公開日 2018/12/14 06:00
ハーマン幹部インタビュー(1)
ハーマンのワイヤレススピーカーは「サウンドにフォーカス」。幹部に聞いた音づくりの秘密
構成:編集部 風間雄介
ハーマンインターナショナルのグローバルヘッドオフィスから幹部が来日。JBLやAKG、HAMAN/KARDONなど多くのブランドを抱える同社は、今後どのような商品展開を行っていくのか? 2記事に分けて紹介していく(インタビュー『JBL・AKGのヘッドホン/イヤホンは「真のハイレゾワイヤレス」へ。完全ワイヤレスにもさらに注力』)。
この記事では、ワイヤレスポータブルスピーカー、スマートスピーカー、サウンドバーのバイスプレジデントであるAndy Tsui氏にインタビューした。
なおインタビューの中で、グローバルの開発拠点が深圳にあり、そこがハブになっていることなど、ヘッドホンのVPであるPascal氏のお話と重複する内容もあった。そういった部分は割愛している。
■ニーズに応じた製品を一つ一つ投入しシェア40%
−− 7年前にハーマンに入社され、今ではシェア40%、140億ドルまでビジネスを拡大されたと伺いました。これはすごいことですね。
Andy氏:2011年に入社して、JBL「FLIP」が私が最初に担当したプロダクツです。ちょうどその頃はスマートフォンが拡大し始めた時期で、ユーザーが音楽コンテンツやビデオに目を向け始めた頃でもありました。
その後は、ユーザーの求めるニーズに応じて、CHARGEやPULSEなど、次第次第にラインアップを増やしていきました。特にドラマティカルなことをやったわけではありません。一気に40億ドルにビジネスが拡大したわけではなく、一つ一つのステップをクリアしていった結果です。
−− ハーマンのワイヤレススピーカーは、ラインナップが豊富なことはもちろん、毎年のように新モデルが投入されいて、製品開発がとてもスピーディーな印象があります。
Andy氏:この分野は技術の進歩自体がとてもスピーディーで、それに対応するということがあります。機能面だけではなく音質面の進歩も同様ですね。お客様は新しい製品を好まれますので、それに対応しているという意味合いもあります。
ただし新商品を投入する際には、お客様に喜んでもらえるよう、同価格帯の商品であっても、たとえば防水対応、堅牢性など、何か新しいフィーチャーを加えていくようにしています。
■それぞれのサウンドは「ゴールデンイヤー」が厳密に決定
−− JBLだけではなく、HARMAN/KARDONも担当されていますね。それぞれのブランドのコンセプトを改めて教えてください。
Andy氏:買っていただくお客様によって違いを付けています。HARMAN/KARDONは年長の方が中心ですので、デザインや素材、仕上げなどもそのようなイメージにしています。あとは美しいデザインにもフォーカスしています。MOMAのパーマネント・コレクションである「Soundsticks」はその象徴ですね。
一方のJBLは、若い方を中心に考えています。カラフルさ、元気さ、エネルギッシュさというイメージを出すようにしています。
−− 音質についてはいかがですか?
Andy氏:デザインと同じように、音についても、ブランドごとに目指すサウンドが違います。ですので、音づくりもセパレートされています。常に目指すサウンドを超えていけるように努力しています。
−− サウンドチューニングはどのように行っているのでしょう? たとえば「ゴールデンイヤー」のような方々がいらっしゃるのでしょうか?
Andy氏:まさに、ハーマンには「ゴールデンイヤー」がいます。トレーニングを積めば、誰でもなれますよ。ただし微細な音を聴き分けるようになるのはとても難しいですが…。
−− そのゴールデンイヤー同士が話し合って、音を決めているというイメージで合っていますか?
Andy氏:はい、そうです。訓練されたゴールデンイヤーたちが、入念に品質テストを行います。各人がテストして評価シートを書き、それをもとに話し合ったり、といった方法ですね。音を決めるときにも、ブランドコンセプトやターゲットを考えながら、じっくり作り込んでいきます。
−− ところで、Andyさんの管轄されているBluetoothスピーカーやWi-Fiスピーカー、スマートスピーカー、サウンドバーなどは、それぞれの機能が統合されつつあり、より近い存在になっていると思います。このことについてはどうお感じでしょうか?
