公開日 2019/05/23 15:27
富士フイルム、1億2百万画素センサー搭載で“世界最高画質”謳うミラーレス「GFX100」
手ぶれ補正搭載、4K動画に対応
富士フイルムは、1億2百万画素の裏面照射型CMOSセンサーを搭載した中判ミラーレスデジタルカメラ「GFX100」を6月下旬に発売する。価格はオープンだが、1,225,000円前後での実売が予想される。
昨年9月に開発発表が行われ(関連ニュース)、その後フォトキナやCP+(関連ニュース)においてモックが展示されていたモデル。今回、正式発表が実現した格好だ。
今回の発表にあたり、都内で「FUJIKINA 2019 東京」が開催され、発表会およびタッチアンドトライ、写真作品の展示が行われた。発表会ではまず、同社代表取締役会長・CEOの古森 重隆氏が登壇し、事業戦略について語った。こちらの模様は後述する。続いて同社光学・電子映像事業部長 飯田 年久氏が登壇し、製品の発表を行った。なお本稿では、発表会後に行われたメディアセッションでの技術的説明も交えて紹介したい。
■102MPの裏面照射型CMOSセンサーを搭載
今回102MP(メガピクセル)の製品を発売したことに対して、飯田氏は「やりすぎだという声もあるかもしれません」と述べ、その上で “写真の本質” が貴重な瞬間を将来に残すことであるならば、「GFXこそが将来のために記録を残していけるカメラ」だとアピール。「素晴らしい貴重な瞬間は、写真で撮らない限り振り返れない」と強調した。
民生用ミラーレスデジタルカメラでは世界最高となる、1億2百万画素を実現したイメージセンサーを搭載。対角の長さは55mmで、一般的にフルサイズ(対角43mm)と呼ばれるサイズと比較すると面積1.7倍だ。これまで中判(ミディアムフォーマット)と呼ばれることが多かったサイズだが、飯田氏はフィルム時代の名残だった言い方を改め、デジタル時代では「ラージフォーマット」と呼んでいきたいと説明した。
同社がGFXシリーズからラインナップする従来モデル「50S」「50R」では約5,000万だった画素数を倍増させただけでなく、2つの新しい技術を搭載している。1つは裏面照射センサーを採用したこと。通常のセンサーではマイクロレンズ→アルミ配線→フォトダイオードという構造だが、これをマイクロレンズ→フォトダイオード→配線といった順にすることで、フォトダイオードがより効率的に光を取り込めるようになった。
2つめとして、通常配線にはアルミが採用されるが、今回のモデルでは銅を採用。アルミと比較して60%速度がはやく、これによってノイズの減少や通信速度の向上が可能だという。なおこれら2つの技術は、ラージフォーマットでは初めてとアピールとした。
感度では、ISO102,400に対応。通常は画素数が多いと個々のピクセルが小さくなってしまい、ノイズを増やすことにつながってしまうが、GFX100ではセンサーが大きいので、暗い場所でもしっかりと捉えることができると説明。またセンサーが大きいことで、14stosというより広いダイナミックレンジも持っているという。
画像処理エンジンには、同社APS-Cモデルの「X-T3」などに搭載する「X-Processor 4」を採用する。伝統的なラージフォーマットのカメラは処理が遅かったとのことだが、このプロセッサーを搭載することで、決定的な瞬間も逃さないように設計したという。またフォトグラファーの声に応え、16bitのRAW/TIFFに対応した(画像処理エンジンからの出力は10bit)。なお16bitでTIFFを撮影した場合、ファイルサイズは約200MBに及ぶという。
■関東平野にゴルフボールが1つ転がるほどの誤差基準
発表会では、センサーだけでなく「レンズ」も重要な技術だと強調。GFXシリーズの登場時から、100MPクラスに対応させたレンズラインナップを展開してきたとする。
同社では8Kや4Kといった映像用のレンズも製造しており、これに求められる許容誤差精度を例えると、関東平野にゴルフボールが1つ乗っているようなものだという。この技術はGFXにも継承されており、「GFXのみが102MPに届くことができる」とアピールした。
