公開日 2021/06/02 06:30
ハイレゾに対応した「デジタル・コンサートホール」をApple TV 4KとiPhoneで徹底検証!
価格は据え置き
■ベルリン・フィルのデジタル・コンサートホールもついにハイレゾ化
2009年のサービス開始以降、節目ごとに品質向上に取り組んできたベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の「デジタル・コンサートホール(DCH)」が、6月1日に重要なアップグレードを実施した。
これまでは720Pから1080P、そして4Kへと主に画質の改善を重ねてきたのだが、今回は音質の向上がテーマで、従来のAAC音声から一気にハイレゾ化を実現したのである。既存のサービスに登録しているユーザーはアプリを更新するだけで高音質再生ができるようになり、追加料金も発生しない。
常設の映像配信では、ジャンルを問わずハイレゾ音声でのストリーミング配信は他に例がなく、文字通り世界初となる。今回のアップグレードは、常にメディア展開の最先端を切り開いてきたベルリン・フィルならではの快挙なのだ。
高音質化は最終的にはDCHの全音源が対象となるが、実際にはいくつかの段階を経て準備が進められる。まずはすべてのアーカイブ音源を対象に、従来のAAC音声に加えて48kHz/24bit FLACのハイレゾ音声を選べるようになり、準備が整い次第ライブ中継にもハイレゾ配信機能が追加される。それと並行して、より上位の形式で収録された音源については、最大96kHz/24bit FLACに数ヶ月かけて順次移行する。
具体的には、原則として96kHz/24bitでの収録に切り替えた2019年夏以降の演奏会が該当し、新旧いずれの音源もマスターと同等品質での配信が実現するわけだ。すでに2020/21年のシーズン開幕コンサートなど、最近のコンサートの一部は96kHz/24bitで先行配信を行っているので、臨場感豊かなサウンドをいますぐ体験できる。
新しい仕様のDCHは音声のアップグレードに伴ってビットレートが上がるので、通信環境によっては再生品質に影響が出る可能性がある。音声は従来のAAC(320kbps)からFLAC 96kHz/24bitになって2.8Mbpsに上がるため、UHD画質の映像信号(最大17.5Mbps)と合わせると20Mbps近くに及ぶ。4Kテレビや4KプロジェクターではHLG規格のHDR映像が楽しめることを考えれば予想通りの数値とはいえ、安定した再生環境を確保するには通信速度にも気を配る必要がある。
■まずはApple TVとモバイル端末からハイレゾ化に対応
DCHはスマホやパソコンなどさまざまな機器で再生できることが強みだが、再生機器側のハイレゾ対応も3つの段階を踏んで実現する見込みだ。最初の段階ではスマホやタブレットなどモバイル機器とApple TVでスタートし、続いてテレビとオーディオ機器、最後にパソコンのウェブブラウザでも再生できるようになるという。ハイレゾ対応が実現する時期の目安と対応機器の詳細についてベルリン・フィル・メディアに問い合わせたところ、技術部門のディレクターをつとめるマルクス・フォルヒナー氏から次のような答えが返ってきた。
「テレビとストリーミング機器については数ヶ月後の導入を予定しています。具体的にはFLACの再生をチップセットのレベルでサポートしているAndroid TVとAmazon FireTVが対象となり、現在それぞれのメーカーと作業を進めています。さらに、2021年末までにはDCH公式ウェブサイトでブラウザで再生できるように作業を進めています。ブラウザはGoogle Chrome、Safari、Edge、Firefoxが対応する予定です」。
データ形式にFLACを選んだ理由も気になるところなので、続けてフォルヒナー氏に解説してもらうことにしよう。「エンコーディングのプロセスにFLACエンコードを追加することで、ISO-BMFF形式のMPEG4信号にFLACオーディオを格納できるようになりました。この方式を使うメリットは標準的なストリーミング・プロトコルを使って配信できることです。DCHの配信に利用している世界各地のVODサーバーをFLACオーディオの配信に最適化していますが、これら一連の技術の確立にはストリーミングパートナーのIIJと繰り返し行ってきた実証実験の成果が活かされています」。
音源と再生環境の整備は約半年かけて行われるとはいえ、手持ちの機器ですぐにでも試してみたいという人のために具体的な再生方法をいくつか検証してみた。記事の後半ではその結果を紹介することにしよう。
