公開日 2015/07/24 12:05
B&O PLAY「H3」レビュー:手にして、耳で確かめてみてほしいイヤホン
いまではそんなことはないが一昔前の、iMacやiPodがヒットするより以前のAppleやMacは、優れたデザイン性と実際の使いやすさを備える…のは知ってるけど高くて買えないよ!というブランドだった。「憧れの」というアイテムだったのだ。
PCにおいてのMacがそうだったように、オーディオ・ビジュアルにおいてのB&Oも、優れたデザイン性やクオリティは広く認められていて憧れを抱かれてもいるが、実際にそれを手にした方は多くないというブランドだったように思える。既存の枠を無視して機能性やデザイン性を突き詰めた姿は孤高のものであり、その価格も孤高のものだった。何というか、遠巻きに眺めるしかないような存在だったのだ。
しかし現在、iPhoneを筆頭にMacも含めてApple製品は生活に身近なものとなっており、価格的にも他のスマートフォンやPCと比べて無理なものではない。
そして実は、B&Oも変化している。
「B&O」ブランドのアイテムは変わらず先進的だし憧れるしかない雰囲気だが、「B&O PLAY」というカジュアルブランドが新たに用意され、B&Oらしさは継承しつつもB&Oほどの超ハイエンドではない、もっと身近なアイテムが提供されるようになっているのだ。イヤホンやヘッドホン、ワイヤレススピーカーといった分野において「B&O」のエッセンスを楽しめる。
そしてそれらの製品は、ブランドへの憧れとかは特にないという方にとっても魅力的なはずだ。B&O製品はB&O製品だから魅力的なのではない。順序としては当然、製品の造形や洗練された機能性が魅力的だったからこそブランドの価値が生まれたわけだ。そういった製品自体の魅力を、いまのB&Oも、そしてB&O PLAYも備えている。
音質とデザイン性を両立した美しい外観
さてそんな「B&O PLAY」のアイテムの中から今回特にピックアップするのは、イヤホンの「BeoPlay H3」というモデルだ。執筆時点でのオンライン直販価格は2万5,200円。現在のイヤホン市場でいうとミドルクラスあたりだろうか。
ぱっと見たところでは奇抜さは感じないと思う。名機「A8」を継承する「Earset 3i」のような「これぞB&O!」という独創的かつ機能的な造形ということはなく、普通にカナル型イヤホンだ。このブランドの「らしさ」を求める方には物足りないかもしれない。しかし細部を見ていけば、これもやはり同社のこだわりを込めたモデルなのだとわかってくる。
主筐体は無垢材から削り出し美しい表面仕上げを施したアルミニウムで、その周囲に樹脂系素材を組み合わせてある。
特に注目してほしいのは同社ロゴも据えられている正面だ。輝きも適度に残したヘアライン仕上げとなっており、派手すぎず落ち着きすぎずの絶妙な質感とされている。
そしてその面には、ロゴを取り囲むように微細な空気孔らしきものが多数開けられている。また耳に当たる面にもひとつの空気孔らしきものが設置されている。これらはもちろん音響的な調整のためのものだ。しかしその精密な加工の様子は、同時にデザインのアクセントにもなっている。音質面とデザイン面、どちらの意味から見てもこのモデルのキーポイントと言ってよいだろう。
バランスの良さと抜けの自然さを高度に実現
目で、耳で楽しんでもらいたいモデル
さてでは実際の音の印象だが、まず手短にまとめるとその強みは「バランスの良さと、抜けと広がりの自然さ」にある。カナル密閉型で、特に後者を確保するのは簡単ではない。しかしおそらく前述の空気孔による調整が大きいのではないかと思うが、このモデルはその点を高度にクリアしている。
シンプルなピアノトリオ編成ながらも幅広い音域とダイナミクスで展開される上原ひろみさん「ALIVE」では、それら全ての強みが見事に発揮される。特定の楽器やフレーズが不適当に飛び出てくることはないし、場面によっては適切に飛び出してくる。音の下地と音への反応が素直といった印象だ。
特にドラムスは、シンバルはほどよくほぐれて嫌な鋭さは出さず、太鼓は硬くも柔らかくもなくタンッと自然な抜けっぷり。バスドラムやベースは、量感や重みを重視する方には少し物足りないかもしれない。しかし十分には確保されているし、抜けがよくて音がもたつかないのでリズムもキレがよい。
花澤香菜さん「こきゅうとす」では、彼女の声を中心に置いた豊かな広がりを、カナル型イヤホンらしからぬほどにしっかり表現してくれることが印象的だ。音が頭にこもらず、その響きが外に綺麗に抜けるように薄れていく感じというか…とにかく心地よい。
全体的な印象はもちろん、主役である声との相性も悪くない。この曲での声色は大雑把に言うとウィスパーとかハスキーとかいうことになるだろうが、その刺さる成分をほぐして優しくしてくれる。もっとシャープな描写の方が、より完璧に近いとは思う。しかしこの、厳格すぎないというか音楽的な甘さを残した再現性といったような感じも悪くない。