■シリーズ初の位相差AFを搭載
ラージフォーマットとして初となる、像面位相差に対応する。イメージセンサー上には378万個の位相差画素が配置されることで、0.05秒のAFを実現。さらにカバー率は約100%とのこと。また低照度下でのAFは-2EV(F2.0)となっている。
本機のイメージセンサーはX-3や「X-T30」に搭載されている「X-Trans CMOS 4」という最新世代。前世代では60データ(5エリア×4エリア×3パターン)で検出・演算を行っていたが、最新世代では4倍の240データ(5エリア×8エリア×6パターン)を用いることで、より正確なAFに対応している。
これによって、顔・瞳検出AFの精度も向上しており、より遠くの被写体、顔が横を向いた場合、障害物に遮られた場合であっても、従来より高い追従性を発揮するという。また複数人の被写体がいた場合に誰にピントを合わせるか選ぶことができる「顔セレクト」も新搭載。そのほか位相差画素で常時センシングを行うことで、距離差の大きい被写体間のAF動作において最大300%高速化する「ノンストップ位相差AF」にも対応する。
肌のレタッチを自動で行う新機能「スムーススキンエフェクト」も搭載した。これは撮ったままの状態でそのまま仕事に使えるようにという、同社の目標によるもので、プロの現場で撮影した場合でも後処理をせずに、そのまま成り立つことを目指したという。そのため、肌を塗りつぶすような印象ではなく、「効いているか効いていないかわからない」くらいに仕上げているとのこと。オフ/弱/強から効果を選択することもできる。
■世界初のボディ内手ぶれ補正機構
35mm以上のフォーマットでは世界初となる、ボディ内手ぶれ補正も搭載。5軸手ぶれ補正となり、最大5.5段(63mm時)の補正に対応する。動画撮影時でも補正が利用可能だ。X/Y/Zの3軸加速度センサーによってぶれを検出し、3軸ジャイロセンサーが角度と回転のぶれを検知、これを独自の「専用デュアルプロセッサー」で毎秒10,000回の演算を行うことで、補正を実現している。
ボディ内手ブレ補正を搭載した背景には、「102MPという高解像度を生かすために、3脚や高速シャッタスピードでの撮影が必要では、使いにくいカメラになる」という懸念があったとのこと。一方で、開発は簡単ではなかったという。まずセンサーの重さは、フルサイズと比較して約2倍で、これをコントロールするために、駆動モーターのトルクは2倍に、そして可動部の改良が必要だったという。
つぎにセンサーが傾いてしまうことで、レンズと並行が保てず、片側がボケてしまうこと。102MPではよりシビアな精度が要求されるため、ユニットに使用するセラミックボールの製造誤差は、3mmの直径に対して約5μm。またセンサー自体の歪みも公差約20μmなど、各部品で精度が追求されている。
また手ぶれ補正だけでなく、シャッター自体のぶれレにも配慮。フルサイズと比較するとシャッター時のエネルギーは4倍にもなるとのこと。これを「ショックアブソーバー」で吸収する構造を採用することで、内部からのぶれ発生の抑制も目指した。
本体はマウント/フロントケース/インナーフレーム/シャッター/手ぶれ補正ユニット/センサー/リアフレームという構造になっている。これをマウント/インナーフレーム/手ぶれ補正+センサーから成る光学部分、フロントケース/シャッター/リアフレームという外装+シャッターという構造にし、これらをショックアブソーバーで繋いでいる。このように光学部分を“吊るす” 構造を採用することで、シャッターのブレをセンサーに届けないようにしたという。また重いレンズを付けた際にセンサーに与える負荷を軽減する役目もあるとのことだ。
■ラージフォーマットとして世界初の4K30p動画
動画では4K30pの撮影が可能。従来大型のフォーマットでは4K24pまでしかなく、30pまで撮影可能なのは世界初だという。プロ仕様を想定し、SDカード記録時には4K 30p 10bit 4:2:0、HDMI出力時には4K 30p 10bit 4:2:2に対応する。
