公開日 2021/01/30 06:45
オーディオテクニカの空芯MCを2種のフォノEQで聴き比べ! フィデリックスのアナログアイテムの音質も堪能
<連載>角田郁雄のオーディオSUPREME
■テクニカの空芯カートリッジ「AT-ART9XA」を自宅に新規導入!
またまた、巣ごもり期間となってしまいましたね。皆さま、いかがお過ごしでしょうか。私の方は、いたって元気にしており、昨年、買い溜めたハイレゾ、SACD、LPを、機器を調整しながら楽しんでいるところです。そんななか、かねてから欲しいと思っていたオーディオテクニカの空芯MCカートリッジ「AT-ART9XA」を導入できたので、ご紹介します。
このモデルは、「AT-ART7」(空芯MC)の最新アップグレードモデルとして、昨年8月に発売されました。ちなみに、同時に発売となった「AT-ART9XI」は、鉄芯MCカートリッジ「AT-ART9」の進化モデルです。AT-ART9XIは、高セパレーションとワイドレスポンスを実現する独自の逆V字デュアルムービングコイルを搭載し、磁気回路には、ネオジウムマグネットとパーメンジュールヨークを採用しています。これにより磁気エネルギーを飛躍的に高めたのです。こちらも実際に使用しましたが、ワイドレンジ、フラットレスポンスの高解像度特性を実感しました。磁気回路の強化により、弱音から強音までのダイナミックレンジが広く、空間も広いです。
■シバタ針を採用、コイル枠に樹脂を採用するなどこだわりの技術を搭載
そして、本題の「AT-ART9XA」の話になります。私は、ゴールドとブラックを使用した多面体のデザインに魅力を感じました。精密感も感じます。近年は高価で重い製品が多いのですが、頑張れば購入しやすい15万円(税抜)という価格設定、8.5gという重量にも好印象を受けました。搭載技術にも目を見張るものがあります。
空芯MCなので、コイル枠には磁界の影響を受けない軽量な素材を使わなくてはなりません。そこで液晶ポリマー樹脂に着目し、採用したそうです。その他のマグネットなどの磁気回路は、空芯用に磁気ギャップが狭く設計されており、図に示すとおりXAのコイルはXIと左右が入れ替わった配置になっています。またコイルから出力ピンまでの配線は、XIでは交差しますが、XAでは交差させず、ストレートに配線されます。XAは見た目逆V字には見えませんし、左右コイル配置も逆なりますが、XIと動作原理は変わらないのです。
ここで、アナログ再生の初心者の方にも理解できるように、MCカートリッジの発電原理も紹介しておきましょう。MCの場合は、針先の付いたカンチレバー上のコイルの振動に関わらず、磁束は一定になります。仮にL信号のみの溝をトレースした場合は、Lchコイルは、磁束変化がある方向に動きます(=発電する)。Rchコイルも動きますが、コイル内の磁束変化は起りません(=発電しない)。この原理により、左右の音溝をトレースし、ステレオ再生が可能になるわけです。
MCのコイル枠には、四角形、十字形などがありますが、同社では、V字型とすることで、左右の分離度を高めていることが特徴となります。実にユニークですね。
今回の開発には若手の女性エンジニア、森田 彩さんが携わりました。昨年その苦労話をお聞きしましたので、紹介しておきましょう。
「特に空芯MCは、立ち上がり強調感のない、音抜けの良い音質が特徴となりますが、とにかくART7では、出力電圧が0.12mVと低いので、0.2mVまで出力アップするのに苦労しました。ヨークを大型化するなどして、磁気回路の強化など、多くの試作を重ねましたが、着目点を変え、V字コイル枠の厚みを20%増やしてみました(筆者注:コイルの巻き数を変えていないので、表面積と長さが増えることになる)。これにより、出力電圧を高めることができました。もう一つ、空芯MCは中低域が控えめとなります。そこで、中低域に厚みを加えてくれるシバタ針をボロンカンチレバーに装着しました」
■音抜けの良い音質が特徴。特有の濃厚な中低域が引き立てられる
今回の試聴では、XAを最新の同社ヘッドシェル「AT-LH11H」に取り付けました。このヘッドシェルは高硬度アルミ製で、オーバーハング調整や傾きも簡単に行え、OFCリード線とPCOCCターミナルピンを採用しています。重量は11.5gです。微細振動や共振を避けるために、指カケに樹脂を塗布しています。この仕様なら価格もリーズナブルで、XAとベストマッチです。このシェルを、私のレファレンス・アナログプレーヤー、ヤマハ「GT-2000L」に設置しました。
試聴では、最初にアキュフェーズのフォノイコライザー「C-47」、ジェフ・ローランドのプリアンプ「Corus+PSU」、パワーアンプはブルメスター「911Mk3」、スピーカーはB&W「802 D3」を組み合わせました。は
その音質は、極めて解像度が高く空間が広いことが特徴です。鉄芯MCでは体験できない音像の輪郭や、音の立ち上がりを強調しない抜けの良い音質が特徴で、ダイナミックレンジの広さも体験できました。ちなみに負荷抵抗は100Ωで、ハイ・ゲイン70dBに設定しました。この設定により、シバタ針特有の濃厚な中低域が引き立てられたように思えました。
