公開日 2013/04/30 15:20
MONSTERのピラミッド型ハウジングヘッドホン「DNA」を聴く
岩井喬氏が音質をチェック
■ピラミッド型ハウジングが特徴的なオーバーヘッドホン
個性的なスタイルとディティールやカラーリング、そしてパッケージに至る細部まで、芯の通ったコンセプトテーマで貫かれた独自のデザインセンスの高さが印象的なMONSTERヘッドホンの中において、スマートかつシンプルな造形とヴィヴィッドなカラーリングでまとめられたオーバーヘッド型モデルが「DNA」だ。
やや後方にオフセットされたピラミッド型ハウジングの意匠がワンポイントとなっており、ブラックやホワイト、ホワイトモデルの外装側を深く澄んだ青で彩ったコバルトブルー、ホワイトモデルの内側を明るめのライトグリーンを配したホワイトティールの4色がラインナップされる。
MTVやパラマウントピクチャーズなどの映像・音楽メディアをいくつも傘下に収めるバイアコム社(個人的には80年代のHR/HM系映像を多数配信しているVH1 Classicの存在も見逃せない)とのパートナーシップによるモデルとなっており、目を惹くデザインでありつつも様々なファッションとの融合性も高い、普段使いのアクセサリーとしての機能性もうまく同居したつくりといえるだろう。
折り畳み対応でキャリングケースも付属し、持ち運びにも便利であることはポータブル用途としては今や必須に近いポイントであり、「DNA」も当然採用している。さらに通常のストレートケーブルに加え、iOSデバイスに対応した通話用マイク付きリモコンを装備したControl Talkケーブルも付属。ミニジャックを利用した片出し着脱式となっていて、左右どちらからでも装着できるユニークな構造だ。
装着時の側圧はさほど強くはなく、オンイヤースタイルではあるものの程よくソフトなタッチのパッドによってストレス感も抑えた仕様である。
■「ポピュラーやロックに最適なバランス志向の音作り」
まずは「iPod touch(第4世代)」に直接接続してのサウンドからチェックしていこう。サウンド傾向としては中低域をふっくらと厚く表現し、高域にかけキラキラとした倍音の輝きによって音像の輪郭をくっきりハリ良く描いてくれる。ベースラインのリッチさと明瞭なボーカルの浮き立ちによってポピュラーやロックに最適なバランス志向の音作りといえよう。
まずクラシックからレヴァイン指揮・シカゴ交響楽団『ホルスト:惑星<木星>』を聴く。管弦楽器の旋律は倍音の艶やかさによりハーモニーを太く安定した音伸びで描き、ティンパニなどの打楽器はアタックで皮が揺れるさまもハリ良く表現。ボディの響きは適度に引き締めローエンドの押し出し豊かな量感は迫力十分だ。
ジャズにおいても古くから定番となっているオスカー・ピーターソン・トリオ『プリーズ・リクエスト』から「ユー・ルック・グッド・トゥ・ミー」を聴いてみる。軽快なタッチのピアノはクリアな高域の響きとともに中低域の太く安定したトーンによってしっかりとした存在感を放つ。アタックの輪郭は程よく丸みを帯び、倍音の伸びやかさも心地よい。ウッドベースは弦のたわみをハリ良くくっきりと描きつつ、胴鳴りをブンブンと立派に響かせる。スネアやキックドラムのボディも太くスムーズなアタック感で、ブラシの粒立ちも細やかだ。
続いて骨太なハードロック曲であるデイヴ・メニケッティのセカンドソロアルバム『メニケッティ』から「メッシン・ウィズ・ミスター・ビッグ」を聴く。デイヴは正統派アメリカンHM/HRバンド、Y&Tのリードギター&ボーカリストを務めるフロントマンとして著名であるが、ブルージーな泣きのギタリストとして側面を存分に堪能できる本盤ではドラムやベース、ギターのベーシックトラックをチャンネル当たりの記録面積が大きな16chアナログマルチレコーダーで収録したことで低域の緻密で押し出し良い充実したサウンドを楽しむことができる。この「DNA」ではレスポールならではの倍音の甘いディストーションを粒立ち良くまとめ、伸びやかなリードと押し出しの馬力、そして粘りのあるリフをバランスよく響かせてくれた。リズム隊はエッジのハリ良く厚みのある音像となり、明瞭感あるボーカルをどっしりと支えてくれている。
さらにもう一曲ロックとしてハイレゾ版マスターから高音質な圧縮ファイル化した、Mastered for iTunes仕様のボン・ジョヴィ『ワイルド・イン・ザ・ストリーツ』から「ウィズアウト・ラヴ」を聴いてみた。このファイル以外は非圧縮でのCDリッピング素材であったので粗のないすっきりとしたサウンドであったが、こちらはハイレゾ由来とはいえ圧縮されることで高域成分のノイズっぽさや音像の細さが目立つ傾向であることは否めない。しかし「DNA」のもつ中低域の厚みが程よく線の細さをカバーし、ギターワークもスムーズにトレース。リズム隊やボーカルのボディ感もふっくらと表現してくれる。ジョンの口元はシャープさを残しながらもきつさを抑えて耳当たり良い輪郭を描く。ベースラインは滑らかで非常に聴きやすい。