本機のイメージセンサーをシネマ用カメラと比較すると、55mm LF DCI 4Kとほぼ同様のサイズで、Vista Visonよりも大きい。これにより、一部のトップエンドでしか撮影できなかったラージフォーマット特有の立体感、浅い被写界深度、豊かな階調を活かした動画を撮影することができるしている。また先述したがボディ内手ぶれ補正は動画撮影時にも使用可能。像面位相差AFや瞳・顔検出AFも動画撮影で用いることができる。
4Kの記録時には11604×4352からオーバーサンプリングすることで、高画質を追求。コーデックはH.265とH264(8bit)に対応し、ビットレートは最大400Mbpsに対応。F-logやHLGでの記録が可能で、本体での音声記録は48kHz/24bitに対応する。
従来は動画撮影時には1本が29分59秒と上限が決まっていたが、今作ではXシリーズ/GFXで初めてこの上限を廃止。60分までの撮影が可能となった。またシネマフィルムシミュレーションとして、「ETERNA(エテルナ)」を初搭載した。
■EVF+3つのモニターを搭載
背面モニターは3.2型(約236万ドット)となり、3方向チルトやタッチ操作に対応する。加えて背面モニター下部には、モノクロOLEDによる2.05型(256×64ドット)のサブモニターが新たに採用された。このサブモニターにはシャッター速度や絞りといった情報、機能の設定、露出ゲージ、ヒストグラムなどが表示可能で、切り替えたりカスタマイズを行うことができる。
さらに天面には、1.80型(303×230ドット)のサブ液晶モニターを搭載。バックライト付きのメモリー式液晶となっているため、電源を切っている状態でも情報を確認できる。静止画/動画用でそれぞれ別の情報表示が可能なほか、ヒストグラムの表示、ダイヤルデザインを表示する「バーチャルダイヤルモード」から切り替えることができる。
XシリーズやGFXシリーズの特徴であるメカニカル式のデザインを採用せず、電子ダイヤルを採用したのは、プロの現場を想定したことが大きいという。PCと接続するテザー撮影などを行った場合、PCからの設定と物理的なダイヤルが示す設定が異なってしまうという。
一方、電子ビューファインダーでは、新開発の576万ドット有機EL電子ビューファインダーを搭載。より解像度の低いファインダーも当初は検討したが、102MPを生かすためにこの解像度を採用することになったとのこと。ファインダー倍率0.86倍となっており、さらにより拡大したピント確認ができるように、24倍の拡大にも対応する。ファインダーは着脱可能ではあるが、従来機種との互換性はない。なお別売(発売済み)のEVFチルトアダプター「EVF-TL1」の装着には対応する。
■高信頼性を目指したボディ
ボディには、縦位置グリップ一体型マグネシウム合金製ボディを採用し、軽量・高剛性を目指した。ボディに76、EVFに19の計95か所にシーリングを施すことで、高い防塵・防滴性能と-10度の耐低温構造を実現したとする。メディアスロットはSD×2のデュアルスロットを採用する。
シャッターユニットは、150,000回の耐久性を備えた新設計。最速5枚/秒の連写が可能で、電子先幕シャッターに対応する。なお電子先幕シャッターで高速シャッターを行うと、ボケが半円に削られるなど画質上に影響が出るとのことで、1/1250以上のシャッター速度では自動的にメカニカルシャッターに切り替わる仕様となっている。
バッテリーは従来機と同様のNP-T125を採用し、2個同時に搭載が可能だ。高画素化に加えてボディ内手ぶれ補正によって電力消費が増えないよう省電力化に力を入れ、消費電力を同水準に抑えた。これにより背面液晶モニター使用時には、従来の2倍となる約800枚の撮影が行える。またUSB PDに対応しており、給電・充電も可能だ。そして動画では、4K撮影時(顔認識OFF)で、実使用約100分、連続使用170分の撮影が行える。
