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ガジェット 公開日 2022/12/26 17:41

直径40ミクロンの世界最小レコードでクリスマスソングを。デンマーク工科大学が制作

レーベル部分もちゃんと作ってあります
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Munenori Taniguchi
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デンマーク工科大学(DTU)の物理学者が、わずか40μm(ミクロン)のポリマー材料をカッティングした、世界最小のレコードを制作した。収録曲はブレンダ・リーのクラシックなクリスマスソング『Rockin’ Around The Christmas Tree』で、サイズの都合からか最初の25秒間だけだ。

DTUの別のグループは2015年に、レオナルド・ダ・ヴィンチのモナリザを12 x 16μmサイズで再現している。DTUのPeter Bøggild教授は「もっとも進んだ使い方は、このクレイジーな解像度で自由に3Dランドスケープを作れるというところ。このナノリソグラフィーはわれわれの研究における真のゲームチェンジャーだ」と述べている。

今回の「世界最小」という微細なクリスマスレコードは、微小素材に3Dナノリソグラフィを施すことが可能なハイデルベルグ・インストルメンツ社の「Nanofrazor」と呼ばれる機器で制作された。この機器は赤血球に文字を書き込むことができるほどの微細な処理ができるという非常に微細な処理が可能な代物だ。

Nanofrazorは3Dプリンターのように、基材に何かを追加して特定の形状を作るものではなく、精密加工を行う工場で用いられるCNC(computer numerical control)機器のように、材料の一部分を正確な位置制御でカットして目的とする形状に仕上げる。モナリザなどは、目的とするグレースケール画像になるまでポリマー材料を少しずつ取り除いていく作業を繰り返して作られたため、アマチュアミュージシャンで、レコードマニアでもあるBøggild教授がナノスケールの「レコードを印刷してみよう」という、アイデアに至るのは自然なことだったかもしれない。

Bøggild教授は、まずは通常のレコードのカッティングのように、ミクロンサイズで楽曲の一部を加工してみた。しかしそれは通常のターンテーブルでは再生できない。そこで、Nanofrazorを使ってオーディオ信号を素材の表面にらせん状の溝として刻むレコードカット旋盤として使うことにした。また素材もアナログレコードの塩化ビニールとは異なるポリマー素材を使用した。

ステレオで収録された一般的なレコードの溝は90度でカットされ、その片方の斜面に1チャンネル、もう片方を2チャンネル目としてステレオ音声信号を記録しているが、このナノレコードの場合は左チャンネルにあたる信号を溝の揺らぎで、右チャンネルに当たる信号は溝の深さで記録しているとのこと。そのため、溝を読み取るにはNanofrazorか、または原子間力顕微鏡のような、ホビー用途としては高価すぎる機材が必要になるだろう。それでも、それらがあれば「間違いなく溝を読み取ることができる」、つまり収録した音楽を再生することは可能だと、研究者は述べている。

なお、研究者らを支援しているデンマークのNovo Nordisk財団Biomagプロジェクトは、別に誰も再生できない微小なクリスマスレコードを発売してビルボードのNo.1を狙っているわけではない。Bøggild教授と、同僚のTim Booth准教授、Nolan Lassaline氏らの本来の研究は、Nanofrazorを使って、3Dナノ構造を正確に、高速かつ低コストで加工できるようにすること。これは既存の機械では不可能だったことで、この技術を使うことで、生きている脳の電流を検出するための新しい磁気センサーの開発などに役立てられる。

「われわれは2D素材を扱っており、これらの極薄素材を3Dランドスケープ上に慎重に配置すると、表面が輪郭にそってカーブする。これは、ほんの 15 年前には誰も信じられなかったようなことをする、強力かつまったく新しい、素材の「プログラミング」方法だ。たとえば グラフェンを正しく配置できれば、実際には何もないのに巨大な磁場があるかのように振る舞う。そして、Nanofrazorがあれば、この正しく配置するという作業が可能になる」と、Bøggild教授は述べている。

またLassaline氏はグラフェンで「量子シャボン玉」を作り出すことを計画している。これはNanofrazorを使い、グラフェンやその他の原子レベルの薄い材料中の電子を精密に操作する新しい方法を発見することが期待されるとのこと。Booth准教授は「われわれは、次に何をするかについて多くのアイデアを持っており、この機械が新しい構造のプロトタイピングを大幅にスピードアップしてくれると信じている」と述べている。

Source: DTU Physics.
via: Phys.org, Ars Technica

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