公開日 2010/03/18 15:54
ソニーのテレビはAndroidの夢を見るか
最近の薄型テレビで最大の話題が「3D」。ただし収益性という面だけで見ると、3Dテレビが長期的な収益向上につながるかは心許ない。
もっと率直に言ってしまうと、3Dがテレビの平均単価の引き上げに大きく貢献する可能性は低い。それはソニーが発表した3D対応BRAVIAの価格戦略を見ても明らかだし、パナソニックも北米ではかなり割安な価格設定で勝負に出ている。
だがソニーで長年VAIO事業を率いてきた、現ホームエンターテインメント事業本部SVPの石田佳久氏は、3Dに匹敵する、あるいはそれ以上の「飛び道具」を隠し持っているようだ。
3D BRAVIA発表会での席上で、石田氏が一番語気を強めたのは、3Dホームエンターテインメントの紹介よりも、昨年12月に同氏がコンセプトを紹介した「進化するテレビ」(関連ニュース)、また新たなテレビのビジネスモデルであるように感じられた。
石田氏が「全く新しいコンセプト」という「進化するテレビ」がどんなものになるのか、記者は一度妄想混じりの予想を記事にした。今回新しい情報が出てきたので、ここで今一度、昨年の経営方針説明会で説明された情報、そして今回の3D BRAVIAの発表会(関連ニュース)でアップデートされた情報を整理しておこう。
<昨年12月の発表資料>
・これまでのテレビとはまったく概念が異なる
・これまでの概念を覆す視聴スタイル
・ネットワーク経由で新たなアプリケーションを提供する『進化するテレビ』
・快適な操作性
・QWERTYキー付きインプットデバイス
・マルチタスク
・放送やパッケージメディア、インターネットなどを一元的に管理
<今年3月の石田氏の発言>
・テレビをネットワークにつなぐだけでなく、買った後にもメリットがあるような提案をしたい
・テレビや携帯電話などを含め、ネットワークにつながる商品は売り切り型でないビジネスモデルが重要になる
・グループ会社と連携したコンテンツ配信も考えられるがそれだけではない
・今後はクラウドを使ったサービスが重要になる
・新サービスはソニーオンラインサービスの中に入れていきたい
今回注目したのは「マルチタスク」という部分だ。家電向けOSでは、複数メディアの同時視聴を行いながら、複数のアプリを同時に動かすのは難しい。これを行うためには、相応のOSと処理能力が必要になるのは明らかだ。
ではソニーがテレビ向けのOSを作れるか、あるいは作るかといったら、ノウハウや開発リソースの面で難しいのではないか。
家電でも使えるほど起動が速く、マルチタスクに対応し、カスタマイズも容易なOSとして真っ先に思い浮かぶのが、GoogleのAndroidだ。ソニーはこれをテレビに搭載してくるのでは、と記者は予想している。
Androidはオープンソースなので使いやすいし、同グループのソニーエリクソンもAndroid搭載のスマートフォン「Xperia」を販売する。ソニーエリクソンは今後もAndroidに力を入れていく考えだ。
実際にAndroidを使ったテレビは、昨年のIFAで船井電機が試作段階ながら公開している(関連ニュース)。この試作機では、テレビとモバイル間でムービーなどのコンテンツをムーブしたり、メールをテレビとモバイル両方で閲覧したりすることが可能なのだという。
もちろん、基本的にはスマートフォン向けであるAndroidをそのまま使っても仕方がない。ソニー独自の仕様にカスタマイズされ、ユーザーインターフェースなどもテレビ向けに最適化されるだろう。Androidマーケットで公開されているアプリをテレビで利用できるかは不透明だが、上位レイヤーに、同社が独自に開発を進めている「ソニーオンラインサービス」を展開することもできる。ちょうどXperiaにおける「ドコモマーケット」のような位置づけだ。
チップは何を使ってくるだろうか。これは予測がつかないが、ARMベースのCPUは比較的簡単に開発することが可能なので、テレビ向けにカスタマイズしたものを外部ベンダーに作ってもらう、もしくは内製するといったことが、一つの選択肢として考えられる。
…と、ここまで書いたところで、米ニューヨークタイムスがこんな記事を出した(記事を読んでから書いたのではないので念のため)。
報道ではGoogleがIntel、Logitech、ソニーなどと組み、「Google TV」というAndroidベースのテレビ向けプラットフォームを作る、としており、チップにはATOMが採用されると述べている。
この報道が事実であれば、石田氏の言う「進化するテレビ」がAndroidベースである可能性は非常に高くなる。
それと同時に「Google TV」の利用権がソニー独占でないとすれば(その可能性は高いと思うが)、現在Androidを採用したスマートフォンのあいだで熾烈なシェア争いが起きているように、短期間で他メーカーにキャッチアップされる恐れもある。