外形寸法は156.2W×163.6H×102.9Dmm(EVF装着時)で、最薄部の厚みは48.9mm。またバッテリー2個、メモリーカード、電子ビューファインダーを含んだ状態での質量は約1400gとなっている。
■カメラ業界が悲観的なのは、“真に革新的な製品”がないから
冒頭で述べたように、発表会のはじめには同社代表取締役会長・CEOの古森 重隆氏が登壇した。まず「この2年間はデジタルカメラの転換期となった」と述べ、現在のカメラ市場はデジタルミラーレスに完全にシフトしたと説明。カメラ市場全体では10%も落ち込んだ中、同社は年率平均で14%の成長をしたとアピールした。
そして同社のデジタルカメラには2つの大きな特徴があるという。
1つは「メモリーカラー」という画像処理技術。心に記録する色は自然界で見る色よりもずっと鮮やかであり、これをメモリーカラーと呼ぶとのこと。このメモリーカラーは「シーンと感情を呼び起こすもの」であり、「富士フイルムはこれを再現できる唯一の会社です」と強調した。
2つめは世界最先端という光学技術。先述でも記述した8K/4Kカメラに求められる、関東平野にゴルフボールが転がるほどの許容誤差だ。この2つの技術が相互に補完し合うように開発を行っているという。
同社のカメララインナップのなかで、「(APS-Cフォーマットを搭載する)Xシリーズは、画質とコンパクトさ軽量さとの最適なバランスを提供しており、GFXは最高の画質と35mm(フルサイズ)を70%超える大型センサーを提供している」と説明。
これらのラインナップは、従来からのカメラメーカーがもつこだわり、つまり古いレガシーがないので「何が重要かということを考えて」製品を開発しているという。また今回発表されたGFX100について、「大判のセンサーによる究極の画質・色調を伝えます。またアクティブな撮影状況にも合った実践的カメラで、高速なAFと手ブレ機構を提供します」と述べた。
そして今後のカメラ業界に関して、「業界の未来について悲観的な意見が聞かれるが、その理由は真に革新的な製品がないから」「貴重な瞬間を美しく捉え、レガシーとして捉えたいという願望は変わりません。(GFX100によって)このような需要に答えていけば、伸ばせる可能性はあると思っています」と締めくくった。
昨年9月に開発発表が行われ(関連ニュース)、その後フォトキナやCP+(関連ニュース)においてモックが展示されていたモデル。今回、正式発表が実現した格好だ。
今回の発表にあたり、都内で「FUJIKINA 2019 東京」が開催され、発表会およびタッチアンドトライ、写真作品の展示が行われた。発表会ではまず、同社代表取締役会長・CEOの古森 重隆氏が登壇し、事業戦略について語った。こちらの模様は後述する。続いて同社光学・電子映像事業部長 飯田 年久氏が登壇し、製品の発表を行った。なお本稿では、発表会後に行われたメディアセッションでの技術的説明も交えて紹介したい。
■102MPの裏面照射型CMOSセンサーを搭載
今回102MP(メガピクセル)の製品を発売したことに対して、飯田氏は「やりすぎだという声もあるかもしれません」と述べ、その上で “写真の本質” が貴重な瞬間を将来に残すことであるならば、「GFXこそが将来のために記録を残していけるカメラ」だとアピール。「素晴らしい貴重な瞬間は、写真で撮らない限り振り返れない」と強調した。
民生用ミラーレスデジタルカメラでは世界最高となる、1億2百万画素を実現したイメージセンサーを搭載。対角の長さは55mmで、一般的にフルサイズ(対角43mm)と呼ばれるサイズと比較すると面積1.7倍だ。これまで中判(ミディアムフォーマット)と呼ばれることが多かったサイズだが、飯田氏はフィルム時代の名残だった言い方を改め、デジタル時代では「ラージフォーマット」と呼んでいきたいと説明した。
同社がGFXシリーズからラインナップする従来モデル「50S」「50R」では約5,000万だった画素数を倍増させただけでなく、2つの新しい技術を搭載している。1つは裏面照射センサーを採用したこと。通常のセンサーではマイクロレンズ→アルミ配線→フォトダイオードという構造だが、これをマイクロレンズ→フォトダイオード→配線といった順にすることで、フォトダイオードがより効率的に光を取り込めるようになった。
