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公開日 2023/03/08 06:30

8年ぶりの大幅刷新、DELAの新フラグシップ「N1」は現代ハイエンドを象徴するハイレゾ・トランスポートだ

【特別企画】N1Aから刷新された「N50」にも注目
角田郁雄
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2014年にブランドを立ち上げ、ネットオーディオを牽引してきたDELA。そのファースト・プロダクトであった「N1A」「N1Z」が生まれ変わり、N1Aは「N50」に、N1Zは「N1」に進化した。ファイル再生の音質の最高グレードを実現した「N1」、その技術を受け継ぐ「N50」の魅力を探る。

DELA ミュージックサーバー「N1」 SSD3.8TBモデル 価格:1,320,000円(シルバー/以下税込)、1,430,000円(ブラック) ※写真はブラックモデル。ブラックモデルは受注後1.5カ月程度の納期

ネットオーディオ市場を牽引してきたDELAの新たなるフラグシップ機



メルコシンクレッツと言えば忘れもしない思い出がある。初代機N1AとN1Zの発表会で、私が各社プレスを目の前にして語った時のことだ。当時はネットオーディオがまだ十分に日の目を見ていなかった。オーディオ用に開発したとはいえ、NASでいい音がするわけがない。オーディオ用USBやLANケーブルでいい音がするなどあり得ない。データはデータでしかない。そんな声が飛び交った。

しかし時代は変わった。ハイレゾの時代の到来。N1AとN1Zは当時、面倒だったPC汎用NASによるネットワークの構築、設定、ファンの音を一気に解消し、扱いやすさと音質を重視した。その後、世界のネットオーディオのヒーロー的存在となった。

2014年にはDELAブランドが創設され、2016年にはメルコシンクレッツ社を設立。2018年には初のリニア電源搭載の「N10」を発売した。近年は、ネットワークスイッチ「S100/2」とオプションの光ネットワーク伝送装置「OP-S100」を発売し、音楽データの高精度、高速伝送、伝送ノイズの低減を実現。さらには高精度CDリッピング用光ディスクドライブ「D100」を発売し、Nシリーズ周辺機器を固めた。

そして、昨年はロングランのN1Aを最新のスタンダードモデルとして「N50」に刷新した。さらに従来の最上位モデルN1Zも最新のフラグシップモデルとなる「N1」へと大幅にアップグレードされた。

DELA ミュージックサーバー「N50」 SSD 2TBモデル 275,000円(ブラック/シルバー)、HDD 6TBモデル 275,000円(シルバー/受注生産)、HDD 2TBモデル 198,000円(シルバー)

デザインも一新、高品位なハイレゾ・トランスポートとして再提案



今回はまず、創業以来培ってきた技術を最大限に投入した最新のN1を紹介しよう。フロントの左右に滑らかなカーブをつけたグレーのアルミ・パネルが印象的で、中央のパネルとのコントラストがスタイリッシュ。

同社の荒木甲和社長に伺ったところ、DELAの愛用者は世界的にも増え、扱いやすいNASの役割ではなく、ハイエンドなハイレゾ・トランスポートとして前面に出すべきだ、との声も聞け、フルサイズのコンポーネントスタイルを実現したとのこと。まさにハイエンドなDACやネットワークプレーヤーを思わせる。

筐体は鋼とステンレスをアルミ外装で覆った二重構造とし、外来電磁波や振動を低減させている。これはデジタルデータを扱うSACDプレーヤーとまったく同じ考えだ。アンフェノール社製コネクタを採用したUSB2.0入力を1系統、USB3.0を4系統装備し、USB-DAC、外部ストレージ、バックアップ用に使い分けも可能にした。一般的なLAN端子はノイトリック製で2系統。両端子とも堅牢で確実な嵌合を実現し、高音質化を図った。

「N1」の内部。「N10」で開発したトランス電源ユニットを高出力化。ステンレス製シャーシをベースに、ネジ穴のない天板、シールド板のカバーなどで覆った堅牢な筐体は約14kgの重量級となった

特筆すべきは、そのほかにSFP光入力によるLAN端子を1系統装備したことだ。これにより、これから先に数多く登場するはずのSFP光デジタル入力を装備するDACやネットワークプレーヤーにも光伝送することができる。また、本機とオプションのOP-SFPモジュールを内蔵したS100ネットワークスイッチと光ケーブルで接続すると、筐体間のアースが遮断され、伝送ノイズを低減することも可能になる。

「N1」背面。USB2.0/3.0端子、イーサネットLAN端子のほか、光伝送用のSFPポート、そして10MHz外部クロック用のBNC入力端子を装備

もう一点、オーディオファイルが注目する画期的な魅力は、一部の高級DACやデジタルプレーヤーのように10MHzマスタークロックジェネレーターを接続できるクロック入力端子(50ΩBNC)を装備したことだ。

デジタル処理基板で使用するCPUに高精度で位相ノイズの少ないクロックを供給するためで、内部のPLL回路などで適合する周波数を生成している。そのCPUをコアとする前述のデジタル処理基板も一新され、標準装備としてNDK製高精度クロックを採用した。CPUであっても、クロックの高品位化はより高精度なデジタル処理と伝送、そして音質にも影響するのである。