Andy氏:私は「これはBluetooth」「これはWi-Fi」などと、ことさら区別してはいません。シンプルに「ワイヤレスであること」をメインに考えています。ワイヤレスで高音質に音楽を楽しめますよ、というのが我々のキーメッセージであり、それを実現する手段が、時にはBluetoothであったり、時にはWi-Fiであったり、というように考えています。
−− そのお話を伺うと、JBL LINK 10/20が、Andyさんの考え方を体現した製品のように思います。スマートスピーカーでありながら、外に持ち出してBluetoothスピーカーとしても使えますよね。
Andy氏:はい、その通りです。JBL LINK 10/20を企画したのは私自身ですが、何でもできるというのがコンセプトです。この製品を見たお客様に「これは何? これは何ができる?」と聞かれた際、いろいろな機能が説明できます。
−− そのスマートスピーカーについてですが、ハーマンの製品は様々な音声アシスタントに対応しています。
Andy氏:我々はオーディオメーカーであり、良い音を提供するのが仕事です。ですので、特定の音声アシスタントに肩入れするというわけではなく、フラットな姿勢で製品を開発していきます。GoogleやAmazonはもちろんのこと、中国市場ではテンセントともパートナーシップを組んでいます。
■サウンドバーやスマートディスプレイも開発中
−− サウンドバーなど、ほかのカテゴリーについても教えてください。日本ではJBLブランドの「BAR 3.1」が最上位となっています。今後、さらに高いプライスレンジの商品を日本で投入する計画はありますか?
Andy氏:来年はサウンドバーに力を入れたいと思います。JBLブランドの、もっと高いプライスレンジの商品も出て来ますのでご期待ください。
−− 海外ではHARMAN/KARDONのCITATIONシリーズなど高額な製品も展開しています。日本での導入も期待したいのですが。
Andy氏:HARMAN/KARDONのCITATIONシリーズは、小型スピーカーから大型のフロア型スピーカーまで、とても多くのラインナップがあります。また価格レンジも広いです。日本は一般的に、部屋があまり広くないという事情もありますので、大型のものがどれだけ受け入れられるかなど検討中です。
−− サウンドバーでイマーシブオーディオ、ドルビーアトモスやDTS:Xに対応する考えはありますか?
Andy氏:もちろん検討したいですね。テレビが非常に大型化していますので、音質や臨場感を高める試みには挑戦していきたいです。
−− 今後はスマートスピーカーだけでなく、画面付きのスマートディスプレイが楽しみですね。
Andy氏:そうですね。我々はGoogleのファーストパートナーとして製品をローンチしました(編注:日本ではまだ未発売)。次の世代の開発も、当然ながら行っています。まだクリアな回答はできませんが、CESでは様々な新製品をお見せできると思います。
−− 来年1月が発表がますます楽しみになってきました。本日はありがとうございました。
この記事では、ワイヤレスポータブルスピーカー、スマートスピーカー、サウンドバーのバイスプレジデントであるAndy Tsui氏にインタビューした。
なおインタビューの中で、グローバルの開発拠点が深圳にあり、そこがハブになっていることなど、ヘッドホンのVPであるPascal氏のお話と重複する内容もあった。そういった部分は割愛している。
■ニーズに応じた製品を一つ一つ投入しシェア40%
−− 7年前にハーマンに入社され、今ではシェア40%、140億ドルまでビジネスを拡大されたと伺いました。これはすごいことですね。
Andy氏:2011年に入社して、JBL「FLIP」が私が最初に担当したプロダクツです。ちょうどその頃はスマートフォンが拡大し始めた時期で、ユーザーが音楽コンテンツやビデオに目を向け始めた頃でもありました。
その後は、ユーザーの求めるニーズに応じて、CHARGEやPULSEなど、次第次第にラインアップを増やしていきました。特にドラマティカルなことをやったわけではありません。一気に40億ドルにビジネスが拡大したわけではなく、一つ一つのステップをクリアしていった結果です。
−− ハーマンのワイヤレススピーカーは、ラインナップが豊富なことはもちろん、毎年のように新モデルが投入されいて、製品開発がとてもスピーディーな印象があります。
Andy氏:この分野は技術の進歩自体がとてもスピーディーで、それに対応するということがあります。機能面だけではなく音質面の進歩も同様ですね。お客様は新しい製品を好まれますので、それに対応しているという意味合いもあります。
ただし新商品を投入する際には、お客様に喜んでもらえるよう、同価格帯の商品であっても、たとえば防水対応、堅牢性など、何か新しいフィーチャーを加えていくようにしています。
■それぞれのサウンドは「ゴールデンイヤー」が厳密に決定
−− JBLだけではなく、HARMAN/KARDONも担当されていますね。それぞれのブランドのコンセプトを改めて教えてください。
Andy氏:買っていただくお客様によって違いを付けています。HARMAN/KARDONは年長の方が中心ですので、デザインや素材、仕上げなどもそのようなイメージにしています。あとは美しいデザインにもフォーカスしています。MOMAのパーマネント・コレクションである「Soundsticks」はその象徴ですね。
一方のJBLは、若い方を中心に考えています。カラフルさ、元気さ、エネルギッシュさというイメージを出すようにしています。
−− 音質についてはいかがですか?