2つめとして、通常配線にはアルミが採用されるが、今回のモデルでは銅を採用。アルミと比較して60%速度がはやく、これによってノイズの減少や通信速度の向上が可能だという。なおこれら2つの技術は、ラージフォーマットでは初めてとアピールとした。
感度では、ISO102,400に対応。通常は画素数が多いと個々のピクセルが小さくなってしまい、ノイズを増やすことにつながってしまうが、GFX100ではセンサーが大きいので、暗い場所でもしっかりと捉えることができると説明。またセンサーが大きいことで、14stosというより広いダイナミックレンジも持っているという。
画像処理エンジンには、同社APS-Cモデルの「X-T3」などに搭載する「X-Processor 4」を採用する。伝統的なラージフォーマットのカメラは処理が遅かったとのことだが、このプロセッサーを搭載することで、決定的な瞬間も逃さないように設計したという。またフォトグラファーの声に応え、16bitのRAW/TIFFに対応した(画像処理エンジンからの出力は10bit)。なお16bitでTIFFを撮影した場合、ファイルサイズは約200MBに及ぶという。
■関東平野にゴルフボールが1つ転がるほどの誤差基準
発表会では、センサーだけでなく「レンズ」も重要な技術だと強調。GFXシリーズの登場時から、100MPクラスに対応させたレンズラインナップを展開してきたとする。
同社では8Kや4Kといった映像用のレンズも製造しており、これに求められる許容誤差精度を例えると、関東平野にゴルフボールが1つ乗っているようなものだという。この技術はGFXにも継承されており、「GFXのみが102MPに届くことができる」とアピールした。
■シリーズ初の位相差AFを搭載
ラージフォーマットとして初となる、像面位相差に対応する。イメージセンサー上には378万個の位相差画素が配置されることで、0.05秒のAFを実現。さらにカバー率は約100%とのこと。また低照度下でのAFは-2EV(F2.0)となっている。
本機のイメージセンサーはX-3や「X-T30」に搭載されている「X-Trans CMOS 4」という最新世代。前世代では60データ(5エリア×4エリア×3パターン)で検出・演算を行っていたが、最新世代では4倍の240データ(5エリア×8エリア×6パターン)を用いることで、より正確なAFに対応している。
これによって、顔・瞳検出AFの精度も向上しており、より遠くの被写体、顔が横を向いた場合、障害物に遮られた場合であっても、従来より高い追従性を発揮するという。また複数人の被写体がいた場合に誰にピントを合わせるか選ぶことができる「顔セレクト」も新搭載。そのほか位相差画素で常時センシングを行うことで、距離差の大きい被写体間のAF動作において最大300%高速化する「ノンストップ位相差AF」にも対応する。
肌のレタッチを自動で行う新機能「スムーススキンエフェクト」も搭載した。これは撮ったままの状態でそのまま仕事に使えるようにという、同社の目標によるもので、プロの現場で撮影した場合でも後処理をせずに、そのまま成り立つことを目指したという。そのため、肌を塗りつぶすような印象ではなく、「効いているか効いていないかわからない」くらいに仕上げているとのこと。オフ/弱/強から効果を選択することもできる。
■世界初のボディ内手ぶれ補正機構
35mm以上のフォーマットでは世界初となる、ボディ内手ぶれ補正も搭載。5軸手ぶれ補正となり、最大5.5段(63mm時)の補正に対応する。動画撮影時でも補正が利用可能だ。X/Y/Zの3軸加速度センサーによってぶれを検出し、3軸ジャイロセンサーが角度と回転のぶれを検知、これを独自の「専用デュアルプロセッサー」で毎秒10,000回の演算を行うことで、補正を実現している。