これに加えて本機は、新規に音質重視のカスタム仕様の大容量SSD(3.8TB)も開発し搭載した。電源部には、お家芸とも言えるスイッチング電源+大容量キャパシターバンクではなく、リニア電源を搭載。大型トロイダル・トランスを使用し、フィルターコンデンサーとして6800μF/35Vのニチコンのスーパー・タフを1式、1万μF/40Vのヴィシェ製を2式使用し、高品位で安定した電源部を構成している。また、前述のデジタル処理部にもニチコンのKWやMUSEといった高品位コンデンサーを採用している。

ダイナミックレンジを拡張、高解像度特性がさらに飛躍する



今回の試聴では、N1ブラックモデルを使用。エソテリックのネットワークDAC「N-05XD」をネットワークプレーヤーとして用意し、N1はサーバーとして使用した。従来のフラグシップ「N1Z/3」がスカッと抜けるかのような音の透明度と高解像度特性を特徴としていたのに対し、N1はさらに弱音から強音までのダイナミックレンジを拡張し、高解像度特性を進化させたことが大きな飛躍点だ。

今回の「N1」「N50」の試聴の様子

ヴォーカル、弦楽、管楽器を聴くと、音の階調が自然で滑らかで、豊かな倍音を聴くことができる。これは、新たなデジタル処理部やマスタークロック(内部に搭載)により伝送ノイズが低減され、微細音がクローズアップされたからだと思う。アナログのような音の滑らかさやダイナミックレンジの広さは、明らかに電源部の効果だと推察される。

今回の試聴で使用したネットワークプレーヤーはエソテリックの「N-05XD」。また「N1」へ入力する外部10MHzクロックには、ミューテックの「REF10 SE120」を使用した

10MHz外部クロックを接続すると、音の透明度、倍音再現性、空間描写性が高まり、穏やかなヴォーカル曲やクラシックは音楽にさらなる深みを感じる。最終的な音質は、DACやネットワークプレーヤーの音質が反映されるが、この音の変化は、DACチップやアナログ出力段(ローパス・フィルター)がもつ本来の性能がフルに発揮されたか、または、これらがアップグレードされたかのような感覚になってしまう。

試聴ではDELAオーディオ用ハブ「S100/2」(右)と、LANと光を変換するメディアコンバーター「OP-S100」を組み合わせ、ルーターとハブの間を光伝送とした

こうした進化と技術を考えると、N1は、まさにオーディオコンポーネントとしての位置づけを明確にしたといえる。荒木社長は、「とにかく各デバイスの変化が多く、設計変更が多かったが、S100/2やS10が提案したSFPがネットワーク再生で注目を集めたことを受け、ハード・ソフトのSFP対応を行なった。ハイエンドモデルとして8年ぶりの大幅な新規設計だ」と語っていた。

10MHzクロックは、ネットワークプレーヤー「N-05XD」と「N1」両方に供給した

このような本機だが、その性能をさらに引き立てるためにはLAN環境に前述のネットワークスイッチS100/2を加えるのがお薦めだ。予算が許せば、無線ルーターとのアースを切り離す、光伝送のネットワークオプションOP-S100も追加すると良いであろう。導入すれば、N1の性能がさらに引き立てられ、その場で演奏されているかのような生々しい臨場感が眼前に展開する。

N50の進化も見逃せない。倍音が豊かさが増し濃厚な音に変貌



一方、N1Aの後継であるスタンダードモデル、N50の進化も見逃せない。デジタル処理基板にNDK社の低ノイズ、高精度クロックを採用。新クリア・ダイナミック・パワーサプライを搭載し、大容量キャパシタとスイッチング電源の高品位化を行った。

「N50」の内部。SSDはリジットなレイヤード・マウンターに、HDDはフローティング・マウンターに搭載(写真はHDDモデル)。電源部はN1Aより容量を25%アップした低ノイズ・スイッチング電源+大容量コンデンサーバンクを採用

時代の変化に伴い、N50からはSSD搭載モデルが標準となったが、容量を重視するユーザーを想定し、大容量6TB HDDを搭載したモデルも選択可能となった。今回はこの6TBモデルで試聴を行なった。なお前モデル「N1A/3」にも6TBモデルが存在していたが、前モデルが2ドライブで実現していたのに対し、新モデルでは1ドライブでの6TBとなっている。

「N50」の背面。2系統のLAN端子、バックアップや増設ドライブ用、そしてUSB DAC接続用のUSB TypeA出力を装備。USB DAC接続用USB端子のみ高品位なノイトリック製

その音は、前述の当初のフラグシップN1Zの音に近づいた印象を受ける。音の透明度や解像度特性が大幅に進化していることが理解できる。音質的には、N1Zよりも濃厚な音に変貌し倍音の豊かさも増した印象を受ける。

メルコシンクレッツが、愛用者や他メーカーの意見を重視し、ファームウェアをアップグレードしたり、画期的な周辺機器までも開発したりして、ネットオーディオを牽引してきたことを私は高く評価したい。DELA製品で統一した音を、ぜひ読者に体験して欲しい。

<編集部追記>
取材後のアップデートにより、N1は「Roon Ready」に正式対応することが発表されました。Roon Coreに最新アップデートを適用することで、N1がRoon Readyデバイスとして認識されます。


本記事は『季刊・オーディオアクセサリー188号』からの転載です。

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