PR 公開日 2024/07/18 06:30
ウィーンアコースティクス初のアクティブスピーカー「Mozart Infinity」、しなやかな表現を聴く
パッシブモデル2機種の音質もチェック
オーストリアのVienna Acoustics(ウィーンアコースティクス)の新製品は、作曲家アマデウス・モーツァルトの名を冠したクラスDアンプ内蔵のアクティブスピーカー。ネットワークにも対応、アナログ入力も搭載しており、さまざまなソースを活用したシンプルで質の高いオーディオシステムを構築することができる。そのサウンドを山之内 正氏がレポートする。
欧州のスピーカーメーカーは、歴史や規模に関わらずアクティブスピーカーの開発に積極的に取り組んでいる。創業35周年を迎えるウィーンアコースティクスもその例外ではなく、昨年5月にミュンヘンで開催されたハイエンドショウで「Mozart Infinity」を公開し、話題を集めた。そのインフィニティがいよいよ完成した。その詳細を確認することができたので、早速紹介することにしよう。
同社はフロア型を中心に「Haydn」、「Beethoven」、「LISZT」などウィーンに縁の深い作曲家の名を冠したシリーズを展開しており、Mozartもそのなかに含まれていた。従来のパッシブモデルは現在はラインナップから外れている。
ウィーンアコースティクスは他のスピーカーと同じように長い年月をかけて内容の吟味を重ね、初の本格的なアクティブスピーカーを完成させたのだ。しかも、単にアンプを内蔵するだけでなく、ストリーミングにも対応するネットワーク再生機能を内蔵し、アナログ入力とデジタル入力まで装備する完全なスタンドアローン型のシステムとして作り込んでいることに注目する必要がある。
アンプは片方のチャンネルだけに内蔵し、アクティブ側からパッシブ側には付属のスピーカーケーブルでパワーアンプ出力を届ける仕組みを採用。L/Rは背面のスイッチで指定できるので、他の機器との接続に都合の良い側をアクティブ側に設定すれば良い。また、背面にはイーサネット端子に並んでHDMI eARCを1系統装備しているので、テレビにつないだ映像機器の音もInfinityで再生することができる。リビングルームのオーディオ環境は全て一台でカバーするというコンセプトなのだ。
操作には専用アプリを用意し、RoonReadyの認証も受けている。ストリーミング、ARCからRoonまで、いきなりフルスペックのネットワークスピーカーを作り上げたパワーには感服させられる。
ドライバーユニットは28mm口径のシルクドームトゥイーターと152mm口径のウーファー2基を組み合わせ、2.5ウェイとして駆動。ウーファーの振動板は独自組成の高分子材料を混入させたX4Pフラット振動板とファブリック製センタードームを上位機種から受け継いでいる。内蔵アンプの詳細は不明だが、クラスDでチャンネルあたり125Wと出力には余裕がある。
最初の導入時はBluetoothを利用して簡単な設定が必要だが、それを終えればDLNAで音楽サーバーの音源を再生したり、ストリーミングでハイレゾ再生を楽しむのも手元のスマホだけで全て操作できる。今回は試聴室のネットワーク環境が利用できない状況だったので、XLR入力にCDプレーヤーのアナログ出力をつないで再生音を確認することにした。別の機会に試したストリーミング再生ではアプリの操作性、レスポンスともに良好で、Roonの再生端末としても問題なく動作したことをお伝えしておく。
イザベル・ファウストらによるシューマンのピアノ四重奏曲は弦楽器とピアノが柔らかく溶け合い、演奏のディテールとアンサンブルが高い次元で両立している。強弱の起伏のしなやかな再現やヴァイオリンの瑞々しい音色はウィーンアコースティクスのスピーカーに共通する長所で、今回併せて試聴したLISZTやHaydn SE SIGNATUREと同様、本機もその美点を忠実に受け継いでいる。
バルトークの『管弦楽のための協奏曲』はステージが左右と奥行き方向にゆったりと広がり、音場は外観から想像するよりも5割ぐらい大きく広がっていると感じた。その伸びやかな空間再現のおかげで、音数の多い大編成のオーケストラの響きを混濁することなく再現し、各セクションの間で交錯するリズムと旋律の複雑な動きをすっきり整理して見せる。トゥッティの大音圧で土台がふらついたり、音像がぶれることがなく、アンプの基本性能に不安は感じなかった。
リッキー・リー・ジョーンズ「ヤング・ブラッド」でヴォーカルとギターの音域が重なってもそれぞれの発音と音色が曖昧にならず、クリアな発音と切れの良いギターのリズムを引き出すことができた。セパレーションは高水準でディテール描写もきめが細かいが、ステージの一体感やアンサンブルのまとまりの良さを伝えることがこのスピーカーの重要な長所である。
番外編として現在のウィーンアコースティクスのラインナップのなかからLISZTとHaydn SE SIGNATUREを試聴したので、その印象も併せて紹介しておこう。
LISZTは上部のキャビネットをフリーアングルで調整可能な回転機構を持つ同社の準フラグシップで、ハーモニーを支える充実した低音と落ち着きのある音調が聴きどころだ。背の高いスピーカーだが、ヴォーカルやギターの音像は自然な高さに定位する。残響が長めの部屋に設置する場合は上部キャビネットを内振りにするなど、直接音と反射音のバランスを調整することで定位を改善することが可能だ。
Haydn SE SIGNATUREは室内楽や声楽アンサンブルを上質な音で楽しみたい人にぴったりの小型スピーカーである。音調に穏やかさと落ち着きがあり、アコースティック楽器や声の質感に他のスピーカーでは得られないウォームな感触をたたえている。ア・カペラの声楽作品でハーモニーの美しさが際立っていたので、ヴォーカルファンにも薦められる。