またまた、巣ごもり期間となってしまいましたね。皆さま、いかがお過ごしでしょうか。私の方は、いたって元気にしており、昨年、買い溜めたハイレゾ、SACD、LPを、機器を調整しながら楽しんでいるところです。そんななか、かねてから欲しいと思っていたオーディオテクニカの空芯MCカートリッジ「AT-ART9XA」を導入できたので、ご紹介します。
このモデルは、「AT-ART7」(空芯MC)の最新アップグレードモデルとして、昨年8月に発売されました。ちなみに、同時に発売となった「AT-ART9XI」は、鉄芯MCカートリッジ「AT-ART9」の進化モデルです。AT-ART9XIは、高セパレーションとワイドレスポンスを実現する独自の逆V字デュアルムービングコイルを搭載し、磁気回路には、ネオジウムマグネットとパーメンジュールヨークを採用しています。これにより磁気エネルギーを飛躍的に高めたのです。こちらも実際に使用しましたが、ワイドレンジ、フラットレスポンスの高解像度特性を実感しました。磁気回路の強化により、弱音から強音までのダイナミックレンジが広く、空間も広いです。
■シバタ針を採用、コイル枠に樹脂を採用するなどこだわりの技術を搭載
そして、本題の「AT-ART9XA」の話になります。私は、ゴールドとブラックを使用した多面体のデザインに魅力を感じました。精密感も感じます。近年は高価で重い製品が多いのですが、頑張れば購入しやすい15万円(税抜)という価格設定、8.5gという重量にも好印象を受けました。搭載技術にも目を見張るものがあります。
空芯MCなので、コイル枠には磁界の影響を受けない軽量な素材を使わなくてはなりません。そこで液晶ポリマー樹脂に着目し、採用したそうです。その他のマグネットなどの磁気回路は、空芯用に磁気ギャップが狭く設計されており、図に示すとおりXAのコイルはXIと左右が入れ替わった配置になっています。またコイルから出力ピンまでの配線は、XIでは交差しますが、XAでは交差させず、ストレートに配線されます。XAは見た目逆V字には見えませんし、左右コイル配置も逆なりますが、XIと動作原理は変わらないのです。
ここで、アナログ再生の初心者の方にも理解できるように、MCカートリッジの発電原理も紹介しておきましょう。MCの場合は、針先の付いたカンチレバー上のコイルの振動に関わらず、磁束は一定になります。仮にL信号のみの溝をトレースした場合は、Lchコイルは、磁束変化がある方向に動きます(=発電する)。Rchコイルも動きますが、コイル内の磁束変化は起りません(=発電しない)。この原理により、左右の音溝をトレースし、ステレオ再生が可能になるわけです。
MCのコイル枠には、四角形、十字形などがありますが、同社では、V字型とすることで、左右の分離度を高めていることが特徴となります。実にユニークですね。
今回の開発には若手の女性エンジニア、森田 彩さんが携わりました。昨年その苦労話をお聞きしましたので、紹介しておきましょう。
「特に空芯MCは、立ち上がり強調感のない、音抜けの良い音質が特徴となりますが、とにかくART7では、出力電圧が0.12mVと低いので、0.2mVまで出力アップするのに苦労しました。ヨークを大型化するなどして、磁気回路の強化など、多くの試作を重ねましたが、着目点を変え、V字コイル枠の厚みを20%増やしてみました(筆者注:コイルの巻き数を変えていないので、表面積と長さが増えることになる)。これにより、出力電圧を高めることができました。もう一つ、空芯MCは中低域が控えめとなります。そこで、中低域に厚みを加えてくれるシバタ針をボロンカンチレバーに装着しました」
■音抜けの良い音質が特徴。特有の濃厚な中低域が引き立てられる
今回の試聴では、XAを最新の同社ヘッドシェル「AT-LH11H」に取り付けました。このヘッドシェルは高硬度アルミ製で、オーバーハング調整や傾きも簡単に行え、OFCリード線とPCOCCターミナルピンを採用しています。重量は11.5gです。微細振動や共振を避けるために、指カケに樹脂を塗布しています。この仕様なら価格もリーズナブルで、XAとベストマッチです。このシェルを、私のレファレンス・アナログプレーヤー、ヤマハ「GT-2000L」に設置しました。
試聴では、最初にアキュフェーズのフォノイコライザー「C-47」、ジェフ・ローランドのプリアンプ「Corus+PSU」、パワーアンプはブルメスター「911Mk3」、スピーカーはB&W「802 D3」を組み合わせました。は
その音質は、極めて解像度が高く空間が広いことが特徴です。鉄芯MCでは体験できない音像の輪郭や、音の立ち上がりを強調しない抜けの良い音質が特徴で、ダイナミックレンジの広さも体験できました。ちなみに負荷抵抗は100Ωで、ハイ・ゲイン70dBに設定しました。この設定により、シバタ針特有の濃厚な中低域が引き立てられたように思えました。