• ブランド
    特設サイト
公開日 2017/08/08 09:28

【レポート】ソニーの「SPRITZER」は“ハイレゾ・レディ”なシングルボードコンピューターだった!

S-Master HX相当のクラスDアンプを搭載
海上 忍
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
電子工作・機械いじり好きが集うイベント「Maker Faire Tokyo」。Raspberry piやArduinoなどシングルボード・コンピューターの盛り上がりもあり、今年は関連プロダクトを出品する企業も目立った。本稿ではオーディオ用途に絞り、気になった新製品を紹介したい。

「Maker Faire 2017」は8月5日・6日に東京ビッグサイトで開催された


広い意味でのオーディオ分野における新製品としては、ソニーセミコンダクタソリューションズの「SPRITZER」が挙げられる。Arduino Nano相当の基盤に最大156MHz動作のARM Cortex-M4Fを6コア搭載するマイコンボード/シングルボードコンピューターであり、ドローンや監視カメラなどIoT分野での活用を見据えたデバイスだが、我々オーディオファンが知るソニーらしい"味付け"がなされている。

ソニーは企業エリアに「SPRITZER」ブースを構えた

それは、オーディオ用途を意識した機能だ。SPRITZERはカメラやディスプレイ、ワイヤレス機能やセンサー機能を搭載した2つのチップ(CXD5602)と、電源およびオーディオ関連機能を備えたチップ(CXD5247)で構成されるが、後者には電源のほかマイク入力とClass-Dアンプが搭載されている。

SPRITZER本体。約2cm×5cmとArduino Nano相当のサイズにシングルボードコンピューターとしての機能が収められている

SPRITZERの概要図。パワーマネジメントIC部分にS-Master HX相当の回路が搭載されている

そのClass-Dアンプとは、ソニー製オーディオ機器でお馴染みの「S-Master」。話を訊くと、「ハイレゾ再生に対応しており、S-Master HX相当」(IoTソリューション事業部 小泉氏)とのこと。音質指向のオーディオ回路を標準装備する汎用シングルボードコンピューターは、おそらく世界初だろう。

S-Master(HX)は、すべての増幅プロセスをデジタル領域で行うフルデジタルアンプであり、高精度なパルス信号を生み出す。量子化ノイズを再生帯域外へ追いやるノイズシェーパー技術、ジッターの影響をデジタル領域で除去するクリーンデータサイクル技術など、小型ながら高いパフォーマンスを発揮するチップであり、WalkmanシリーズやAVアンプなど、多くのソニー製オーディオ機器に採用されてきた。

SPRITZER自体は約2cm×5cmの小型ボードであり、それ自体から最終的な音(アナログ信号)を出すことはできないが、一種のI/Oボードを用意することでオーディオ機器としての可能性が拡がる。ブースには、ヘッドホン端子やmicroSDカードスロットを備えたプロトタイプが展示されており、スピーカーで音楽を再生するデモ(センサーを手で遮ると音量が小さくなる)を実施していた。DACチップなしにデジタル音源を再生できるため、ポータブルオーディオ機器のコア部分としての用途には適していそうだ。

SPRITZERをIOボードに載せたところ

IOボードの概要図。ヘッドホン端子やmicroSDカードスロットが搭載されているほか、Shield用のピンを確認できる

マイク入力に対応することもポイント。デジタルマイクは最大8チャンネル、アナログマイクは最大4チャンネルの入力をサポートする。「マルチトラック録音や音響ビームフォーミングのほか、ノイズキャンセリングに活用できる」(小泉氏)とのことで、S-Master HX相当の出力段とあわせれば、ユニークな小型オーディオ機器も開発できそうだ。IOボードを用意すれば、Arduino用エクステンションボード(Shield)も搭載可能なため、拡張性も担保できる。

