公開日 2020/12/26 07:00
シルクのような滑らかな肌触り、アキュフェーズ「C-3900」で開けるさらなる高解像度の世界
<連載>角田郁雄のオーディオSUPREME
■コロナ禍においても、2020年は精力的な新製品リリースが続いた
皆さま、お元気でしょうか。今年は新型コロナウイルス蔓延により、イベントや試聴会が激減し、メーカーでは部品調達が難しい時期もあったそうで、新製品の登場も少ないのかな、と予測していました。しかし、驚いたことに初夏頃から続々と新製品が登場しました。
今年の「オーディオ銘機賞」でも多くのモデルがエントリーされました。その結果もぜひ確認していただきたいと思うところですが、私が今年のモデルを振り返って感じたことは、デジタル再生のみならず、アナログ再生を含めて「オーディオは、さらなる高解像度再生を迎えた」ということです。
特に今年は日本メーカーの躍進ぶりが目立ち、解像度や諸特性の向上が顕著に表されたように思えます。もちろん、オーディオの趣味においては、解像度の高さやS/Nなどの諸特性の良さだけが機器の優位点や音質の良さを表しているわけではありません。ですが、近年各メーカーは、これからのライフスタイルや再生メディアを見据えて、さらなる独創的な回路を開発し、諸特性も向上させ、独自の音質を私たちに提示してきています。録音に優れた音源を再生すると、あたかも生演奏ではないかと思うほどの高解像度再生を実現しているように思えます。
こうした傾向のなかで、私が個人的に感激したのは、今年春に登場したアキュフェーズのフォノイコライザー「C-47」でした。本連載でも紹介しましたが、前モデル「C-37」の回路構成をさらにブラッシュアップさせ、MCカートリッジのXLRバランス接続にも対応のディスクリート完全バランス回路を実現しました。そして続けて、本年度のオーディオ銘機賞の金賞受賞モデルでもある、プリアンプ「C-3900」が登場してきました。
■独自のAAVA回路を搭載、シンメトリカルな内部回路でオーディオ特性をさらに向上
今年私はアキュフェーズの創業50周年記念モデルとなるプリアンプ「C-3900」を自宅に導入しました。私は15年ほど前からアキュフェーズの製品を愛用し、プリアンプとSACDプレーヤー専用の無垢のケヤキを使用したテーブル・ラックを天然木家具工房で作っていただき、愛用してきています。中央には、放熱と微細振動・共振低減のため、スリットを設けています。これなら、アキュフェーズのデザインも引き立つと考えたわけです。
この秋までは、SACDプレーヤー「DP-750」、プリアンプ「C-3850」、A級パワーアンプ「A-75」を使用し、B&Wの「802 D3」をドライブしていました。高解像度、ハイスピード、ワイドレンジな音質で、これを実現したのは、同社の独創的な回路とその諸特性です。もうこれで満足! と思っていたのですが、C-3900を初めて試聴したとき、目が覚めるほどのドラマティックな音質向上を体験することとなりました。
私にとっては、ショッキングな出来事でもありました。なぜなら、次世代プリアンプでは、もはやC-3850の諸特性を超えるのは難しいのではないかと想像していたからです。ですが、C-3900はその高いハードルを越してしまったのです。
まずそのデザインです。洗練されたシャンパン・ゴールドのフロントの高品位なセレクターとボリュームつまみは歴代モデルと同様ですが、本機では、その周囲に上品なゴールドのリングを添え、さらに美しいデザインになっています。美しいウッドケースは、操作と所有の喜びまでも感じさせてくれる堂々とした風格の佇まいです。
内部回路ですが、これにもオーディオ・マインドが掻き立てられるほどの魅力を感じさせます。その大きな特徴と魅力は、C-2800から搭載されたAAVAという独自の音量調整器です。それは、抵抗体を使用する音量調整器ではなく、半導体抵抗ラダー型音量調整器でもありません。入力された電圧の音楽信号は、16式の電圧/電流変換器(V/I変換器)により、1/2、1/22....1/214、1/215、1/216の重み付けされた電流に一気に変換されます。次に、ボリュームの操作位置をCPUが感知し、16式の電流スイッチをON/OFF制御し、その電流信号を組み合わせます。最終的には、I/V変換アンプで、電圧信号に戻す仕組みです。