さらにポピュラーなものとして劇場版『けいおん!』から「Unmei♪wa♪Endless!」も聴いてみたが、こちらはCDからの非圧縮リッピング素材となる。高音質ではないものの凝りに凝ったアレンジで細やかなフレーズが詰み込まれ、キレ良くソリッドに張り出す唯のボーカルが印象的な楽曲だ。
ただ時としてそうしたポイントの高域成分が耳に痛く刺さることもあり、明瞭度を保ちながらバランス良く聴けるヘッドホンとなってくると数が限られてくる。本機では高域の尖った成分を程よく丸めながらもメリハリを利かせたサウンドバランスとなっているので、ボーカルも小気味よくスムーズに際立ち、コーラスワークも粒立ち良くまろやかに浮かんでいる。エレキのリフを一つ一つ細やかに引き立てつつエッジをきらりと強調。ディストーションの歪みも厚み良くズンズンと響かせてくれる。リズム隊は密度良い押し出しで、全体的に厚みのある耳当たり良いサウンドだ。
基本的な音作りはiPodやiPhoneなどのスマホ直挿しを想定しているため、特にポタアンやアイバッソオーディオ「HDP-R10」などのような高音質プレーヤーを繋がなくともバランス良く楽しむことができる。ただしそうしたオプショナルな環境においてはより制動が効き、音像の輪郭や存在感をリアルに浮き立たせ、密度感ある中低域もむっちりとした弾力良い質感表現へと変化してくる。着脱式のリモコン非装備ケーブルが付属となっていることでこのようなステップアップも簡単に試すことができるのも「DNA」の魅力の一つといえるだろう。
<岩井喬 Takashi Iwai>
1977年・長野県北佐久郡出身。東放学園音響専門学校卒業後、レコーディングスタジオ(アークギャレットスタジオ、サンライズスタジオ)で勤務。その後大手ゲームメーカーでの勤務を経て音響雑誌での執筆を開始。現在でも自主的な録音作業(主にトランスミュージックのマスタリング)に携わる。プロ・民生オーディオ、録音・SR、ゲーム・アニメ製作現場の取材も多数。小学生の頃から始めた電子工作からオーディオへの興味を抱き、管球アンプの自作も始める。 JOURNEY、TOTO、ASIA、Chicago、ビリー・ジョエルといった80年代ロック・ポップスをこよなく愛している。
個性的なスタイルとディティールやカラーリング、そしてパッケージに至る細部まで、芯の通ったコンセプトテーマで貫かれた独自のデザインセンスの高さが印象的なMONSTERヘッドホンの中において、スマートかつシンプルな造形とヴィヴィッドなカラーリングでまとめられたオーバーヘッド型モデルが「DNA」だ。
やや後方にオフセットされたピラミッド型ハウジングの意匠がワンポイントとなっており、ブラックやホワイト、ホワイトモデルの外装側を深く澄んだ青で彩ったコバルトブルー、ホワイトモデルの内側を明るめのライトグリーンを配したホワイトティールの4色がラインナップされる。
MTVやパラマウントピクチャーズなどの映像・音楽メディアをいくつも傘下に収めるバイアコム社(個人的には80年代のHR/HM系映像を多数配信しているVH1 Classicの存在も見逃せない)とのパートナーシップによるモデルとなっており、目を惹くデザインでありつつも様々なファッションとの融合性も高い、普段使いのアクセサリーとしての機能性もうまく同居したつくりといえるだろう。
折り畳み対応でキャリングケースも付属し、持ち運びにも便利であることはポータブル用途としては今や必須に近いポイントであり、「DNA」も当然採用している。さらに通常のストレートケーブルに加え、iOSデバイスに対応した通話用マイク付きリモコンを装備したControl Talkケーブルも付属。ミニジャックを利用した片出し着脱式となっていて、左右どちらからでも装着できるユニークな構造だ。
装着時の側圧はさほど強くはなく、オンイヤースタイルではあるものの程よくソフトなタッチのパッドによってストレス感も抑えた仕様である。
■「ポピュラーやロックに最適なバランス志向の音作り」
まずは「iPod touch(第4世代)」に直接接続してのサウンドからチェックしていこう。サウンド傾向としては中低域をふっくらと厚く表現し、高域にかけキラキラとした倍音の輝きによって音像の輪郭をくっきりハリ良く描いてくれる。ベースラインのリッチさと明瞭なボーカルの浮き立ちによってポピュラーやロックに最適なバランス志向の音作りといえよう。