2009年のサービス開始以降、節目ごとに品質向上に取り組んできたベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の「デジタル・コンサートホール(DCH)」が、6月1日に重要なアップグレードを実施した。
これまでは720Pから1080P、そして4Kへと主に画質の改善を重ねてきたのだが、今回は音質の向上がテーマで、従来のAAC音声から一気にハイレゾ化を実現したのである。既存のサービスに登録しているユーザーはアプリを更新するだけで高音質再生ができるようになり、追加料金も発生しない。
常設の映像配信では、ジャンルを問わずハイレゾ音声でのストリーミング配信は他に例がなく、文字通り世界初となる。今回のアップグレードは、常にメディア展開の最先端を切り開いてきたベルリン・フィルならではの快挙なのだ。
高音質化は最終的にはDCHの全音源が対象となるが、実際にはいくつかの段階を経て準備が進められる。まずはすべてのアーカイブ音源を対象に、従来のAAC音声に加えて48kHz/24bit FLACのハイレゾ音声を選べるようになり、準備が整い次第ライブ中継にもハイレゾ配信機能が追加される。それと並行して、より上位の形式で収録された音源については、最大96kHz/24bit FLACに数ヶ月かけて順次移行する。
具体的には、原則として96kHz/24bitでの収録に切り替えた2019年夏以降の演奏会が該当し、新旧いずれの音源もマスターと同等品質での配信が実現するわけだ。すでに2020/21年のシーズン開幕コンサートなど、最近のコンサートの一部は96kHz/24bitで先行配信を行っているので、臨場感豊かなサウンドをいますぐ体験できる。
新しい仕様のDCHは音声のアップグレードに伴ってビットレートが上がるので、通信環境によっては再生品質に影響が出る可能性がある。音声は従来のAAC(320kbps)からFLAC 96kHz/24bitになって2.8Mbpsに上がるため、UHD画質の映像信号(最大17.5Mbps)と合わせると20Mbps近くに及ぶ。4Kテレビや4KプロジェクターではHLG規格のHDR映像が楽しめることを考えれば予想通りの数値とはいえ、安定した再生環境を確保するには通信速度にも気を配る必要がある。
■まずはApple TVとモバイル端末からハイレゾ化に対応
DCHはスマホやパソコンなどさまざまな機器で再生できることが強みだが、再生機器側のハイレゾ対応も3つの段階を踏んで実現する見込みだ。最初の段階ではスマホやタブレットなどモバイル機器とApple TVでスタートし、続いてテレビとオーディオ機器、最後にパソコンのウェブブラウザでも再生できるようになるという。ハイレゾ対応が実現する時期の目安と対応機器の詳細についてベルリン・フィル・メディアに問い合わせたところ、技術部門のディレクターをつとめるマルクス・フォルヒナー氏から次のような答えが返ってきた。
「テレビとストリーミング機器については数ヶ月後の導入を予定しています。具体的にはFLACの再生をチップセットのレベルでサポートしているAndroid TVとAmazon FireTVが対象となり、現在それぞれのメーカーと作業を進めています。さらに、2021年末までにはDCH公式ウェブサイトでブラウザで再生できるように作業を進めています。ブラウザはGoogle Chrome、Safari、Edge、Firefoxが対応する予定です」。
データ形式にFLACを選んだ理由も気になるところなので、続けてフォルヒナー氏に解説してもらうことにしよう。「エンコーディングのプロセスにFLACエンコードを追加することで、ISO-BMFF形式のMPEG4信号にFLACオーディオを格納できるようになりました。この方式を使うメリットは標準的なストリーミング・プロトコルを使って配信できることです。DCHの配信に利用している世界各地のVODサーバーをFLACオーディオの配信に最適化していますが、これら一連の技術の確立にはストリーミングパートナーのIIJと繰り返し行ってきた実証実験の成果が活かされています」。
音源と再生環境の整備は約半年かけて行われるとはいえ、手持ちの機器ですぐにでも試してみたいという人のために具体的な再生方法をいくつか検証してみた。記事の後半ではその結果を紹介することにしよう。
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