公開日 2008/12/15 18:13
戦国時代に突入した「高音質CD」の明日を読み解く
高音質CDが日本のソフト業界を救う!?
SHM-CD、HQCD、Blu-spec CD。これら3つは、主にディスクの素材を変えることによって再生音のクオリティを改善したCDのブランド名だ。いわゆる「高音質CD」と呼ばれるものであるが、筆者は音質に対する評価は主観を抜きに語れないという考えから、三者をまとめて「新素材CD」と呼んでいる。
新素材CDの特色として、次の3点が挙げられる。
1、音声の記録方式が普通のCDと同じだから汎用性が高い
CDを再生できるすべての機器で聴けるので、SACDなどの新規格ソフトと違って新しくプレーヤーを買う必要がない。
2、CD用のマスター(音源)に手を加えなくても自動的に音質が向上する
これまでCDソフトの音質改善といえば新規にマスタリングを行う「リマスター」が中心だった。しかし、大元のマスターの音質が貧弱だったり、経年変化でマスターの劣化が進んでいたり、何度もリマスターされて音質改善の余地がなくなったりした作品の場合、CDの音質を現況より良くするのは難しい。ところが、新素材CDなら既存のマスターをそのまま使って従来より音の良いCDを作れる。
3、CD規格の可能性を拡張できる
「これがCDの音質の限界だ」という常識は強固なように思えたが、素材を変えれば音が良くなることが分かって、まだまだCDの音質を改善できる希望が見えてきた。さらに素材を改良したり、ディスクの製造工程を見直したり、新素材CDに適したマスタリングを行えば、将来もっと音質の良いディスクをCD規格の範囲内で作るのも夢ではない。
それぞれの特色を順に見てみよう。
1番手のSHM-CDは2007年11月に登場した。SHM-CDというのは「スーパー・ハイ・マテリアルCD(超高品位素材CD)」の略である。ユニバーサルミュージックと、日本ビクターのCD製造部門(現ビクタークリエイティブメディア)が開発した。改善の方法は3種類の中で最も単純で、ディスクの透明部分の材料を変えただけだ。普通のCDに使われているポリカーボネイトの代わりに、より透明度が高い液晶パネル用の高純度ポリカーボネイトを使ったのである。後から登場したHQCDやBlu-spec CDもSHM-CDと同様な手法を採用した。それだけ効果が大きいのだろう。なお、複数あるソニー傘下のCD工場の一つでも2008年10月からSHM-CDを作れるようになった。
2番手のHQCDは2008年9月に初めてリリースされた。開発したのは日本国内で最も多くの音楽CDを作っているディスク製造専業メーカーであるメモリーテックだ。HQCDという名称は「HiQualityCD」の略で、分りやすい。
やはりディスクの透明部分の素材を高品質なポリカーボネイト(SHM-CD用とは種類が違う)に変えたが、それと同時に信号記録面を裏打ちする反射膜の金属素材も改良し、両者の相乗効果を狙っている。反射膜の金属は銀を主体とする合金で、信号読み出し用のレーザービームの反射率を上げ、読み取り精度を改善した。この手法はHD DVDの開発途上で得たノウハウをCD規格に応用したものだという。慣れればCDの信号記録面の光り方を見るだけでHQCDと普通のCDを判別できる。ディスクを製造する時のコストは、改善したポイントが2つに増えた分だけSHM-CDより高くつく。
3番手のBlu-spec CDは、現行のCD規格を作り上げたソニーが打ち出したブランドだ。一般向けのソフトは2008年12月24日から発売される。新しい映像ソフト規格であるBlu-ray Discと名前が似ているが、ディスク自体の規格は通常のCDと同じだ。
特色は2つあって、第1点はカッティング(CD盤面の鋳型を作る工程でデジタル信号を刻み込む作業)に青色レーザーを使うことだ。普通CDのカッティングは赤色レーザーで行うが、より波長の短い青色レーザーを使えばデジタル信号をより正確に焼き付けることができる。第2点は透明部分に高純度のポリカーボネイトを採用したことだ。ただしBlu-ray Discとまったく同じ材質ではなく、Blu-rayの開発過程で試した多くの素材からCD向きのものを選んであるという。ちなみにディスク自体の色は普通のCDと同じく透明であり、青くはない。製造コストだが、SHM-CDとHQCDの場合は過去に制作済で工場内に保管してあるスタンパーを使っても作れるのに対して、Blu-spec CDは必ずスタンパーを新規に作らないとならないので、新素材CDの中で一番高くなると見込まれる。これまでCD製造の常識では考えられなかった新技術である青色レーザーの使用が必須となる点も、コスト高の要因になるに違いない。
新素材CDの特色として、次の3点が挙げられる。
1、音声の記録方式が普通のCDと同じだから汎用性が高い
CDを再生できるすべての機器で聴けるので、SACDなどの新規格ソフトと違って新しくプレーヤーを買う必要がない。
2、CD用のマスター(音源)に手を加えなくても自動的に音質が向上する
