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公開日 2012/01/11 10:01

<CES>ソニー 「Crystal LED Display」画質レポート

家庭用モデルの登場を期待
山之内 正
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10日からの正式開幕を前にCESのプレイベントがスタートし、9日は日本と韓国の家電大手メーカーを中心にプレス向け発表会が開催された。

私は7日からラスベガスに入っているが、8日から9日にかけて行われたイベントの様子を見る限り、プレスの来場者数は例年を1〜2割程度上回っているようで、記者会見会場もメーカーによっては満員御礼で入場を断るケースが出ている。一時停滞が伝えられていたCESだが、最盛期と同じとまではいかなくとも、ある程度は活気が戻ってきているという印象を受けた。

本稿執筆時点ではまだブース公開前だったが、一部のメーカーはすでに新製品をマスコミ向けに公開しており、そのなかには個人的に興味深いと感じたモデルもいくつか存在する。

たとえば、ソニーが9日に公開したCrystal LED Displayの試作機は、LED光源の長所を実感させる力強い映像を見せており、ソニーブースのなかでもひときわ目を引く存在であった。

高速で画面を横切る船の映像。細部がぶれず、クリアなディテールを確保している

真横から見ると、本体の薄さがよくわかる

サイズは55型、フルHD解像度の画素それぞれをRGBのLEDで構成した自発光ディスプレイで、専用に開発されたLEDの数は200万画素×3で約600万個に上る。今回は55型でフルHD解像度を実現しているが、画素をさらに増やすのは物理的に不可能ではないということなので、仮に同等サイズのLEDを採用したとしても4K解像度の大型ディスプレイなども将来は視野に入ってくるはずだ。

LEDの特性である応答性の良さ、色域の広さ、高コントラスト感が3拍子揃った映像を見せ、その3つの要素では隣りに用意された液晶ディスプレイとの間に歴然とした差が認められた。会場では画面にぎりぎりまで近付いてみたが、画素の見え方自体に液晶と大きな差は認められず、不自然な印象はない。

画面の一部を撮影

左の写真を拡大しトリミング。LEDの形状が見える

画面をかなりの高速で横切る船の映像では細部までぶれがなく、実感では4倍速表示の液晶を大きく上回るレスポンスの良さが読み取れる。植物のクローズアップでは黄色や赤の発色に深みと鮮やかさがあり、夜景では黒の沈み込みの深さが際立っている。

バックライト方式の液晶ではローカルディミングの副作用で光のにじみが出るような箇所でも、自発光のLEDディスプレイなのでそうした現象は皆無だ。暗所コントラストが「測定限界以上」というのは、けっして大げさな表現ではないと感じた。

夜景を見比べると黒の締まりの良さと鮮やかな発色にアドバンテージを見出すことができる

色域の広さはLCD比で約1.4倍、深みのある赤や鮮やかな黄色に注目したい(左:Crystal LED、右:LCD)

さらに驚くのは、角度依存性が事実上皆無で、ほぼ真横から見てもコントラストが劣化せず、色の変化が起こらないことだ。実際にはそこまで斜めの位置から見ることはないが、現実にあり得るような位置から見ても液晶との差は歴然としている。

まだ試作機なのですべての回路を本体に内蔵しているわけではないが、展示機のパネル部は3cm前後と非常に薄く、実際に製品化の段階でも、この程度の薄さを実現することは難しくないという。放熱のために大型ファンが高速で回るというような仕組みも見当たらなかった。消費電力についてはパネルモジュールとして約70W以下と発表していることからも分かる通り、これだけの数のLEDを内蔵していることを考えると、かなり低いといえそうだ。

試作機なのでまだ価格を論じる段階ではないが、LEDの開発費なども考慮すると、それなりの高価格になる可能性がある。ただし、実現している性能は既存のテレビと格が明らかに違うので、プレミアムモデルと位置付けて、ぜひ家庭用モデルの分野にも投入して欲しいものだ。

ちなみに家庭用以外の用途としては、放送用や医療用のモニターを想定しているということだ。そうした業務用の分野では有機ELモニターとどう棲み分けるのか、非常に興味深い。いずれにしても、次世代ディスプレイにまた一つ、有力な候補が加わったことは間違いない。

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