能を省いて全体にバランスを整えた準フラグシップに位置付けられる。

クアルコムは、生成AI対応を図りつつバランスのよい設計を重視したハイクラスのSoC「Snapdragon 8s Gen 3」を発表

クアルコムはプレス発表の中で具体的な時期、および端末の価格帯については言及していないものの、今後数か月以内にSnapdragon 8s Gen 3を搭載するプレミアムAndroid端末を商品化する可能性があるメーカーとしてHonor、iQOO、realme、Redmi、Xiaomiの名前を挙げている。今後、高性能でコスパも良いAIスマートフォンの普及拡大に貢献する、定番のチップになることが期待される。

■Snapdragon 8s Gen 3の特徴:マルチモーダルAI処理を強化



Snapdragon 8s Gen 3と同様、型名に「s」が付くクアルコムのモバイル向けSoCにはミドルハイクラス向けの「Snapdragon 7s Gen 2」がある。現在7シリーズのSoCには上位スペックの「Snapdragon 7+ Gen 2」や、性能とコストパフォーマンスのバランスを揃えた「Snapdragon 7 Gen 3」もある。新たに加わる8s Gen 3は、現行最上位である8 Gen 3とこれら7シリーズとの間に位置付けられる。製造プロセスルールは8 Gen 3と同じ4nmになる。

最大の特徴は、搭載端末にオンデバイス処理で複雑な生成AI処理を完結させる機能を提供することだ。中核にはクアルコム独自のAIエンジンがある。クアルコムによると、そのエンジンがLlama 2、Gemini Nano、Baichuan-7Bなど複数種類のバイリンガル大規模言語モデルを処理できる能力を備えているという。テキストに音声、画像、センサー情報など種類の異なるデータを掛け合わせるマルチモーダルAIモデルの対応も強化した。これによりテキスト情報を入力して意中の画像データを生成するような機能を、スマホなどの端末に組み込むことが容易になる。

8 Gen 3と同じ4nmプロセスルールにより製造される

8s Gen 3チップに統合されている8コアのKryo CPUはプライムコアが1基(最大3.0GHz)、パフォーマンスコアが3基(最大2.8GHz)、高効率コアが4基(最大2.0GHz)という構成。8 Gen 3のCPUも8コアだが、コア構成が1基のプライムコア(3.4GHz)、5基のパフォーマンスコア(最大3.2Ghz)、2基の高効率コア(最大2.3GHz)という内容になる。クアルコムでは、8s Gen 3チップが駆動時に消費する電力効率も考慮に入れつつ、生成AI関連も含む様々な機能を軽快にこなせるバランス重視の設計であることを特徴にうたっている。

Adreno GPU、Hexagon NPUの設計は上位チップの8 Gen 3と同じ。モデムは8s Gen 3がSnapdragon X70 5G。クアルコムが2022年に発表したRFシステムに5G AIプロセッサーを組み込んだ5G対応の通信用チップセットだ。8 Gen 3には5G-Advanced readyを加えた最新のモデムSnapdragon X75を搭載する。

■Snapdragon「8 Gen 3」と「8s Gen 3」との違いは「カメラまわりの機能」



8s Gen 3はカメラまわりの機能がいくつか省かれている。8 Gen 3との主な差分は、8K HDRビデオ/64MP静止画撮影、4K/120pビデオ撮影、720p/960fpsのハイフレームレート撮影、AIノイズリダクション効果を聞かせた4K/60fpsの暗所撮影が8s Gen 3で省かれることだ。

生成AI関連の機能強化がテーマとされるチップセットでありながら、C2PAに準拠するデジタルスタンプにより、デジタル画像データの真贋を見分けるTruepicのメタデータ解析技術への対応が8s Gen 3に含まれていない点はやや気がかりだ。

ワイヤレスオーディオはBluetooth、LE Audioまわりが同スペックとしているが、8s Gen 3にはQualcomm XPANの超低消費電力Wi-Fiオーディオ伝送技術が搭載されない。XPANによるプレミアムオーディオ体験は、今後しばらくは8 Gen 3を搭載するプレミアムクラスのモバイル端末でのみ楽しめることになりそうだ。

デジタル画像処理に関わる機能は一部省かれるが、写真データの拡張機能「Photo Epansion」などAIを活かしたインテリジェント機能の実装は確保される

今年はスマホなど、コンシューマ向けのデジタルデバイスで利用できる生成AI関連のサービスや、ユーサーのクリエイティビティ・生産性を高める機能がさらに充実する展開が予想できる。一方でクラウドを使わずに、生成AIをデバイス上の処理で快適に動かせる端末は、Snapdragonのようなモバイル向けSoCもハイクラスのチップを搭載することでメリットを生み、競争に対して強くなる。

Bluetoothオーディオのプレミアム機能は8 Gen 3と8s Gen 3との間で変わらない

いまのところプレミアムクラスに位置付けられるスマホの新製品は価格高騰が続いている。多くのコンシューマーが気軽に生成AI関連の先端機能を楽しめるスマホが、クアルコムの新しいSnapdragon 8s Gen 3の誕生によって普及することを期待したい。発表後に最も早くこのチップを搭載するスマホにも注目が集まりそうだ。

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