ボディ内手ブレ補正を搭載した背景には、「102MPという高解像度を生かすために、3脚や高速シャッタスピードでの撮影が必要では、使いにくいカメラになる」という懸念があったとのこと。一方で、開発は簡単ではなかったという。まずセンサーの重さは、フルサイズと比較して約2倍で、これをコントロールするために、駆動モーターのトルクは2倍に、そして可動部の改良が必要だったという。
つぎにセンサーが傾いてしまうことで、レンズと並行が保てず、片側がボケてしまうこと。102MPではよりシビアな精度が要求されるため、ユニットに使用するセラミックボールの製造誤差は、3mmの直径に対して約5μm。またセンサー自体の歪みも公差約20μmなど、各部品で精度が追求されている。
また手ぶれ補正だけでなく、シャッター自体のぶれレにも配慮。フルサイズと比較するとシャッター時のエネルギーは4倍にもなるとのこと。これを「ショックアブソーバー」で吸収する構造を採用することで、内部からのぶれ発生の抑制も目指した。
本体はマウント/フロントケース/インナーフレーム/シャッター/手ぶれ補正ユニット/センサー/リアフレームという構造になっている。これをマウント/インナーフレーム/手ぶれ補正+センサーから成る光学部分、フロントケース/シャッター/リアフレームという外装+シャッターという構造にし、これらをショックアブソーバーで繋いでいる。このように光学部分を“吊るす” 構造を採用することで、シャッターのブレをセンサーに届けないようにしたという。また重いレンズを付けた際にセンサーに与える負荷を軽減する役目もあるとのことだ。
■ラージフォーマットとして世界初の4K30p動画
動画では4K30pの撮影が可能。従来大型のフォーマットでは4K24pまでしかなく、30pまで撮影可能なのは世界初だという。プロ仕様を想定し、SDカード記録時には4K 30p 10bit 4:2:0、HDMI出力時には4K 30p 10bit 4:2:2に対応する。
本機のイメージセンサーをシネマ用カメラと比較すると、55mm LF DCI 4Kとほぼ同様のサイズで、Vista Visonよりも大きい。これにより、一部のトップエンドでしか撮影できなかったラージフォーマット特有の立体感、浅い被写界深度、豊かな階調を活かした動画を撮影することができるしている。また先述したがボディ内手ぶれ補正は動画撮影時にも使用可能。像面位相差AFや瞳・顔検出AFも動画撮影で用いることができる。
4Kの記録時には11604×4352からオーバーサンプリングすることで、高画質を追求。コーデックはH.265とH264(8bit)に対応し、ビットレートは最大400Mbpsに対応。F-logやHLGでの記録が可能で、本体での音声記録は48kHz/24bitに対応する。
従来は動画撮影時には1本が29分59秒と上限が決まっていたが、今作ではXシリーズ/GFXで初めてこの上限を廃止。60分までの撮影が可能となった。またシネマフィルムシミュレーションとして、「ETERNA(エテルナ)」を初搭載した。
■EVF+3つのモニターを搭載
背面モニターは3.2型(約236万ドット)となり、3方向チルトやタッチ操作に対応する。加えて背面モニター下部には、モノクロOLEDによる2.05型(256×64ドット)のサブモニターが新たに採用された。このサブモニターにはシャッター速度や絞りといった情報、機能の設定、露出ゲージ、ヒストグラムなどが表示可能で、切り替えたりカスタマイズを行うことができる。
さらに天面には、1.80型(303×230ドット)のサブ液晶モニターを搭載。バックライト付きのメモリー式液晶となっているため、電源を切っている状態でも情報を確認できる。静止画/動画用でそれぞれ別の情報表示が可能なほか、ヒストグラムの表示、ダイヤルデザインを表示する「バーチャルダイヤルモード」から切り替えることができる。
XシリーズやGFXシリーズの特徴であるメカニカル式のデザインを採用せず、電子ダイヤルを採用したのは、プロの現場を想定したことが大きいという。PCと接続するテザー撮影などを行った場合、PCからの設定と物理的なダイヤルが示す設定が異なってしまうという。