AAVAを簡単に説明するなら、16式の電流増幅度の異なるアンプ出力を16式のスイッチのオンオフで組み合わせる方式と言えるでしょう。組み合わせ数は全部で216=65,536となり、この組み合わせにより音量が調整できるわけです。電流伝送ですから、接点などでの音質劣化が少ないことも特徴で、抵抗体も使いません。回路構成としては、パッシブではなく、アクティブな「可変利得アンプ」と言えるでしょう。しかも、左右のバランス調整やアッテネータも、このAAVAだけで高精度に行うことがきることも優位点と言えます。
このAAVAをC-3850では、左右バランス構成で使用していましたが、C-3900では、2倍のデュアル・バランスで搭載しました。これにより、ノイズレベルを30%低減したそうです。これは大きいですね。
さらにAAVAの入力段には、低雑音電流帰還方式ディスクリート・アンプを採用しました。これは、入力信号を大振幅化し、後段で、信号と共に雑音を圧縮する効果があるそうです。信号入力幅(ヘッドルーム)を拡張し、S/Nやダイナミックレンジ特性向上にも貢献すると、私は推察しています。そして、AAVA後段の電流/電圧変換アンプ(I/V変換アンプ)においても、ANCCという歪み成分を低減する独自の技術を搭載し、ボリュームの位置に関らず低雑音を実現する4パラレル構成の出力アンプ(回路全体の雑音に大きく影響する)で、最終出力される仕組みになっています。
基板には、伝搬特性に優れ、低損失のテフロン基板が使用されています。各基板が縦に設置され、本当に精密感を感じます。これらの回路上面には、放熱スリット付きのゴールド・カバーが取り付けられ、高級感を鮮明にしています。
搭載回路と音質を支える左右独立の電源部ですが、トロイダル・トランスを2基、同社カスタムメイドのフィルターコンデンサー(10,000μF)を12式搭載し、十分に余裕のある高品位電源を構成しています。外観も内部も左右シンメトリーで、高品位な美しさを感じますね。
皆さま、お元気でしょうか。今年は新型コロナウイルス蔓延により、イベントや試聴会が激減し、メーカーでは部品調達が難しい時期もあったそうで、新製品の登場も少ないのかな、と予測していました。しかし、驚いたことに初夏頃から続々と新製品が登場しました。
今年の「オーディオ銘機賞」でも多くのモデルがエントリーされました。その結果もぜひ確認していただきたいと思うところですが、私が今年のモデルを振り返って感じたことは、デジタル再生のみならず、アナログ再生を含めて「オーディオは、さらなる高解像度再生を迎えた」ということです。
特に今年は日本メーカーの躍進ぶりが目立ち、解像度や諸特性の向上が顕著に表されたように思えます。もちろん、オーディオの趣味においては、解像度の高さやS/Nなどの諸特性の良さだけが機器の優位点や音質の良さを表しているわけではありません。ですが、近年各メーカーは、これからのライフスタイルや再生メディアを見据えて、さらなる独創的な回路を開発し、諸特性も向上させ、独自の音質を私たちに提示してきています。録音に優れた音源を再生すると、あたかも生演奏ではないかと思うほどの高解像度再生を実現しているように思えます。
こうした傾向のなかで、私が個人的に感激したのは、今年春に登場したアキュフェーズのフォノイコライザー「C-47」でした。本連載でも紹介しましたが、前モデル「C-37」の回路構成をさらにブラッシュアップさせ、MCカートリッジのXLRバランス接続にも対応のディスクリート完全バランス回路を実現しました。そして続けて、本年度のオーディオ銘機賞の金賞受賞モデルでもある、プリアンプ「C-3900」が登場してきました。
■独自のAAVA回路を搭載、シンメトリカルな内部回路でオーディオ特性をさらに向上
