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公開日 2011/08/10 10:55

「はだしのゲン」作者・中沢啓治氏のドキュメンタリー「はだしのゲンが見たヒロシマ」公開中

山之内優子
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困難を越え、麦のようにたくましく生きる

「はだしのゲン」は、広島出身の漫画家、中沢啓治氏が、原子爆弾で被爆した自身の姿をモデルに描いたマンガ。1973年に週刊少年ジャンプで連載が開始され、1987年に第一部が完結した。これまでに映画、テレビドラマ、ミュージカルなどが作られ、13カ国以上の言語に翻訳されている。

今年、「はだしのゲン」作者の中沢さん自身の語りと、広島平和記念資料館に保存されているマンガ原画によって、中沢氏の被爆体験と半生を語る映画が完成し、現在、各地での上映がおこなわれている。

(c)2011シグロ、トモコーポレーション

(c)2011シグロ、トモコーポレーション
 
映画の冒頭、中沢さんは、「この映画のテーマは、麦なんです。麦は寒い冬に芽を出して、霜柱を押しのけて伸びる。何回も何回も麦踏みで踏まれる。大地に根をしっかり張って、まっすぐに伸びて、豊かな穂を実らせる。人間、そういうふうになれよ」と語る。

(c)2011シグロ、トモコーポレーション

色あせないマンガの原画は、原爆被害のすさまじさとともに、麦のようにたくましく生きるゲンの姿を伝えている。「僕は漫画家を目指して、半生続いた。わが青春に悔いない。好きなことでめしが食えたんだから、俺は幸せもんだよ」と言う中沢さんのひまわりのような笑顔が印象的だ。

東京での上映初日は、監督の石田優子氏とカメラマンの大津幸四郎氏のトークショーがおこなわれた。

石田優子監督は、これが初監督作品。佐藤真監督のドキュメンタリー映画「out of place」の助監督などを経験。今回、広島・長崎の被爆者証言を記録する活動に関わり、この作品を監督することになった。

東京渋谷オーディトリウム渋谷で、上映後、舞台挨拶をする石田優子監督(右)と大津幸四郎カメラマン

「私は東京出身で、広島に親戚がいるわけでもなく、まだ若いし、こういう大きいテーマに関わっていいのかどうかという、迷いも実はあったんです。でも、等身大の若い私に、中沢さんが向き合ってくださって、この作品ができました。私自身が中沢さんの生き方に勇気づけられました」と語る。

ベテランのドキュメンタリーカメラマンとして多数の経験を持つ撮影の大津氏は、「石田監督は、素直にものをちゃんと見ている。ドキュメントの監督としては、これは美点です。だんだん、こういうことが若い人の間になくなってきている。作るということには一生懸命になるんだけれど、作っちゃえばいいんだと考えている方が多いだろうと思うんですね」と話す。

「じっと見ていって、それを記録していくんだということで、今、広島・長崎で被曝された高齢の方達の話を、もう一回ちゃんと聞いていこうとしています。それで、トータルとして”原爆とはいったい何だったのか”ということを、もう一回考えなおしたい。今回、中沢さんには、すべての力をこめてしゃべっていただいた」

中沢さんは現在がんを発症して、入院の予定がある。しかし、8月6日は初めての広島の原爆式典に参加。また、大ファンの広島カープの始球式では、ボールを投げた。東京上映の二日目には、広島の中沢さんとのインターネット中継が行われた。

「8月6日の8時15分を迎えると、いまだに地獄の姿を毎回毎回、毎年毎年思い出して辛いですよ。だけど、やっぱりそれをのりきっていって、今度は口で表現しました。見ているみなさんがそこから、何か感じ取ってくれれば、被写体になった僕は幸せです」と、監督たちにエールを送った。

東京での二日目の上映後、インタネーット中継で、広島の中沢氏もトークショーに参加した。

石田監督は「中沢さんは被曝をされ、不安を感じながら成長された。『自分は元気にここまでやってきたのだから、どうか元気でがんばってくださいと、3月11日の災害にあわれた方たちに、メッセージを伝えたい』と仰っています。また、風評による子供への差別など、絶対にあってはならないことで、放射能についてきちんと理解して、政府のほうからも、きちんとした情報を伝えてほしいとおっしゃっておられます」と語る。

中沢さんの「人類にとっての、最高の宝は平和です」という手書きの色紙が飾られている映画館で、子供たちと一緒に映画を見にきた40代の女性は、「むかし自分が読んだ『はだしのゲン』が映画になったときいて、平和の大切さを子供に伝えたいと思って来ました」と話していた。

東京での映画の上映は26日まで。この後も、土・日に、上映後トークショーが予定されている。その後、各地を巡回して上映する。

映画についての詳細はこちら。
「はだしのゲンが見たヒロシマ」
http://a-shibuya.jp/archives/641

上映館については、以下から。
オーディトリウム渋谷
http://a-shibuya.jp/

また、オーディトリウム渋谷と同ビル内の、渋谷ユーロスペース2では、連日モーニングショーで、「あしたが消える − どうして原発? − デジタルリマスター版」を上映中。1989年に作られ、福島第一原発の現在の状態を予言するかのような証言もある。幻のフィルムと言われる映画上映だ。

詳細は、以下まで。
http://www.eurospace.co.jp/detail.html?no=341

(取材/文 山之内優子)

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