一方、電子ビューファインダーでは、新開発の576万ドット有機EL電子ビューファインダーを搭載。より解像度の低いファインダーも当初は検討したが、102MPを生かすためにこの解像度を採用することになったとのこと。ファインダー倍率0.86倍となっており、さらにより拡大したピント確認ができるように、24倍の拡大にも対応する。ファインダーは着脱可能ではあるが、従来機種との互換性はない。なお別売(発売済み)のEVFチルトアダプター「EVF-TL1」の装着には対応する。
■高信頼性を目指したボディ
ボディには、縦位置グリップ一体型マグネシウム合金製ボディを採用し、軽量・高剛性を目指した。ボディに76、EVFに19の計95か所にシーリングを施すことで、高い防塵・防滴性能と-10度の耐低温構造を実現したとする。メディアスロットはSD×2のデュアルスロットを採用する。
シャッターユニットは、150,000回の耐久性を備えた新設計。最速5枚/秒の連写が可能で、電子先幕シャッターに対応する。なお電子先幕シャッターで高速シャッターを行うと、ボケが半円に削られるなど画質上に影響が出るとのことで、1/1250以上のシャッター速度では自動的にメカニカルシャッターに切り替わる仕様となっている。
バッテリーは従来機と同様のNP-T125を採用し、2個同時に搭載が可能だ。高画素化に加えてボディ内手ぶれ補正によって電力消費が増えないよう省電力化に力を入れ、消費電力を同水準に抑えた。これにより背面液晶モニター使用時には、従来の2倍となる約800枚の撮影が行える。またUSB PDに対応しており、給電・充電も可能だ。そして動画では、4K撮影時(顔認識OFF)で、実使用約100分、連続使用170分の撮影が行える。
外形寸法は156.2W×163.6H×102.9Dmm(EVF装着時)で、最薄部の厚みは48.9mm。またバッテリー2個、メモリーカード、電子ビューファインダーを含んだ状態での質量は約1400gとなっている。
■カメラ業界が悲観的なのは、“真に革新的な製品”がないから
冒頭で述べたように、発表会のはじめには同社代表取締役会長・CEOの古森 重隆氏が登壇した。まず「この2年間はデジタルカメラの転換期となった」と述べ、現在のカメラ市場はデジタルミラーレスに完全にシフトしたと説明。カメラ市場全体では10%も落ち込んだ中、同社は年率平均で14%の成長をしたとアピールした。
そして同社のデジタルカメラには2つの大きな特徴があるという。
1つは「メモリーカラー」という画像処理技術。心に記録する色は自然界で見る色よりもずっと鮮やかであり、これをメモリーカラーと呼ぶとのこと。このメモリーカラーは「シーンと感情を呼び起こすもの」であり、「富士フイルムはこれを再現できる唯一の会社です」と強調した。
2つめは世界最先端という光学技術。先述でも記述した8K/4Kカメラに求められる、関東平野にゴルフボールが転がるほどの許容誤差だ。この2つの技術が相互に補完し合うように開発を行っているという。
同社のカメララインナップのなかで、「(APS-Cフォーマットを搭載する)Xシリーズは、画質とコンパクトさ軽量さとの最適なバランスを提供しており、GFXは最高の画質と35mm(フルサイズ)を70%超える大型センサーを提供している」と説明。
これらのラインナップは、従来からのカメラメーカーがもつこだわり、つまり古いレガシーがないので「何が重要かということを考えて」製品を開発しているという。また今回発表されたGFX100について、「大判のセンサーによる究極の画質・色調を伝えます。またアクティブな撮影状況にも合った実践的カメラで、高速なAFと手ブレ機構を提供します」と述べた。
そして今後のカメラ業界に関して、「業界の未来について悲観的な意見が聞かれるが、その理由は真に革新的な製品がないから」「貴重な瞬間を美しく捉え、レガシーとして捉えたいという願望は変わりません。(GFX100によって)このような需要に答えていけば、伸ばせる可能性はあると思っています」と締めくくった。