公開日 2009/11/20 20:05
薄型化と高画質は両立可能か!? - “BRAVIA ZX5”の画質傾向を折原氏がチェック
フラグシップ機“XR1”との共通点は?
ソニーが脈々と受け継いできた画作りの思想と技術をLEDバックライトという新世代のデバイスに投入し、液晶テレビのポテンシャルを見事に引き出した“BRAVIA XR1シリーズ”。同社では、XR1と同じ“プレミアムライン”のモデルとして、新たにLEDエッジライト技術により薄型・ワイヤレス化に挑んだZX5シリーズを誕生させた。
“BRAVIA”シリーズのなかでも”プレミアムライン”に位置する新モデル、ZX5の登場は、クオリティの面からも注目すべきトピックだ。そこで、今回は同じLEDバックライト搭載としての兄貴分にあたるXR1と比較しながら、画質をチェックしてみた。
■超薄型ボディとデザイン性の高さが魅力 - スペック面も不足なし
まずは製品のスペック面を振り返ってみよう。ZX5は、昨年発売されたZX1の後継にあたる、スタイリッシュさと高画質の両立を狙ったモデルとなる。
バックライトは白色LEDエッジライトで、下方向のみの配置で全体に光を行き渡らせている。これによりもたらされたスタイリングは、46V型で最薄部15.8mm、52V型で最薄部16.6mmというスペックにも現れている。実際の写真を見ても分かる通りに指先でつまめてしまうほどに薄型で、背面までフラットにデザインされたデザイン性の高さも特徴だ。
そして、本体には60GHz帯を使用した「フルHDワイヤレス伝送システム」を搭載。これにより、従来モデルではオプション扱いだったモニター部とワイヤレスレシーバーの一体化に成功。1080p(1080/24pも含む)の非圧縮伝送を実現させた。
高画質回路には、同社のWシリーズなどと同じ240Hz駆動技術「モーションフロー240コマ」を搭載。映像エンジンも「ブラビアエンジン3」と、まさにソニーの持つ高技術のすべてを投入したモデルなのである。
■フラグシップ機に通じる画質傾向
まずは地上デジタル放送の視聴から始めた。こちらでの画質はXR1と比較すると若干色温度が高めながら、LEDクリアパネルを活かした艶やかな画質の傾向は共通している。
また、絶対的な黒レベルではLEDバックライトをエリア駆動するXR1に譲る部分こそあるものの、たっぷりと色を乗せた再現性は、光沢パネルの効果もあってかなり優れている。画質チューニングは紛れもなくXR1の血統を継いでいるといえるだろう。もっとも、特にLEDエッジライトの特性として、左右方向の視野角に弱点があるため、エッジ部分の描写は若干気になる。本機のテーブルトップスタンドは左右に首振りできる構造になっているため、積極的に活用しておくべきだろう。
続いてはBDソフトの視聴を試す。なお、本機では本格的なBD視聴のために「シネマ1」「シネマ2」というふたつのモードを用意。「シネマ2」の方が明るく力強くてリビング向けのチューニングになっている。
視聴には「エヴァンゲリオン」「ベンジャミンバトン」「グラントリノ」の3タイトルを用意。「エヴァンゲリオン」では、えぐり出すような力強いタッチの描写でアニメの世界を再現。こうした傾向はXR1と非常に似通っている。
「ベンジャミンバトン」の視聴でも同様で、チャプター4冒頭の、ブルーを基調とした病室のシーンは若干輪郭が硬く、ガッチリと作る傾向はあるものの、明るめの部屋で映画を見ることを考えてチューニングした画質として考えると完成度は高い。
また、本映画屈指の高難度シーンでもある、テーブルの下で揺れる蝋燭の光も、疑似色を発生させることなく輝度変化を扱っている。バックライトコントロールに頼らずとも階調性を引き出す見本となるモデルだろう。
やはり映像の味を支えているのは光沢パネルの持つダイナミック感で、エリア駆動なしでもこれほどの階調性を出せるとは驚きだ。「グラントリノ」の持つクリント・イーストウッドらしい色彩感を落としたクセのある画質、さらにチャプター6の瞬時に明暗が入れ替わる映像までも光沢パネルらしい黒沈みで演じ切る。
特に、部分的にだが黒色の再現性は、半光沢パネルのXR1より真の黒に近い色調に近づいていることに驚かされた。また、無線伝送に起因するノイズ感の発生などがほぼなかった事も追記しておきたい。
ZX5の画質を総括すると、驚くべき薄さを実現したにも関わらず、”プレミアムライン”の名に恥じないチューニングを施して作られていると言える。液晶テレビのトレンドがLEDバックライトと光沢パネル搭載という流れへと向かっていくなかで、すべての手本となるフラグシップ機、XR1の画質の傾向の良い部分を受け継ぎながら、積極的に明るい部屋での視聴画質までもカバーした製品作りには意欲的なものを感じさせる。
なお、超薄型という特徴を持つ本製品は、壁掛け設置でこそアドバンテージが活きてくる。同社が直販サイトで行っている「BRAVIAプレミアムオーダー」では壁掛け設置の工事も含めて手配を行えるため、購入を考える際にはこちらの利用を検討してみるのも良いだろう。
(折原一也)
執筆者プロフィール