いずれにしても、Googleがテレビのプラットフォームに参入する可能性があるというのは非常に興味深く、今後の動向から目が離せそうにない。
もっと率直に言ってしまうと、3Dがテレビの平均単価の引き上げに大きく貢献する可能性は低い。それはソニーが発表した3D対応BRAVIAの価格戦略を見ても明らかだし、パナソニックも北米ではかなり割安な価格設定で勝負に出ている。
だがソニーで長年VAIO事業を率いてきた、現ホームエンターテインメント事業本部SVPの石田佳久氏は、3Dに匹敵する、あるいはそれ以上の「飛び道具」を隠し持っているようだ。
3D BRAVIA発表会での席上で、石田氏が一番語気を強めたのは、3Dホームエンターテインメントの紹介よりも、昨年12月に同氏がコンセプトを紹介した「進化するテレビ」(関連ニュース)、また新たなテレビのビジネスモデルであるように感じられた。
石田氏が「全く新しいコンセプト」という「進化するテレビ」がどんなものになるのか、記者は一度妄想混じりの予想を記事にした。今回新しい情報が出てきたので、ここで今一度、昨年の経営方針説明会で説明された情報、そして今回の3D BRAVIAの発表会(関連ニュース)でアップデートされた情報を整理しておこう。
<昨年12月の発表資料>
・これまでのテレビとはまったく概念が異なる
・これまでの概念を覆す視聴スタイル
・ネットワーク経由で新たなアプリケーションを提供する『進化するテレビ』
・快適な操作性
・QWERTYキー付きインプットデバイス
・マルチタスク
・放送やパッケージメディア、インターネットなどを一元的に管理
<今年3月の石田氏の発言>
・テレビをネットワークにつなぐだけでなく、買った後にもメリットがあるような提案をしたい
・テレビや携帯電話などを含め、ネットワークにつながる商品は売り切り型でないビジネスモデルが重要になる
・グループ会社と連携したコンテンツ配信も考えられるがそれだけではない
・今後はクラウドを使ったサービスが重要になる
・新サービスはソニーオンラインサービスの中に入れていきたい
今回注目したのは「マルチタスク」という部分だ。家電向けOSでは、複数メディアの同時視聴を行いながら、複数のアプリを同時に動かすのは難しい。これを行うためには、相応のOSと処理能力が必要になるのは明らかだ。
ではソニーがテレビ向けのOSを作れるか、あるいは作るかといったら、ノウハウや開発リソースの面で難しいのではないか。
家電でも使えるほど起動が速く、マルチタスクに対応し、カスタマイズも容易なOSとして真っ先に思い浮かぶのが、GoogleのAndroidだ。ソニーはこれをテレビに搭載してくるのでは、と記者は予想している。
Androidはオープンソースなので使いやすいし、同グループのソニーエリクソンもAndroid搭載のスマートフォン「Xperia」を販売する。ソニーエリクソンは今後もAndroidに力を入れていく考えだ。
実際にAndroidを使ったテレビは、昨年のIFAで船井電機が試作段階ながら公開している(関連ニュース)。この試作機では、テレビとモバイル間でムービーなどのコンテンツをムーブしたり、メールをテレビとモバイル両方で閲覧したりすることが可能なのだという。
もちろん、基本的にはスマートフォン向けであるAndroidをそのまま使っても仕方がない。ソニー独自の仕様にカスタマイズされ、ユーザーインターフェースなどもテレビ向けに最適化されるだろう。Androidマーケットで公開されているアプリをテレビで利用できるかは不透明だが、上位レイヤーに、同社が独自に開発を進めている「ソニーオンラインサービス」を展開することもできる。ちょうどXperiaにおける「ドコモマーケット」のような位置づけだ。
チップは何を使ってくるだろうか。これは予測がつかないが、ARMベースのCPUは比較的簡単に開発することが可能なので、テレビ向けにカスタマイズしたものを外部ベンダーに作ってもらう、もしくは内製するといったことが、一つの選択肢として考えられる。
…と、ここまで書いたところで、米ニューヨークタイムスがこんな記事を出した(記事を読んでから書いたのではないので念のため)。
報道ではGoogleがIntel、Logitech、ソニーなどと組み、「Google TV」というAndroidベースのテレビ向けプラットフォームを作る、としており、チップにはATOMが採用されると述べている。
この報道が事実であれば、石田氏の言う「進化するテレビ」がAndroidベースである可能性は非常に高くなる。
それと同時に「Google TV」の利用権がソニー独占でないとすれば(その可能性は高いと思うが)、現在Androidを採用したスマートフォンのあいだで熾烈なシェア争いが起きているように、短期間で他メーカーにキャッチアップされる恐れもある。
いずれにしても、Googleがテレビのプラットフォームに参入する可能性があるというのは非常に興味深く、今後の動向から目が離せそうにない。