公開日 2018/01/15 11:49
スマートスピーカーは音質で選ぶ! オーディオメーカーの本格派4モデルを聴き比べる
<山本敦のAV進化論 第151回>
2017年秋、アマゾンのAlexa、グーグルのGoogleアシスタントを搭載するスマートスピーカーが日本上陸を果たした。それから「賢いAIアシスタントとこんな会話が楽しめた」というレビューはよく目にするが、実はそれぞれのアシスタントを搭載する、オーディオブランドがつくった「音のいいスマートスピーカー」も続々と発売されているのだ。
コストパフォーマンスを重視して設計されたアマゾン「Echo」シリーズ、グーグル「Google Home」シリーズより音質は上とはっきり言い切れるし、機能面でも音楽再生に特化し、ていねいにブラッシュアップされている。今回は「音質」に注目したいスマートスピーカーを集めて一斉レビューしてみたいと思う。
なおリファレンスの音楽コンテンツは、Googleアシスタント搭載スピーカーはSpotify、Alexa搭載モデルはAmazon Music Unlimitedから再生している。各モデルのAIアシスタントまわりの使い勝手はほぼ共通なので、今回のレポートではあえて割愛する。過去に本サイトで掲載しているGoogle HomeやEchoの製品レビューをぜひ合わせてチェックしてほしい(Google Homeレビュー/Echoレビュー)。
■オンキヨー「G3」
オンキヨーはいち早くGoogleとAmazonのAIアシスタントを搭載するスマートスピーカーを発表したブランドのひとつだ。日本で発売されたモデルに先駆けて、北米ではAlexa搭載の「VC-FLX1」も発売している(関連ニュース)。
それ以前にWi-FiやBluetooth対応のワイヤレススピーカーを開発してきたノウハウがスマートスピーカーにも活きている。他のオーディオブランドが開発したスマートスピーカーにも同じアドバンテージがあると言えるだろう。
日本で発売されたGoogleアシスタント搭載モデルは「VC-GX30」、通称“G3”だ(関連ニュース)。写真で見ると立方体のシンプルなデザインだが、老舗のオーディオブランドらしくキャビネットにMDF(木)を使っているので、部屋に置いてみるとどことなく温もりが漂ってくるようなかわいらしさがある。
通常スピーカーシステムを設計・開発する際にはユニットのパフォーマンスを最大化するため、ハコであるキャビネットは不要な “鳴き=振動” を徹底的に抑えていく方向で作り込むものだが、オンキヨーではG3のようにコンパクトな筐体サイズを超える雄大なサウンドを鳴らせるオーディオ用スピーカーシステムを数多く世に送り出してきた。
そのノウハウの中核である独自の振動解析技術により、キャビネットをあえて振動させるアプローチによって、G3も見かけから想像もつかないほどパワフルな音を再現する。スピーカーユニットのパフォーマンスを低下させる定在波や不要な振動はDSP制御で抑えながら、理想的なエネルギーバランスに整えている。センター部分がこんもりと盛り上がっているフロントパンチンググリルも、実は反射波の共振を抑えるために計算されたデザインなのだという。
ウーファーユニットは通常のスピーカーより振幅幅を約1.5倍大きく取って、なおかつ強い駆動力を持つマグネットで動かす。キャビネットには強靱なフレームで固定して切れの良い中低域を再現する。高域再生を担うのはバランスドーム型のトゥイーター。低域から高域までスムーズにつながるサウンドにチューニングされている。高効率なスイッチングアンプと組み合わせることによって、大音量再生時にも歪みのないクリアな音に仕上げた。
ところで、スピーカーで音をガンガン鳴らしてしまうと「OK グーグル」と話しかけても聴き取ってくれないのでは? と思うだろう。実際に筆者も、我が家でAmazon EchoシリーズやGoogle Home Miniを使い大音量で音楽を再生していると、次に聴きたい楽曲の検索やスキップの音声コマンドに対する反応が鈍くなることがよくある。オンキヨーのG3は、キャビネットの内部にマイクシステムを浮かせるよう配置し、筐体に由来する振動をマイクが拾ってしまわないよう内部まで作り込んでいる。
SpotifyでCHEMISTRYのボーカル曲を聴いてみた。声の質感がとても滑らかで、熱っぽさも伝わってくる。音像を前にぐんと押し出してきて、余韻もリッチに響かせる。パワーも十分にあるので、10畳超えの広さのリビングに置いても温かみあふれる音で満たしてくれるだろう。
アリス=紗良・オットのショパン/ワルツ集を聴くと、ピアノの鍵盤を走る指先の繊細なタッチまでイメージが浮かんでくるようだ。微小な音の再現力が高い。一粒ずつ音がふっくらとしている。生楽器の音色が素直に再現でき、とても相性の良いスピーカーだ。
■オンキヨー「P3」
オンキヨーのAlexa搭載スマートスピーカー「VC-PX30」、通称“P3”は、アマゾンのEchoシリーズと同じく、発売当初は招待制で販売されている(関連ニュース)。
