公開日 2017/07/21 10:00
【製品批評】STROMTANK「S5000」 ー 大容量バッテリーを採用したオーディオ専用クリーン電源システム
アンプとの組み合わせで圧巻の力感
クリーン電源システム
STROMTANK
S5000
¥5,500,000(税抜)
ドイツのハイエンドブランド“MBL”創業者が立ち上げた「STROMTANK」から登場した、バッテリー駆動によるオーディオ専用クリーン電源システム「S5000」。
純粋な正弦波コンバーター電源によるハイパワーなバッテリーパックで、愛用システムをグリッド電流から完全に切り離し、さらに電流パルスはバッテリーにて吸収されてグリッドから直接の影響を受けない。この画期的な本システムの実力を検証する。
まず試聴のために自宅に持ち込まれた本機を見て驚愕した。サイズは480×580×590mmで質量115sと想像をはるかに超える大きさで、従来のオーディオ機器とは次元が異なっている。
仕組みは明快である。家庭用のAC電源で内蔵した低環境負荷バッテリーを充電し、そこからDC/ACコンバーターで変換した水晶制御のAC電力を取り出している。この方法ではバッテリーに充電した瞬間に屋内配線(グリッド)に汚染したノイズは消えており、純度の高い交流に変換される。使用しているバッテリーは容量5,000Whのリン酸鉄リチウムイオン電池だ。充電には時間がかかるが、充電しながら使用することもできる。電池寿命は6,000回以上で十分に長いく、トップパフォーマンスは4,000W以上である。
試聴は二度に分けて行った。最初はプリアンプの電源をS5000から取り出して聴き、2回目はパワーアンプ2台を加えてすべての機器の電源を取り出すことにした。一般的なシステムに近い電力での効果も確かめたかったからだ。私のシステムでは、作動時350Wの電力が必要な純A級パワーアンプ、アキュフェーズ「A-200」を使っており、2台だけの電力消費でも700Wに達する。
愛用するプリアンプ、アキュフェーズ「C-3850」に必要な電力は、S5000にとっては極小と言える。この試聴で中心になったのは、屋内配線で取り込んだノイズや歪みがどこまで取れるかということだ。オーディオ機器への配線を一般回線に繋がる壁コンセントに繋ぐと、無音状態で音場がわずかに曇っていたが、S5000を使うと曇りが消え、澄みきった無音状態となった。
このテストでは興味深い現象があった。S5000を使わない時と使った時の力感の差だ。どちらの場合も音量は同じに設定しているのに、本機を使った時の方がパーカッションの打音で強く聴こえた。しかもこの差は中・高音では聴けず、低音でのみ聴こえる。この現象は次のテストでさらに強く現れた。
バッティストーニ指揮 東京フィルが演奏する『ムソルグスキー:展覧会の絵』の「バーバ・ヤガー」で、冒頭に現れるグランカッサの強打音の力感が、S5000を使った時と使わない時とで、差がくっきりと表出されたのだ。S5000を使わない時の打音も相当に強いが、使った時の打音は身体を揺するほどの強さである。
また、このごろ試聴に欠かさぬCD『サンチェスの子供たち』に出てくるドン・カマの強打音でも、力感の差がくっきり現れる。この曲ではあまりの差に感激し、アナログLP盤での比較まで行ってしまった。S5000の試聴で学んだのは音の力感を増すための手段だった。電源は静寂感ばかりでなく、音の力感も左右するのだ。
(貝山知弘)
Specifications
●入力:50−140 Vac / 45−65Hz(自動検知)●出力:100 Vac / 50Hz / 60Hz+/−0.05%(水晶制御)●バッテリータイプ:LFP−リン酸鉄リチウムイオン電池(LiFePO4)●通常バッテリー電圧:48 Vdc●容量:5000 Wh●トップパフォーマンス:>4000 W●サイズ:480×580×590mm●質量:115 kg●取り扱い:(株)ステラ
※本記事は「季刊オーディオアクセサリー」164号所収記事の一部を抜粋したものです。くわしいレビューは雑誌でご覧頂けます。購入はこちらから