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公開日 2013/10/15 12:01

大橋伸太郎が観た「EH-TW7200」ー 映画の世界を描き出す表現力。シネフィルにお薦めしたいモデル

【特別企画】エプソン新プロジェクターの実力に迫る
大橋伸太郎
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今季のプロジェクター新製品のダークホース的存在が、エプソンの「EH-TW7200」である。昨季までエプソンの3LCD高級機は、フラグシップのEH-TW8100/8100WとTW6100/6100Wで担っていた。今季、TW8100はTW8200に発展。一方TW6100は継続である。そして、両機の間を埋める存在として新たに「EH-TW7200」が登場した。TW6100に搭載されなかった、エプソンのプロジェクターの切り札的機能である「レンズシフト」が搭載されているのが大きな特長だ。

EH-TW7200

EH-TW7200の背面部

予想実売価格はワイヤレス対応のTW8200Wが32万円台後半、TW8200が29万円台後半。そしてTW7200が24万円台後半である。TW7200にワイヤレスモデルは用意されておらず、両機の実質的価格差は約5万円程度ということになる。

TW8200/TW8200WとTW7200は、プロジェクターとしての基本構成はほぼ共通である。0.74型ワイドポリシリコンTFT液晶パネル(D9)を搭載(TW6100は0.61型)、フル10bitカラープロセッシング(一部12bit処理 TW6100はフル10bit)、3Dと2Dの両方で超解像処理を行うことも共通である。それでは、TW8200/TW8200WとTW7200はワイヤレス仕様の有無を除いてどこが違うのか。

中級機ながらレンズシフト機能を搭載したのが大きな特長だ

第一に「ディープブラックテクノロジー」がTW7200は非搭載になる。その結果、ダイナミックコントラストがTW8200(W)の60万:1に対しTW7200は12万:1、最大輝度がTW8200/TW8200Wの2,400ルーメンに対しTW7200は2,000ルーメンとなる。

第二に、TW7200はフレーム補間が適用されない。筆者が得た情報では、レンズシステムは3群8枚構成で同じだが、TW8200/TW8200Wはフォーカス感とフレアー表現で一枚上を狙ったという。

しかし、違いはそれだけ。ワイヤレスを必要としないユーザーにとって、TW7200は非常に魅力的な選択肢に違いない。いや、EH-TW8200/TW8200Wの前に現れた最大のライバルがTW7200かもしれない。以上の理由から、非常に大きな興味を抱いて視聴に臨んだ。

映画の世界を描き出す独自の魅力を持つ
シネフィルにお薦めしたいモデル



結論を先にいうと、両機の違いは「ディープブラックテクノロジーの有無によるコントラスト感の差異」に尽きる。当然、TW8200/TW8200Wの方が、黒表現の厳しい追い込みで勝る。しかし、TW7200が画質の風下にいるかというとそうもいえない。その辺りが映画という芸術を表現するパフォーマー・プロジェクターの一筋縄でいかないところである。少しでも映像の明暗を描き出し細部の情報に肉薄しようというリファレンスモニター的な意味合いでは、TW8200/TW8200Wに分がある。しかし、映像作品、特に実写映画を一つの完結した映像世界として描き出し没入する点では、TW7200ならではの独自の魅力がある。

暗部の表現に関して、TW7200のシネマモードは過度に低域ガンマを寝かせず、暗部が自然に見通せて情報がありのままに浮かび上がる。TW8200/TW8200W同様に暗部のRGBのバランス管理も優れていて色が浮き上がることがない。こうした穏やかな落ち着いた暗部の表現は、条件のいい劇場で上映を見ている時の印象そのものである。

映画上映の黒は、一部のLCOSやDLPの出す硬い黒ではない。柔らかく生命感のある黒である。コントラストを無理に拡張していないために、ガンマのアウトプット特性が非常になめらかで、入力映像によらず明部から暗部まで階調に自然で素直な連続性があり、映像のインテグレーション(一体感)がつねに失われない。レンズや光学系が過度に鮮鋭感と精細感を狙わないため、エッジやディテール表現が自然で電気的ノイズを強調しない。こうした特徴に、TW7200は映像(特に映画)を熟知したエンジニアが作り上げた映像(映画)に寄り添った本物の映像機器であることに気付く。

「EH-TW8200/8200W」と「EH-TW7200」。ワイヤレスを必要とするなら前者だが、映像を見ることに関しては甲乙付けがたい。家庭での映像表現の可能性に挑んでいく尖った魅力なら前者、劇場で家庭で、過去から現在まで映像を見ることに長けた<シネフィル>には、あえて後者を薦めよう。

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