埼玉県出身。コンピューター系出版社編集職を経た後、フリーライターとして雑誌・ムック等に寄稿し、現在はデジタル家電をはじめとするAVに活動フィールドを移す。PCテクノロジーをベースとしたデジタル機器に精通し、AV/PCを問わず実用性を追求しながら両者を使い分ける実践派。
“BRAVIA”シリーズのなかでも”プレミアムライン”に位置する新モデル、ZX5の登場は、クオリティの面からも注目すべきトピックだ。そこで、今回は同じLEDバックライト搭載としての兄貴分にあたるXR1と比較しながら、画質をチェックしてみた。
■超薄型ボディとデザイン性の高さが魅力 - スペック面も不足なし
まずは製品のスペック面を振り返ってみよう。ZX5は、昨年発売されたZX1の後継にあたる、スタイリッシュさと高画質の両立を狙ったモデルとなる。
バックライトは白色LEDエッジライトで、下方向のみの配置で全体に光を行き渡らせている。これによりもたらされたスタイリングは、46V型で最薄部15.8mm、52V型で最薄部16.6mmというスペックにも現れている。実際の写真を見ても分かる通りに指先でつまめてしまうほどに薄型で、背面までフラットにデザインされたデザイン性の高さも特徴だ。
そして、本体には60GHz帯を使用した「フルHDワイヤレス伝送システム」を搭載。これにより、従来モデルではオプション扱いだったモニター部とワイヤレスレシーバーの一体化に成功。1080p(1080/24pも含む)の非圧縮伝送を実現させた。
高画質回路には、同社のWシリーズなどと同じ240Hz駆動技術「モーションフロー240コマ」を搭載。映像エンジンも「ブラビアエンジン3」と、まさにソニーの持つ高技術のすべてを投入したモデルなのである。
■フラグシップ機に通じる画質傾向
まずは地上デジタル放送の視聴から始めた。こちらでの画質はXR1と比較すると若干色温度が高めながら、LEDクリアパネルを活かした艶やかな画質の傾向は共通している。
また、絶対的な黒レベルではLEDバックライトをエリア駆動するXR1に譲る部分こそあるものの、たっぷりと色を乗せた再現性は、光沢パネルの効果もあってかなり優れている。画質チューニングは紛れもなくXR1の血統を継いでいるといえるだろう。もっとも、特にLEDエッジライトの特性として、左右方向の視野角に弱点があるため、エッジ部分の描写は若干気になる。本機のテーブルトップスタンドは左右に首振りできる構造になっているため、積極的に活用しておくべきだろう。
続いてはBDソフトの視聴を試す。なお、本機では本格的なBD視聴のために「シネマ1」「シネマ2」というふたつのモードを用意。「シネマ2」の方が明るく力強くてリビング向けのチューニングになっている。
視聴には「エヴァンゲリオン」「ベンジャミンバトン」「グラントリノ」の3タイトルを用意。「エヴァンゲリオン」では、えぐり出すような力強いタッチの描写でアニメの世界を再現。こうした傾向はXR1と非常に似通っている。
「ベンジャミンバトン」の視聴でも同様で、チャプター4冒頭の、ブルーを基調とした病室のシーンは若干輪郭が硬く、ガッチリと作る傾向はあるものの、明るめの部屋で映画を見ることを考えてチューニングした画質として考えると完成度は高い。
また、本映画屈指の高難度シーンでもある、テーブルの下で揺れる蝋燭の光も、疑似色を発生させることなく輝度変化を扱っている。バックライトコントロールに頼らずとも階調性を引き出す見本となるモデルだろう。
やはり映像の味を支えているのは光沢パネルの持つダイナミック感で、エリア駆動なしでもこれほどの階調性を出せるとは驚きだ。「グラントリノ」の持つクリント・イーストウッドらしい色彩感を落としたクセのある画質、さらにチャプター6の瞬時に明暗が入れ替わる映像までも光沢パネルらしい黒沈みで演じ切る。
特に、部分的にだが黒色の再現性は、半光沢パネルのXR1より真の黒に近い色調に近づいていることに驚かされた。また、無線伝送に起因するノイズ感の発生などがほぼなかった事も追記しておきたい。
ZX5の画質を総括すると、驚くべき薄さを実現したにも関わらず、”プレミアムライン”の名に恥じないチューニングを施して作られていると言える。液晶テレビのトレンドがLEDバックライトと光沢パネル搭載という流れへと向かっていくなかで、すべての手本となるフラグシップ機、XR1の画質の傾向の良い部分を受け継ぎながら、積極的に明るい部屋での視聴画質までもカバーした製品作りには意欲的なものを感じさせる。
なお、超薄型という特徴を持つ本製品は、壁掛け設置でこそアドバンテージが活きてくる。同社が直販サイトで行っている「BRAVIAプレミアムオーダー」では壁掛け設置の工事も含めて手配を行えるため、購入を考える際にはこちらの利用を検討してみるのも良いだろう。
(折原一也)
執筆者プロフィール
埼玉県出身。コンピューター系出版社編集職を経た後、フリーライターとして雑誌・ムック等に寄稿し、現在はデジタル家電をはじめとするAVに活動フィールドを移す。PCテクノロジーをベースとしたデジタル機器に精通し、AV/PCを問わず実用性を追求しながら両者を使い分ける実践派。