公開日 2013/06/17 12:00
パナソニック“VIERA”新フラグシップ「VT60」「FT60」を鴻池賢三がチェック!
VT60はVGP総合金賞受賞
パナソニック“VIERA”が、また大きな進化を遂げた。プラズマテレビの最上位「VT60」は新パネルを搭載し、自発光パネルならではのメリットをさらに高めた結果、VGP2013SUMMERで総合金賞を受賞した。さらに液晶テレビの「FT60」は高画質化だけでなく、スマート機能の充実ぶりも特筆される。両機の実力を、VGP審査員の鴻池賢三氏が詳しく紹介する。
最先端の表示デバイスと
機能を搭載した最上位機
プラズマの「VT60」シリーズと液晶の「FT60」シリーズは、それぞれの表示デバイスの特長を突き詰めて画質を極め、共に最先端のスマート機能を充実させたフラグシップモデルである。特にVT60シリーズは、プラズマ方式ならではの透明感に溢れる画調を熟成させた点が高く評価され、「VGP2013 SUMMER」で総合金賞が授与された。今回は、それぞれに磨き上げられたVT60/FT60シリーズの高画質化技術と機能について、筆者のインプレッションも交えて解説していく。
新開発パネルの搭載によってVT60は新たな高みに到達
プラズマパネルの性能を
極めたVT60シリーズ
画質を語る上で重要な性能は、ダイナミックな明暗のコントラスト、黒の絶対的な沈み、ユニフォーミティー、階調表現の緻密さ、色の純度などが挙げられる。元来、プラズマは黒の再現が得意であり、ピーク輝度も高く、暗い場所でのコントラスト性能、いわゆる暗所コントラストに優れていた。一方で、リビングなどの明るい部屋では、照明や外光がパネルを白く浮かせてしまい、強みである黒の沈みや暗部の階調再現性能が発揮できないというジレンマがあった。
VT60シリーズでは、改良を積み重ねてきた「フル・ブラックパネル」を熟成させた新しい「フル・ブラックパネルIV プラス」を搭載。暗室だけでなく、明室でも深い黒が表現可能になった。これは、電源オフの状態でパネル面が漆黒を湛える事からもわかる。さらに、この黒の絶対的な締まりは、従来から積み上げてきた弱放電やサブフィールドの増加による暗部階調表現の緻密化も最大限に引き出すに至った。黒の絶対的な沈みは、画質全体を底上げする源泉となっているのだ。
特筆すべきは、シネマプロモードの進化である。前モデルのZT5も緻密な階調表現で評価を得たが、これは最大輝度を制限する事によって階調密度を高めていた。VT60シリーズでは、従来のシネマモードの輝度を確保しつつ、サブフィールドを増やす事により、暗部から明部まで高い階調密度が得られるように進化している。例えば、空の群青色から白へ続く明るいトーンのグラデーションも滑らかかつ濃密で、同社が「ベルベット画質」と呼ぶ所以である。
新しくなった「フル・ブラックパネルIV プラス」のポイントとしては、赤色蛍光体の刷新により、より純度の高い赤色が表現できるようになり、色域が大幅に拡大したのも見逃せない。スペック上では、デジタルシネマ色域比98%に至ったほか、実際の映像を確認しても、黒の絶対的な締まりとの相乗効果で、明室でも色が洗い流されず、深く濃い赤色の発色が印象的だ。例えば女性のルージュ。一般的な映像装置で「濃く」設定すると、大抵は色域の再現能能力が不足するので、彩度ではなく明度を上げて誇張する事になり、不自然さを招く。VT60の広色域性能を持ってすれば、彩度が高く、真に深く濃い赤色が表現できるのだ
VT60シリーズは、プラズマが得意とする黒の再現性をさらに磨き、ピーク輝度の高いよりダイナミックなコントラスト性能を進化させた。また、明るい部屋でも高画質を実現する輝度性能の実現や、さらなる滑らかな映像美を追求するなど、プラズマならではの高画質を極めたと言える。コントラスト性能の向上は、映像の精細感向上にも一役買っているように感じた。見る角度によって映像の見え方が変わらないのもプラズマならではの特長で、大勢で取り囲むような視聴スタイルでも、その優れた高画質が損なわれないのは一貫した美点と言える。
さらなる高画質化を
実現したFT60シリーズ
液晶テレビのアドバンテージは、明るく力強い映像と言えよう。最近ではバックライトの光源がLEDに置き換わり、省エネ性能の向上も進んでいる。一方で、液晶パネルの基本特性として、斜めから見るとコントラストや色味が変化する、いわゆる視野角特性の問題や、映像の動きに伴う残像が課題であり、改良を重ねてきた歴史がある。残像については、中間調での液晶応答速度を向上した新パネルと、バックライトのスキャン制御を組み合わせた16倍相当の駆動により、ほぼ克服したと言って良いだろう。
そして、今回新登場したFT60シリーズは、視野角特性で大きな進展を見せた。上下左右に加え、斜め水平方向から見てもコントラストや色鮮やかさが損なわれにくいIPS方式の液晶パネルを採用。実際に実用範囲を超える斜めから確認したが、コントラスト、色味など、映像の見え方に殆ど変化は無く、正面から見るのと同等にメリハリのある色鮮やかな映像が楽しめた。視野角特性についてもほぼ克服したと言って良いレベルだ。コントラスト性能も向上し、暗室に近い状態でも黒が沈む様は、前モデルと比べても一目瞭然。映画視聴時に現れる上下の黒帯がほんの少し明るく浮いて見えるが、青味が乗らず快適さが損なわれない。
映像モードは、原信号に忠実な「シネマプロ」のほかに「シネマ」が用意される。「シネマ」は、バックライトのローカルディミングを利用し、コントラストの向上をベースに、色調を含む画作りが施されている。液晶の持ち味を活かしたハイコントラストな映像は、輝きの感じられる見応えのある映像美を見せる。白黒のコントラスト向上は解像感アップにも繋がっているようだ。
熟成度と完成度の高さは新フラグシップにふさわしい
膨大なデータベースを参照
超解像技術を新たに搭載
VT60/FT60シリーズで共通の新機能が、超解像技術の「ファインリマスターエンジン」だ。手法は約3万通りもの映像データベースを内蔵し、入力した映像とリアルタイムに照合して信号圧縮処理などによる映像の劣化を復元する。パワフルな映像処理能力の成せる業だ。
中でも「キラメキ復元効果」は、圧縮率が高く鈍りがちな地上デジタル放送に有効で、クリスタルや金属の輝きを増し、質感を豊かにする。他にも、古い映像ソースに見られるノイズの除去や、低解像度のネット映像を鮮明化する性能に長け、HD映像とギャップの少ない快適な視聴が可能だ。
表示パネルの性能を突き詰め、独自の高精度超解像技術で画質を極めたVT60/FT60シリーズは、アプリ「VIERA Remote2」による「スマートキャリブレーション」機能も利用可能。ある時はモニターライクに、あるときは色彩豊かにと柔軟な調整もできる。高画質を積極的に、そして永く楽しみたいマニアックなユーザーも必見の仕上がりだ。機能面では、カスタマイズ可能で顔認識による切り換えも可能なホーム画面や、洗練度を増した音声操作など、多機能化するテレビの使い勝手を高めるスマート機能も最先端。熟成度と完成度の高さは、新フラッグシップの双璧と呼ぶにふさわしい。