本機のキャビネットの素材にはABS樹脂が使われている。円柱形デザインとして、後面に低音再生を強化するためのパッシブラジエーターを設けるため、成形の重度が高いABS樹脂が使われたのだという。2.5インチのフルレンジウーファーを2基搭載しており、デュアルパッシブラジエーターを設けて、スイッチングアンプをDSPで高精度にコントロールする。本体のサイズはG3よりもやや大きめ。サウンドチューニングはエネルギッシュなアメリカンサウンドをイメージしているという。
機能面での大きな特徴は、DTSによるロスレス品質のワイヤレス伝送技術である「DTS Play-Fi」に対応したことだ。アマゾンのEchoシリーズも複数台を揃えれば同一ホームネットワーク内でマルチルーム再生も楽しめるが、P3の場合はオンキヨーのiOS/Android対応アプリ「Onkyo Music Control」アプリによって、一段と簡単なマルチルーム操作を実現しているのが特徴だ。
オンキヨーやパイオニア、インテグラなどのブランドから発売されているDTS Play-Fi対応の機器と連携し、SpotifyやTuneInなどをマルチルーム再生でも楽しめる。DEEZERのストリーミングにも、将来的に対応できるのではないだろうか。
DTS Play-Fiのフレームワークでは最大192kHz/24bitまでのハイレゾ音源がWi-Fi経由でネットワーク再生できる。P3のスピーカーユニットはハイレゾ対応ではないので、ハイレゾ音質で再生できるわけではないが、それでもNASやスマホに保存したハイレゾ音源をネットワーク再生できるメリットは無視できない。
本体にはアナログステレオミニタイプの音声出力だけでなく、入力端子も設けている。愛用する一体型のオーディオコンポにつないでAIアシスタント機能を加えたり、薄型テレビの音声出力を強化するサイドスピーカーにもなる。天面には頻繁に再生するコンテンツを4つまで登録しておけるプリセットボタンが搭載されている。インターネットラジオやSpotifyのプレイリストなどを登録しておくと便利だ。
CHEMISTRYはボーカルの明瞭度、輪郭もくっきりと描く。高域まで肉厚で伸びやかだ。マイケル・ジャクソンのアルバム『Bad』からタイトル曲「Bad」を聴く。冒頭のエレキベースは沈み込みが深く粘りけがあって、よくしなる。銃身も低く安定している。ダンスミュージックとの相性がとりわけ良かった。
アリス=紗良・オットのショパン/ワルツ集は、透明で鮮烈なピアノの音色が迫ってくる。歪みっぽさやノイズのざわつきがなく、音のフォーカスがピタリと定まっている。かなりのパワーが出せるスピーカーなので、しっかりとした材質のハードラックの上か、またはオーディオボードなどを間に敷いて振動対策にも気を配りながら設置すると、ユーザーの期待を超える音を楽しませてくれるはずだ。
コストパフォーマンスを重視して設計されたアマゾン「Echo」シリーズ、グーグル「Google Home」シリーズより音質は上とはっきり言い切れるし、機能面でも音楽再生に特化し、ていねいにブラッシュアップされている。今回は「音質」に注目したいスマートスピーカーを集めて一斉レビューしてみたいと思う。
なおリファレンスの音楽コンテンツは、Googleアシスタント搭載スピーカーはSpotify、Alexa搭載モデルはAmazon Music Unlimitedから再生している。各モデルのAIアシスタントまわりの使い勝手はほぼ共通なので、今回のレポートではあえて割愛する。過去に本サイトで掲載しているGoogle HomeやEchoの製品レビューをぜひ合わせてチェックしてほしい(Google Homeレビュー/Echoレビュー)。
■オンキヨー「G3」
オンキヨーはいち早くGoogleとAmazonのAIアシスタントを搭載するスマートスピーカーを発表したブランドのひとつだ。日本で発売されたモデルに先駆けて、北米ではAlexa搭載の「VC-FLX1」も発売している(関連ニュース)。
それ以前にWi-FiやBluetooth対応のワイヤレススピーカーを開発してきたノウハウがスマートスピーカーにも活きている。他のオーディオブランドが開発したスマートスピーカーにも同じアドバンテージがあると言えるだろう。
日本で発売されたGoogleアシスタント搭載モデルは「VC-GX30」、通称“G3”だ(関連ニュース)。写真で見ると立方体のシンプルなデザインだが、老舗のオーディオブランドらしくキャビネットにMDF(木)を使っているので、部屋に置いてみるとどことなく温もりが漂ってくるようなかわいらしさがある。
通常スピーカーシステムを設計・開発する際にはユニットのパフォーマンスを最大化するため、ハコであるキャビネットは不要な “鳴き=振動” を徹底的に抑えていく方向で作り込むものだが、オンキヨーではG3のようにコンパクトな筐体サイズを超える雄大なサウンドを鳴らせるオーディオ用スピーカーシステムを数多く世に送り出してきた。