開発といえば、ハードウェア/ソフトウェアデベロッパーの存在を強く意識した取り組み方針も紹介してくれた。適用するライセンスは未確定ながら、「SPRITZER本体とIOボードの回路図を公開する」(小泉氏)とのこと。Arduino互換の開発環境(Arduino IDE)を整備するほか、オーディオ再生用APIの提供も検討中だという。

ブースで実施されていたオーディオ再生デモ。オーディオ出力はヘッドホン端子経由で行われていた

ブースで配布されていたフライヤーでは、192kHz/24bitのハイレゾ再生に対応することが強調されていた

サードパーティーのフォローアップは、「SONY Developer World」を中心に行われる。「家電製品に組み入れるなどの組み込み用途もOK」(IoTビジネス部 太田氏)
とのことで、すでにRaspberry Piで実現されているような市販オーディオ機器への搭載も実現できそうだ。

OSには、組み込み用途に設計されたリアルタイムOS「NuttX」が採用される。POSIX/ANSI準拠であり、LinuxやBSDからのソフトウェアの移植は比較的容易と考えられるが、SPRITZERのメモリは約1.5MB。「現状FLACなど復号化処理を伴う音源の再生はやや厳しい」(小泉氏)とのこと。SPRITZERの発売は2018年春が予定されており、それまでになんらかの解決策が見出されることに期待したい。

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

トピック

クローズアップCLOSEUP
アクセスランキング RANKING
1 「オーディオのオンキヨー」復活へ。新スピーカーとセパレートシステムを年明けのCESで発表
2 【完全ワイヤレスイヤホン特集 PART.10】音のプロが選ぶベストバイは?
3 CD再生とファイル再生の架け橋に!Shanlingからリッピング機能付きトランスポート「CR60」が登場
4 今こそ「ミニコンポ」が面白い! デノン/マランツ/B&Wの令和ライフにマッチする厳選5モデルレビュー
5 水月雨、『崩壊:スターレイル』とのコラボ完全ワイヤレス。ダイナミック+環状平面駆動の同軸ドライバー搭載
6 【ミニレビュー】空き電源コンセントに挿入するだけ。オーディオみじんこ「SILVER HARMONIZER AC-ADVANCE」
7 モニターオーディオ「GOLDシリーズ」レビュー。ユニット大幅刷新の第6世代機は「ハイスピードで焦点の明確な音調」
8 AVIOT、『らんま1/2』コラボ完全ワイヤレスイヤホン。完全新録ボイス240種類以上搭載
9 Nothing、スマホ/イヤホンが最大30%オフ価格になるウィンターキャンペーン。先着順で靴下もらえる
10 要注目の新興ブランド、ラトビア「アレタイ」スピーカー試聴レビュー!広大な空間描写力が魅力
12/20 10:05 更新
MAGAZINE
音元出版の雑誌
オーディオアクセサリー193号
季刊・オーディオアクセサリー
最新号
Vol.195
オーディオアクセサリー大全2025~2026
別冊・ケーブル大全
別冊・オーディオアクセサリー大全
最新号
2025~2026
プレミアムヘッドホンガイドマガジン vol.22 2024冬
別冊・プレミアムヘッドホンガイドマガジン
最新号
Vol.22
プレミアムヘッドホンガイド Vol.32 2024 AUTUMN
プレミアムヘッドホンガイド
(フリーマガジン)
最新号
Vol.32(電子版)
VGP受賞製品お買い物ガイド 2025年冬版
VGP受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2025年冬版(電子版)
DGPイメージングアワード2024受賞製品お買い物ガイド(2024年冬版)
DGPイメージングアワード受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2024年冬版(電子版)
音元出版の雑誌 電子版 読み放題サービス
「マガジンプレミアム」お試し無料!

雑誌販売に関するお問合せ

WEB
  • PHILE WEB
  • PHILE WEB AUDIO
  • PHILE WEB BUSINESS
  • ホームシアターCHANNEL
  • デジカメCHANNEL
AWARD
  • VGP
  • DGPイメージングアワード
  • DGPモバイルアワード
  • AEX
  • AA AWARD
  • ANALOG GPX