B&Oを手にすることを望む方。華美ではなくしかし整ったデザインを好む方。ただサウンドクオリティがあればよいという方。いずれの方にも目にして、そして手にして、耳で確かめてみてほしいイヤホンだ。
PCにおいてのMacがそうだったように、オーディオ・ビジュアルにおいてのB&Oも、優れたデザイン性やクオリティは広く認められていて憧れを抱かれてもいるが、実際にそれを手にした方は多くないというブランドだったように思える。既存の枠を無視して機能性やデザイン性を突き詰めた姿は孤高のものであり、その価格も孤高のものだった。何というか、遠巻きに眺めるしかないような存在だったのだ。
しかし現在、iPhoneを筆頭にMacも含めてApple製品は生活に身近なものとなっており、価格的にも他のスマートフォンやPCと比べて無理なものではない。
そして実は、B&Oも変化している。
「B&O」ブランドのアイテムは変わらず先進的だし憧れるしかない雰囲気だが、「B&O PLAY」というカジュアルブランドが新たに用意され、B&Oらしさは継承しつつもB&Oほどの超ハイエンドではない、もっと身近なアイテムが提供されるようになっているのだ。イヤホンやヘッドホン、ワイヤレススピーカーといった分野において「B&O」のエッセンスを楽しめる。
そしてそれらの製品は、ブランドへの憧れとかは特にないという方にとっても魅力的なはずだ。B&O製品はB&O製品だから魅力的なのではない。順序としては当然、製品の造形や洗練された機能性が魅力的だったからこそブランドの価値が生まれたわけだ。そういった製品自体の魅力を、いまのB&Oも、そしてB&O PLAYも備えている。
音質とデザイン性を両立した美しい外観
さてそんな「B&O PLAY」のアイテムの中から今回特にピックアップするのは、イヤホンの「BeoPlay H3」というモデルだ。執筆時点でのオンライン直販価格は2万5,200円。現在のイヤホン市場でいうとミドルクラスあたりだろうか。
ぱっと見たところでは奇抜さは感じないと思う。名機「A8」を継承する「Earset 3i」のような「これぞB&O!」という独創的かつ機能的な造形ということはなく、普通にカナル型イヤホンだ。このブランドの「らしさ」を求める方には物足りないかもしれない。しかし細部を見ていけば、これもやはり同社のこだわりを込めたモデルなのだとわかってくる。
主筐体は無垢材から削り出し美しい表面仕上げを施したアルミニウムで、その周囲に樹脂系素材を組み合わせてある。
特に注目してほしいのは同社ロゴも据えられている正面だ。輝きも適度に残したヘアライン仕上げとなっており、派手すぎず落ち着きすぎずの絶妙な質感とされている。
そしてその面には、ロゴを取り囲むように微細な空気孔らしきものが多数開けられている。また耳に当たる面にもひとつの空気孔らしきものが設置されている。これらはもちろん音響的な調整のためのものだ。しかしその精密な加工の様子は、同時にデザインのアクセントにもなっている。音質面とデザイン面、どちらの意味から見てもこのモデルのキーポイントと言ってよいだろう。
バランスの良さと抜けの自然さを高度に実現
目で、耳で楽しんでもらいたいモデル
さてでは実際の音の印象だが、まず手短にまとめるとその強みは「バランスの良さと、抜けと広がりの自然さ」にある。カナル密閉型で、特に後者を確保するのは簡単ではない。しかしおそらく前述の空気孔による調整が大きいのではないかと思うが、このモデルはその点を高度にクリアしている。
シンプルなピアノトリオ編成ながらも幅広い音域とダイナミクスで展開される上原ひろみさん「ALIVE」では、それら全ての強みが見事に発揮される。特定の楽器やフレーズが不適当に飛び出てくることはないし、場面によっては適切に飛び出してくる。音の下地と音への反応が素直といった印象だ。
特にドラムスは、シンバルはほどよくほぐれて嫌な鋭さは出さず、太鼓は硬くも柔らかくもなくタンッと自然な抜けっぷり。バスドラムやベースは、量感や重みを重視する方には少し物足りないかもしれない。しかし十分には確保されているし、抜けがよくて音がもたつかないのでリズムもキレがよい。
花澤香菜さん「こきゅうとす」では、彼女の声を中心に置いた豊かな広がりを、カナル型イヤホンらしからぬほどにしっかり表現してくれることが印象的だ。音が頭にこもらず、その響きが外に綺麗に抜けるように薄れていく感じというか…とにかく心地よい。
全体的な印象はもちろん、主役である声との相性も悪くない。この曲での声色は大雑把に言うとウィスパーとかハスキーとかいうことになるだろうが、その刺さる成分をほぐして優しくしてくれる。もっとシャープな描写の方が、より完璧に近いとは思う。しかしこの、厳格すぎないというか音楽的な甘さを残した再現性といったような感じも悪くない。
B&Oを手にすることを望む方。華美ではなくしかし整ったデザインを好む方。ただサウンドクオリティがあればよいという方。いずれの方にも目にして、そして手にして、耳で確かめてみてほしいイヤホンだ。