まずクラシックからレヴァイン指揮・シカゴ交響楽団『ホルスト:惑星<木星>』を聴く。管弦楽器の旋律は倍音の艶やかさによりハーモニーを太く安定した音伸びで描き、ティンパニなどの打楽器はアタックで皮が揺れるさまもハリ良く表現。ボディの響きは適度に引き締めローエンドの押し出し豊かな量感は迫力十分だ。
ジャズにおいても古くから定番となっているオスカー・ピーターソン・トリオ『プリーズ・リクエスト』から「ユー・ルック・グッド・トゥ・ミー」を聴いてみる。軽快なタッチのピアノはクリアな高域の響きとともに中低域の太く安定したトーンによってしっかりとした存在感を放つ。アタックの輪郭は程よく丸みを帯び、倍音の伸びやかさも心地よい。ウッドベースは弦のたわみをハリ良くくっきりと描きつつ、胴鳴りをブンブンと立派に響かせる。スネアやキックドラムのボディも太くスムーズなアタック感で、ブラシの粒立ちも細やかだ。
続いて骨太なハードロック曲であるデイヴ・メニケッティのセカンドソロアルバム『メニケッティ』から「メッシン・ウィズ・ミスター・ビッグ」を聴く。デイヴは正統派アメリカンHM/HRバンド、Y&Tのリードギター&ボーカリストを務めるフロントマンとして著名であるが、ブルージーな泣きのギタリストとして側面を存分に堪能できる本盤ではドラムやベース、ギターのベーシックトラックをチャンネル当たりの記録面積が大きな16chアナログマルチレコーダーで収録したことで低域の緻密で押し出し良い充実したサウンドを楽しむことができる。この「DNA」ではレスポールならではの倍音の甘いディストーションを粒立ち良くまとめ、伸びやかなリードと押し出しの馬力、そして粘りのあるリフをバランスよく響かせてくれた。リズム隊はエッジのハリ良く厚みのある音像となり、明瞭感あるボーカルをどっしりと支えてくれている。
さらにもう一曲ロックとしてハイレゾ版マスターから高音質な圧縮ファイル化した、Mastered for iTunes仕様のボン・ジョヴィ『ワイルド・イン・ザ・ストリーツ』から「ウィズアウト・ラヴ」を聴いてみた。このファイル以外は非圧縮でのCDリッピング素材であったので粗のないすっきりとしたサウンドであったが、こちらはハイレゾ由来とはいえ圧縮されることで高域成分のノイズっぽさや音像の細さが目立つ傾向であることは否めない。しかし「DNA」のもつ中低域の厚みが程よく線の細さをカバーし、ギターワークもスムーズにトレース。リズム隊やボーカルのボディ感もふっくらと表現してくれる。ジョンの口元はシャープさを残しながらもきつさを抑えて耳当たり良い輪郭を描く。ベースラインは滑らかで非常に聴きやすい。
さらにポピュラーなものとして劇場版『けいおん!』から「Unmei♪wa♪Endless!」も聴いてみたが、こちらはCDからの非圧縮リッピング素材となる。高音質ではないものの凝りに凝ったアレンジで細やかなフレーズが詰み込まれ、キレ良くソリッドに張り出す唯のボーカルが印象的な楽曲だ。
ただ時としてそうしたポイントの高域成分が耳に痛く刺さることもあり、明瞭度を保ちながらバランス良く聴けるヘッドホンとなってくると数が限られてくる。本機では高域の尖った成分を程よく丸めながらもメリハリを利かせたサウンドバランスとなっているので、ボーカルも小気味よくスムーズに際立ち、コーラスワークも粒立ち良くまろやかに浮かんでいる。エレキのリフを一つ一つ細やかに引き立てつつエッジをきらりと強調。ディストーションの歪みも厚み良くズンズンと響かせてくれる。リズム隊は密度良い押し出しで、全体的に厚みのある耳当たり良いサウンドだ。
基本的な音作りはiPodやiPhoneなどのスマホ直挿しを想定しているため、特にポタアンやアイバッソオーディオ「HDP-R10」などのような高音質プレーヤーを繋がなくともバランス良く楽しむことができる。ただしそうしたオプショナルな環境においてはより制動が効き、音像の輪郭や存在感をリアルに浮き立たせ、密度感ある中低域もむっちりとした弾力良い質感表現へと変化してくる。着脱式のリモコン非装備ケーブルが付属となっていることでこのようなステップアップも簡単に試すことができるのも「DNA」の魅力の一つといえるだろう。
<岩井喬 Takashi Iwai>
1977年・長野県北佐久郡出身。東放学園音響専門学校卒業後、レコーディングスタジオ(アークギャレットスタジオ、サンライズスタジオ)で勤務。その後大手ゲームメーカーでの勤務を経て音響雑誌での執筆を開始。現在でも自主的な録音作業(主にトランスミュージックのマスタリング)に携わる。プロ・民生オーディオ、録音・SR、ゲーム・アニメ製作現場の取材も多数。小学生の頃から始めた電子工作からオーディオへの興味を抱き、管球アンプの自作も始める。 JOURNEY、TOTO、ASIA、Chicago、ビリー・ジョエルといった80年代ロック・ポップスをこよなく愛している。