Andy氏:デザインと同じように、音についても、ブランドごとに目指すサウンドが違います。ですので、音づくりもセパレートされています。常に目指すサウンドを超えていけるように努力しています。
−− サウンドチューニングはどのように行っているのでしょう? たとえば「ゴールデンイヤー」のような方々がいらっしゃるのでしょうか?
Andy氏:まさに、ハーマンには「ゴールデンイヤー」がいます。トレーニングを積めば、誰でもなれますよ。ただし微細な音を聴き分けるようになるのはとても難しいですが…。
−− そのゴールデンイヤー同士が話し合って、音を決めているというイメージで合っていますか?
Andy氏:はい、そうです。訓練されたゴールデンイヤーたちが、入念に品質テストを行います。各人がテストして評価シートを書き、それをもとに話し合ったり、といった方法ですね。音を決めるときにも、ブランドコンセプトやターゲットを考えながら、じっくり作り込んでいきます。
−− ところで、Andyさんの管轄されているBluetoothスピーカーやWi-Fiスピーカー、スマートスピーカー、サウンドバーなどは、それぞれの機能が統合されつつあり、より近い存在になっていると思います。このことについてはどうお感じでしょうか?
Andy氏:私は「これはBluetooth」「これはWi-Fi」などと、ことさら区別してはいません。シンプルに「ワイヤレスであること」をメインに考えています。ワイヤレスで高音質に音楽を楽しめますよ、というのが我々のキーメッセージであり、それを実現する手段が、時にはBluetoothであったり、時にはWi-Fiであったり、というように考えています。
−− そのお話を伺うと、JBL LINK 10/20が、Andyさんの考え方を体現した製品のように思います。スマートスピーカーでありながら、外に持ち出してBluetoothスピーカーとしても使えますよね。
Andy氏:はい、その通りです。JBL LINK 10/20を企画したのは私自身ですが、何でもできるというのがコンセプトです。この製品を見たお客様に「これは何? これは何ができる?」と聞かれた際、いろいろな機能が説明できます。
−− そのスマートスピーカーについてですが、ハーマンの製品は様々な音声アシスタントに対応しています。
Andy氏:我々はオーディオメーカーであり、良い音を提供するのが仕事です。ですので、特定の音声アシスタントに肩入れするというわけではなく、フラットな姿勢で製品を開発していきます。GoogleやAmazonはもちろんのこと、中国市場ではテンセントともパートナーシップを組んでいます。
■サウンドバーやスマートディスプレイも開発中
−− サウンドバーなど、ほかのカテゴリーについても教えてください。日本ではJBLブランドの「BAR 3.1」が最上位となっています。今後、さらに高いプライスレンジの商品を日本で投入する計画はありますか?
Andy氏:来年はサウンドバーに力を入れたいと思います。JBLブランドの、もっと高いプライスレンジの商品も出て来ますのでご期待ください。
−− 海外ではHARMAN/KARDONのCITATIONシリーズなど高額な製品も展開しています。日本での導入も期待したいのですが。
Andy氏:HARMAN/KARDONのCITATIONシリーズは、小型スピーカーから大型のフロア型スピーカーまで、とても多くのラインナップがあります。また価格レンジも広いです。日本は一般的に、部屋があまり広くないという事情もありますので、大型のものがどれだけ受け入れられるかなど検討中です。
−− サウンドバーでイマーシブオーディオ、ドルビーアトモスやDTS:Xに対応する考えはありますか?
Andy氏:もちろん検討したいですね。テレビが非常に大型化していますので、音質や臨場感を高める試みには挑戦していきたいです。
−− 今後はスマートスピーカーだけでなく、画面付きのスマートディスプレイが楽しみですね。
Andy氏:そうですね。我々はGoogleのファーストパートナーとして製品をローンチしました(編注:日本ではまだ未発売)。次の世代の開発も、当然ながら行っています。まだクリアな回答はできませんが、CESでは様々な新製品をお見せできると思います。
−− 来年1月が発表がますます楽しみになってきました。本日はありがとうございました。
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