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公開日 2019/12/24 12:04
U-NEXT 堤天心社長インタビュー

U-NEXTは“オセロの四隅”を押さえて主戦場へと挑む。熾烈化する生き残り競争を勝ち抜く戦略に迫る

PHILE WEB ビジネス編集部・竹内純

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群雄割拠の定額制動画配信(SVOD)市場で、国内最多17万本以上の品揃えを誇示する「U-NEXT」(USEN-NEXT GROUP)。都度課金型動画配信(TVOD)を融合したビジネスモデルの強みを活かした新作配信の早さは「新作ならU-NEXT」と評価もすっかり定着した。さらに、ワンアプリでシームレスに楽しめる電子書籍やポイントサービスなど、プライオリティを明確にした戦略で存在感を訴え、「まずはオセロの四隅を押さえる」と力を込める堤天心社長。激戦極まる市場を勝ち抜く同社の戦略に迫る。


株式会社U-NEXT 代表取締役社長
堤 天心氏


プロフィール/1977 年生まれ。東京大学工学部を卒業後、リクルートに入社。営業、経営企画を経て2006 年にUSEN に転職。VOD(ビデオ・オンデマンド)サービスの立ち上げを担う。分離独立した2010 年以降はU-NEXT を事業本部長として率い、2017年にU-NEXTの代表取締役社長に就任する。座右の銘は「道は常に無為にして、而も為さざるは無し」。趣味は車・ドライブ、ダイビング、ゴルフ。

■加速するメディアのデジタル化

―― 「Apple TV+」「Disney+」が新規参入するなど、まさに群雄割拠の動画配信市場ですが、今後の動向をどのように見ていますか。

 キーワードは「メディアのデジタル化」です。伝統的にケーブルテレビが強い米国では、ケーブルを中心としたメディア・コングロマリットが形成されていますが、そこでも、ケーブルからストリーミングのデジタルメディアであるOTTへ、また、インターフェースでもテレビだけではなく、スマートフォンを含めたマルチデバイスへという流れが起き、これがグローバルで進展しています。

伝統的なメディア・コングロマリットの象徴とも言えるディズニーやワーナーメディアなどのメディアカンパニーは、OTTを “競合” と位置づける一方、コンテンツのライセンス先としては、非常にアグレッシブに買い付けをしてくれるお得意様の関係でもありました。しかしここに来て、ディズニーが「Disney+」、ワーナーメディアが「HBO Max」という新しいストリーミングサービスを発表したことは、自社でのカニバリを辞さず、ケーブルユーザーの保全よりもOTTユーザーを増やす方向へと大きく舵を切る決断をくだしたわけです。まさに “メディアのデジタル化” を象徴する大きなターニングポイントと捉えています。

日本でも同じように伝統的なメディア産業は存在しますが、特徴的なのは、米国ほどペイチャンネルが普及していないこと。当たり前のように月数十ドルを払ってケーブルに加入する文化は成熟していません。もうひとつの特徴は、他の先進国ではデジタルへのシフトがほぼ完了しているにもかかわらず、日本ではパッケージ市場が唯一生き残っていることです。

しかし、このことも前向きに考えれば、日本は少し遅れてメディアのデジタル化が進んでいるとも捉えられ、ここ数年、その流れがグッと加速している手応えも掴んでいます。技術やライフスタイルの進化によってデジタルシフトが必然性を伴ってきており、これから本格的にデジタル化が加速する日本のメディア市場には、大きな伸びしろがあります。AmazonやNetflixなど外資の日本市場参入は、日本メディアのデジタル化を加速させる意味から、ポジティブな要素も見逃せません。

―― さらに、5Gや4Kなどの新しい技術が変化や進化を後押ししていく。

 確実にそうなりますね。今の4Gで動画を潤沢に見ようとしても、キャリアのパケット容量の制限等から限定的にならざるを得ません。しかし、5Gになれば、同じデータ量を届ける伝送コストが下がるわけですから、通信料がいろいろなかたちでユーザーに還元されます。モバイル環境でいつでもどこでも、より簡便にリッチなコンテンツが楽しめます。そうしたシーンがこれから加速度的に広がっていくでしょうね。

―― マルチデバイス化によりスマホシフトが進んでいく中で、 “若者のテレビ離れ” も指摘されていますが、テレビの今後の立ち位置についてはどのように見ていますか。

 U-NEXTのユーザーのデバイス別の視聴構成比は、スマートフォンが約4割、テレビが同じく約4割、残りの約2割がタブレット・PCとなります。モバイルは半分は屋外で、残り半分は家の中のパーソナルスペースや就寝前に寝室で見るといった使い方をされています。一方、家でテレビの大画面で堪能する楽しみ方は、今後も揺るぎないものではないでしょうか。テレビはもはや地上波放送を楽しむだけのものではなく、メーカーさんも、オンラインでOTTコンテンツを楽しむものとして、リモコンに専用のボタンを設けています。また、かつてはモバイルやPCで見るのが当たり前だったYouTubeをテレビの大画面で楽しむ方もどんどん増えています。

オンラインでOTTコンテンツを楽しむのが当たり前となったテレビ。リモコンにも専用のボタンが設けられている

■最大のリテンションは品揃えによる世界観

―― メディアのデジタル化の流れが本格化することで、さらなる伸びしろが期待される動画配信市場では、現在、各社がオリジナルコンテンツ(エクスクルーシブコンテンツ)による差別化に鎬を削っています。御社では競合他社に対し、どのように優位性を示されていく戦略ですか。

 エクスクルーシブコンテンツ戦略を過小評価してはいませんが、重要なのはプライオリティです。新規ユーザーを誘引する上では確かに、エクスクルーシブコンテンツのポテンシャルは疑う余地はありません。しかし、サブスクリプションサービスにおいて、既存ユーザーに継続してU-NEXTを利用いただくためには、エクスクルーシブコンテンツだけではなく、メジャーからニッチまでの幅広い品揃えも間違いなく大きな武器になります。その世界観こそがユーザーのリテンションにつながるという仮説を立てています。そのため、投資の優先順位では作品のラインナップの拡充を最優先しています。

見放題の作品数でも大きく差をつける

各ジャンルで圧倒的な品揃えを誇るU-NEXT

日本のユーザーが、ブラウズしながら作品を探すことに高いモチベーションがあることも、品揃えが大きな魅力となります。海外だとこれがまるっきり逆で、ホーム画面を立ち上げるとすぐに見たいものがあり、タップしてすぐに再生できることが理想と言われているそうです。

日本でも、そうしたエクスペリエンスを望まれる方がいらっしゃる一方、例えば、本屋へ行っても、どんな本があるのか見て回ることそのものが楽しいと感じる人は少なくありませんし、昔のビデオレンタル店にもそういうところに価値がありました。日本人は探すことへの探求心が高い気がします。ですから、かつてレンタルビデオ店が担っていた提供価値をデジタルの世界で丁寧にお届けし、その受け皿になりたいと考えています。「品揃えが一番揃っているのはU-NEXTだよね」と言っていただけることがまずは最優先のテーマです。

そして次のフェーズでは、ジャンルごとのプライオリティを判断しながらエクスクルーシブコンテンツを強化していきます。これは単純に競争戦略ですから、各社が看板とするジャンルに真正面から挑むのではなく、彼らがフォーカス、フィーチャーしていないコンテンツに優先して独占戦略を打ち込んでいます。


ワンアプリで差別化された電子書籍体験

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