(提供:ナスペック)
本記事は『季刊・オーディオアクセサリー 193号』からの転載です
昨年ミュンヘンで話題になったアクティブスピーカーが上陸
欧州のスピーカーメーカーは、歴史や規模に関わらずアクティブスピーカーの開発に積極的に取り組んでいる。創業35周年を迎えるウィーンアコースティクスもその例外ではなく、昨年5月にミュンヘンで開催されたハイエンドショウで「Mozart Infinity」を公開し、話題を集めた。そのインフィニティがいよいよ完成した。その詳細を確認することができたので、早速紹介することにしよう。
同社はフロア型を中心に「Haydn」、「Beethoven」、「LISZT」などウィーンに縁の深い作曲家の名を冠したシリーズを展開しており、Mozartもそのなかに含まれていた。従来のパッシブモデルは現在はラインナップから外れている。
ウィーンアコースティクスは他のスピーカーと同じように長い年月をかけて内容の吟味を重ね、初の本格的なアクティブスピーカーを完成させたのだ。しかも、単にアンプを内蔵するだけでなく、ストリーミングにも対応するネットワーク再生機能を内蔵し、アナログ入力とデジタル入力まで装備する完全なスタンドアローン型のシステムとして作り込んでいることに注目する必要がある。
アンプは片方のチャンネルだけに内蔵し、アクティブ側からパッシブ側には付属のスピーカーケーブルでパワーアンプ出力を届ける仕組みを採用。L/Rは背面のスイッチで指定できるので、他の機器との接続に都合の良い側をアクティブ側に設定すれば良い。また、背面にはイーサネット端子に並んでHDMI eARCを1系統装備しているので、テレビにつないだ映像機器の音もInfinityで再生することができる。リビングルームのオーディオ環境は全て一台でカバーするというコンセプトなのだ。
操作には専用アプリを用意し、RoonReadyの認証も受けている。ストリーミング、ARCからRoonまで、いきなりフルスペックのネットワークスピーカーを作り上げたパワーには感服させられる。
ドライバーユニットは28mm口径のシルクドームトゥイーターと152mm口径のウーファー2基を組み合わせ、2.5ウェイとして駆動。ウーファーの振動板は独自組成の高分子材料を混入させたX4Pフラット振動板とファブリック製センタードームを上位機種から受け継いでいる。内蔵アンプの詳細は不明だが、クラスDでチャンネルあたり125Wと出力には余裕がある。
最初の導入時はBluetoothを利用して簡単な設定が必要だが、それを終えればDLNAで音楽サーバーの音源を再生したり、ストリーミングでハイレゾ再生を楽しむのも手元のスマホだけで全て操作できる。今回は試聴室のネットワーク環境が利用できない状況だったので、XLR入力にCDプレーヤーのアナログ出力をつないで再生音を確認することにした。別の機会に試したストリーミング再生ではアプリの操作性、レスポンスともに良好で、Roonの再生端末としても問題なく動作したことをお伝えしておく。
ヴァイオリンの音色を瑞々しくしなやかに再現
イザベル・ファウストらによるシューマンのピアノ四重奏曲は弦楽器とピアノが柔らかく溶け合い、演奏のディテールとアンサンブルが高い次元で両立している。強弱の起伏のしなやかな再現やヴァイオリンの瑞々しい音色はウィーンアコースティクスのスピーカーに共通する長所で、今回併せて試聴したLISZTやHaydn SE SIGNATUREと同様、本機もその美点を忠実に受け継いでいる。
バルトークの『管弦楽のための協奏曲』はステージが左右と奥行き方向にゆったりと広がり、音場は外観から想像するよりも5割ぐらい大きく広がっていると感じた。その伸びやかな空間再現のおかげで、音数の多い大編成のオーケストラの響きを混濁することなく再現し、各セクションの間で交錯するリズムと旋律の複雑な動きをすっきり整理して見せる。トゥッティの大音圧で土台がふらついたり、音像がぶれることがなく、アンプの基本性能に不安は感じなかった。
リッキー・リー・ジョーンズ「ヤング・ブラッド」でヴォーカルとギターの音域が重なってもそれぞれの発音と音色が曖昧にならず、クリアな発音と切れの良いギターのリズムを引き出すことができた。セパレーションは高水準でディテール描写もきめが細かいが、ステージの一体感やアンサンブルのまとまりの良さを伝えることがこのスピーカーの重要な長所である。
パッシブタイプ2モデルの音質の傾向を改めて確認
番外編として現在のウィーンアコースティクスのラインナップのなかからLISZTとHaydn SE SIGNATUREを試聴したので、その印象も併せて紹介しておこう。
LISZTは上部のキャビネットをフリーアングルで調整可能な回転機構を持つ同社の準フラグシップで、ハーモニーを支える充実した低音と落ち着きのある音調が聴きどころだ。背の高いスピーカーだが、ヴォーカルやギターの音像は自然な高さに定位する。残響が長めの部屋に設置する場合は上部キャビネットを内振りにするなど、直接音と反射音のバランスを調整することで定位を改善することが可能だ。
Haydn SE SIGNATUREは室内楽や声楽アンサンブルを上質な音で楽しみたい人にぴったりの小型スピーカーである。音調に穏やかさと落ち着きがあり、アコースティック楽器や声の質感に他のスピーカーでは得られないウォームな感触をたたえている。ア・カペラの声楽作品でハーモニーの美しさが際立っていたので、ヴォーカルファンにも薦められる。
(提供:ナスペック)
本記事は『季刊・オーディオアクセサリー 193号』からの転載です