そのノウハウの中核である独自の振動解析技術により、キャビネットをあえて振動させるアプローチによって、G3も見かけから想像もつかないほどパワフルな音を再現する。スピーカーユニットのパフォーマンスを低下させる定在波や不要な振動はDSP制御で抑えながら、理想的なエネルギーバランスに整えている。センター部分がこんもりと盛り上がっているフロントパンチンググリルも、実は反射波の共振を抑えるために計算されたデザインなのだという。
ウーファーユニットは通常のスピーカーより振幅幅を約1.5倍大きく取って、なおかつ強い駆動力を持つマグネットで動かす。キャビネットには強靱なフレームで固定して切れの良い中低域を再現する。高域再生を担うのはバランスドーム型のトゥイーター。低域から高域までスムーズにつながるサウンドにチューニングされている。高効率なスイッチングアンプと組み合わせることによって、大音量再生時にも歪みのないクリアな音に仕上げた。
ところで、スピーカーで音をガンガン鳴らしてしまうと「OK グーグル」と話しかけても聴き取ってくれないのでは? と思うだろう。実際に筆者も、我が家でAmazon EchoシリーズやGoogle Home Miniを使い大音量で音楽を再生していると、次に聴きたい楽曲の検索やスキップの音声コマンドに対する反応が鈍くなることがよくある。オンキヨーのG3は、キャビネットの内部にマイクシステムを浮かせるよう配置し、筐体に由来する振動をマイクが拾ってしまわないよう内部まで作り込んでいる。
SpotifyでCHEMISTRYのボーカル曲を聴いてみた。声の質感がとても滑らかで、熱っぽさも伝わってくる。音像を前にぐんと押し出してきて、余韻もリッチに響かせる。パワーも十分にあるので、10畳超えの広さのリビングに置いても温かみあふれる音で満たしてくれるだろう。
アリス=紗良・オットのショパン/ワルツ集を聴くと、ピアノの鍵盤を走る指先の繊細なタッチまでイメージが浮かんでくるようだ。微小な音の再現力が高い。一粒ずつ音がふっくらとしている。生楽器の音色が素直に再現でき、とても相性の良いスピーカーだ。
■オンキヨー「P3」
オンキヨーのAlexa搭載スマートスピーカー「VC-PX30」、通称“P3”は、アマゾンのEchoシリーズと同じく、発売当初は招待制で販売されている(関連ニュース)。
本機のキャビネットの素材にはABS樹脂が使われている。円柱形デザインとして、後面に低音再生を強化するためのパッシブラジエーターを設けるため、成形の重度が高いABS樹脂が使われたのだという。2.5インチのフルレンジウーファーを2基搭載しており、デュアルパッシブラジエーターを設けて、スイッチングアンプをDSPで高精度にコントロールする。本体のサイズはG3よりもやや大きめ。サウンドチューニングはエネルギッシュなアメリカンサウンドをイメージしているという。
機能面での大きな特徴は、DTSによるロスレス品質のワイヤレス伝送技術である「DTS Play-Fi」に対応したことだ。アマゾンのEchoシリーズも複数台を揃えれば同一ホームネットワーク内でマルチルーム再生も楽しめるが、P3の場合はオンキヨーのiOS/Android対応アプリ「Onkyo Music Control」アプリによって、一段と簡単なマルチルーム操作を実現しているのが特徴だ。
オンキヨーやパイオニア、インテグラなどのブランドから発売されているDTS Play-Fi対応の機器と連携し、SpotifyやTuneInなどをマルチルーム再生でも楽しめる。DEEZERのストリーミングにも、将来的に対応できるのではないだろうか。
DTS Play-Fiのフレームワークでは最大192kHz/24bitまでのハイレゾ音源がWi-Fi経由でネットワーク再生できる。P3のスピーカーユニットはハイレゾ対応ではないので、ハイレゾ音質で再生できるわけではないが、それでもNASやスマホに保存したハイレゾ音源をネットワーク再生できるメリットは無視できない。
本体にはアナログステレオミニタイプの音声出力だけでなく、入力端子も設けている。愛用する一体型のオーディオコンポにつないでAIアシスタント機能を加えたり、薄型テレビの音声出力を強化するサイドスピーカーにもなる。天面には頻繁に再生するコンテンツを4つまで登録しておけるプリセットボタンが搭載されている。インターネットラジオやSpotifyのプレイリストなどを登録しておくと便利だ。
CHEMISTRYはボーカルの明瞭度、輪郭もくっきりと描く。高域まで肉厚で伸びやかだ。マイケル・ジャクソンのアルバム『Bad』からタイトル曲「Bad」を聴く。冒頭のエレキベースは沈み込みが深く粘りけがあって、よくしなる。銃身も低く安定している。ダンスミュージックとの相性がとりわけ良かった。
アリス=紗良・オットのショパン/ワルツ集は、透明で鮮烈なピアノの音色が迫ってくる。歪みっぽさやノイズのざわつきがなく、音のフォーカスがピタリと定まっている。かなりのパワーが出せるスピーカーなので、しっかりとした材質のハードラックの上か、またはオーディオボードなどを間に敷いて振動対策にも気を配りながら設置すると、ユーザーの期待を超える音を楽しませてくれるはずだ。