これまでCDソフトの音質改善といえば新規にマスタリングを行う「リマスター」が中心だった。しかし、大元のマスターの音質が貧弱だったり、経年変化でマスターの劣化が進んでいたり、何度もリマスターされて音質改善の余地がなくなったりした作品の場合、CDの音質を現況より良くするのは難しい。ところが、新素材CDなら既存のマスターをそのまま使って従来より音の良いCDを作れる。
3、CD規格の可能性を拡張できる
「これがCDの音質の限界だ」という常識は強固なように思えたが、素材を変えれば音が良くなることが分かって、まだまだCDの音質を改善できる希望が見えてきた。さらに素材を改良したり、ディスクの製造工程を見直したり、新素材CDに適したマスタリングを行えば、将来もっと音質の良いディスクをCD規格の範囲内で作るのも夢ではない。
それぞれの特色を順に見てみよう。
SHM-CD | HQCD | Blu-spec CD | |
発売開始時期 | 2007年11月 | 2008年9月 | 2008年12月 |
開発会社 | ユニバーサル ミュージック/日本ビクター | メモリーテック | ソニー・ミュージックエンタテインメント |
主な採用レコード会社 | ユニバーサル ミュージック、ビクターエンタテインメント、ワーナーミュージック・ジャパン、EMI(ロック)など | ポニーキャニオン、コロムビアミュージックエンタテインメント、EMI(クラシック&ジャズ)など | ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル |
使用素材 | 液晶パネル用の高純度ポリカーボネートを採用 | 液晶パネル用の高純度ポリカーボネートを採用。反射膜に特殊合金を採用 | Blu-ray Disc用に開発されたポリカーボネートを採用。カッティングに青色レーザーを使用 |
1番手のSHM-CDは2007年11月に登場した。SHM-CDというのは「スーパー・ハイ・マテリアルCD(超高品位素材CD)」の略である。ユニバーサルミュージックと、日本ビクターのCD製造部門(現ビクタークリエイティブメディア)が開発した。改善の方法は3種類の中で最も単純で、ディスクの透明部分の材料を変えただけだ。普通のCDに使われているポリカーボネイトの代わりに、より透明度が高い液晶パネル用の高純度ポリカーボネイトを使ったのである。後から登場したHQCDやBlu-spec CDもSHM-CDと同様な手法を採用した。それだけ効果が大きいのだろう。なお、複数あるソニー傘下のCD工場の一つでも2008年10月からSHM-CDを作れるようになった。
2番手のHQCDは2008年9月に初めてリリースされた。開発したのは日本国内で最も多くの音楽CDを作っているディスク製造専業メーカーであるメモリーテックだ。HQCDという名称は「HiQualityCD」の略で、分りやすい。
やはりディスクの透明部分の素材を高品質なポリカーボネイト(SHM-CD用とは種類が違う)に変えたが、それと同時に信号記録面を裏打ちする反射膜の金属素材も改良し、両者の相乗効果を狙っている。反射膜の金属は銀を主体とする合金で、信号読み出し用のレーザービームの反射率を上げ、読み取り精度を改善した。この手法はHD DVDの開発途上で得たノウハウをCD規格に応用したものだという。慣れればCDの信号記録面の光り方を見るだけでHQCDと普通のCDを判別できる。ディスクを製造する時のコストは、改善したポイントが2つに増えた分だけSHM-CDより高くつく。
3番手のBlu-spec CDは、現行のCD規格を作り上げたソニーが打ち出したブランドだ。一般向けのソフトは2008年12月24日から発売される。新しい映像ソフト規格であるBlu-ray Discと名前が似ているが、ディスク自体の規格は通常のCDと同じだ。
特色は2つあって、第1点はカッティング(CD盤面の鋳型を作る工程でデジタル信号を刻み込む作業)に青色レーザーを使うことだ。普通CDのカッティングは赤色レーザーで行うが、より波長の短い青色レーザーを使えばデジタル信号をより正確に焼き付けることができる。第2点は透明部分に高純度のポリカーボネイトを採用したことだ。ただしBlu-ray Discとまったく同じ材質ではなく、Blu-rayの開発過程で試した多くの素材からCD向きのものを選んであるという。ちなみにディスク自体の色は普通のCDと同じく透明であり、青くはない。製造コストだが、SHM-CDとHQCDの場合は過去に制作済で工場内に保管してあるスタンパーを使っても作れるのに対して、Blu-spec CDは必ずスタンパーを新規に作らないとならないので、新素材CDの中で一番高くなると見込まれる。これまでCD製造の常識では考えられなかった新技術である青色レーザーの使用が必須となる点も、コスト高の要因になるに違いない。
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