今年私はアキュフェーズの創業50周年記念モデルとなるプリアンプ「C-3900」を自宅に導入しました。私は15年ほど前からアキュフェーズの製品を愛用し、プリアンプとSACDプレーヤー専用の無垢のケヤキを使用したテーブル・ラックを天然木家具工房で作っていただき、愛用してきています。中央には、放熱と微細振動・共振低減のため、スリットを設けています。これなら、アキュフェーズのデザインも引き立つと考えたわけです。
この秋までは、SACDプレーヤー「DP-750」、プリアンプ「C-3850」、A級パワーアンプ「A-75」を使用し、B&Wの「802 D3」をドライブしていました。高解像度、ハイスピード、ワイドレンジな音質で、これを実現したのは、同社の独創的な回路とその諸特性です。もうこれで満足! と思っていたのですが、C-3900を初めて試聴したとき、目が覚めるほどのドラマティックな音質向上を体験することとなりました。
私にとっては、ショッキングな出来事でもありました。なぜなら、次世代プリアンプでは、もはやC-3850の諸特性を超えるのは難しいのではないかと想像していたからです。ですが、C-3900はその高いハードルを越してしまったのです。
まずそのデザインです。洗練されたシャンパン・ゴールドのフロントの高品位なセレクターとボリュームつまみは歴代モデルと同様ですが、本機では、その周囲に上品なゴールドのリングを添え、さらに美しいデザインになっています。美しいウッドケースは、操作と所有の喜びまでも感じさせてくれる堂々とした風格の佇まいです。
内部回路ですが、これにもオーディオ・マインドが掻き立てられるほどの魅力を感じさせます。その大きな特徴と魅力は、C-2800から搭載されたAAVAという独自の音量調整器です。それは、抵抗体を使用する音量調整器ではなく、半導体抵抗ラダー型音量調整器でもありません。入力された電圧の音楽信号は、16式の電圧/電流変換器(V/I変換器)により、1/2、1/22....1/214、1/215、1/216の重み付けされた電流に一気に変換されます。次に、ボリュームの操作位置をCPUが感知し、16式の電流スイッチをON/OFF制御し、その電流信号を組み合わせます。最終的には、I/V変換アンプで、電圧信号に戻す仕組みです。
AAVAを簡単に説明するなら、16式の電流増幅度の異なるアンプ出力を16式のスイッチのオンオフで組み合わせる方式と言えるでしょう。組み合わせ数は全部で216=65,536となり、この組み合わせにより音量が調整できるわけです。電流伝送ですから、接点などでの音質劣化が少ないことも特徴で、抵抗体も使いません。回路構成としては、パッシブではなく、アクティブな「可変利得アンプ」と言えるでしょう。しかも、左右のバランス調整やアッテネータも、このAAVAだけで高精度に行うことがきることも優位点と言えます。
このAAVAをC-3850では、左右バランス構成で使用していましたが、C-3900では、2倍のデュアル・バランスで搭載しました。これにより、ノイズレベルを30%低減したそうです。これは大きいですね。
さらにAAVAの入力段には、低雑音電流帰還方式ディスクリート・アンプを採用しました。これは、入力信号を大振幅化し、後段で、信号と共に雑音を圧縮する効果があるそうです。信号入力幅(ヘッドルーム)を拡張し、S/Nやダイナミックレンジ特性向上にも貢献すると、私は推察しています。そして、AAVA後段の電流/電圧変換アンプ(I/V変換アンプ)においても、ANCCという歪み成分を低減する独自の技術を搭載し、ボリュームの位置に関らず低雑音を実現する4パラレル構成の出力アンプ(回路全体の雑音に大きく影響する)で、最終出力される仕組みになっています。
基板には、伝搬特性に優れ、低損失のテフロン基板が使用されています。各基板が縦に設置され、本当に精密感を感じます。これらの回路上面には、放熱スリット付きのゴールド・カバーが取り付けられ、高級感を鮮明にしています。
搭載回路と音質を支える左右独立の電源部ですが、トロイダル・トランスを2基、同社カスタムメイドのフィルターコンデンサー(10,000μF)を12式搭載し、十分に余裕のある高品位電源を構成しています。外観も内部も左右シンメトリーで、高品位な美しさを感じますね。