公開日 2022/11/21 06:30
デンマークからCEOが来日
DALI「MENUET」30周年記念インタビュー。コンパクトな筐体に秘められた魅力を振り返る
編集部:平山洸太
DALI「MENUET」といえば、ブランドを代表するモデルであり、同時に多くのファンに愛されるブックシェルフスピーカーだ。そんなMENUETが、今年で発売30周年を迎えた。
MENUETは、そのコンパクトなサイズ感はもちろん、本格的なハイファイスピーカーながら比較的手頃なプライスで手に入れられることも支持される理由だ。
ちなみにMENUETの通常モデルは、定価としては22万円(税込/ペア)だが、実勢価格としては実質13万円ほどで購入できる。近ごろは実質15-16万円くらいだったが、10月末くらいから値段が下がっている様子。またMENUET SEについても現在は実質18万円ほどと、同じくプライスダウン。値上げが相次ぐ昨今のなか、価格的にもより魅力が増したといえる。
そんなMENUETだが、ちょうど東京インターナショナルオーディオショウ(TIAS)に合わせて、本国デンマークからDALIの社長が来日。CEOのラース・ウォーレ(Lars Worre)氏に話を訊くことができたので、この機会にあらためて30年を振り返ってみたい。
ウォーレ氏は2004年からCEOを務めているが、DALIに入社したのは1991年。初代MENUETである「DALI 150 MENUET」が発売されたのが1992年なので、ちょうどMENUET登場の1年ほど前に入社したことになる。
そんなウォーレ氏だが、「MENUETは私が作った最初の製品の1つ」とのことで、かなりの思い入れがある製品のようだ。この後詳しく紹介していくが、開発に際してのエピソードなども沢山伺うことができた。
MENUETが登場した1992年は、スピーカーは大きなサイズのものが主流だった。現在では小型のスピーカーは少なくないが、当時はコンパクトで手頃な製品が存在しなかったことから、「MENUETの目的は、非常にコンパクトなスピーカーを作ること」に決まったという。そして、「小さなスピーカーが実際よりも遥かに大きな音を出すことを証明」しようと試行錯誤したとのことだ。
かくしてMENUETの歴史がスタートすることになるが、日本ではそのコンパクトさが受け入れられ、発売初日から大きな反響があったという。そしてこの人気は今日まで続いており、30年経ってもなお、日本で人気を維持しているとのことだ。ちなみに、音楽のメヌエットは英語だと「MINUET」で、MENUETが “I” ではなく “E” なのはデンマークの綴りなのだとか。
日本で受け入れられた理由について、コンパクトなので「近距離で聴くことができる」とウォーレ氏。「といってもニアフィールドモニターではなく、ニアハイファイ。ミキシング用とは違い、パノラマを再現するために作った」と説明するように、そのコンセプトが正しく反映されたスピーカーであることが魅力なのだろう。
またMENUETが日本以外でヒットした理由について、ちょうどヒットモデルであったRogers「LS3/5A」が製造中止したことも大きいとのこと。「いくつかのレビューで、“DALIが新しいLS3/5Aを持っている” と書かれた」とウォーレ氏が話すように、コンセプトは違うものの、市場ではMENUETがそのポジションを引き継ぐかたちになったのだという。
2代目となるのが1994年発売の「ROYAL MENUET」。開発のきっかけとなったのが、「(初代の発売から)しばらくして、もっと高級なキャビネットを作るように勧められた」ことだそうだ。ちなみに初代のDALI 150 MENUETは現在とはキャビネットの構造が異なり、簡素な作りだったという。板を上下左右に組み立て、そこに前後の板をはめ込むような構造をしていた。
しかし、キャビネットを良くすると値段も上がってしまうことから、当時は心配が勝っていたという。だが、箱を塩ビから突板仕上げに変更し、他のチューニングはそのままで発売したところ、価格は上がったものの売上がかなり伸びた。
「2004年頃だっただろうか。MENUETについて1つのアイデアがあった」と話すウォーレ氏。「このスピーカー(MENUET)をもっと印象的にしたいと思い、ウッドファイバーコーンを開発した」という。現在のDALIといえば、このウッドファイバーファイバーコーンがブランドのアイコンにもなっているが、それが誕生したのがこの頃だった。
これまで搭載していたドライバーユニットはポリプロピレン製で、ノルウェーのSEAS社で製造されたもの。しかし、「接着にいくつかの問題があったので、よりよいコーンに変えて、これらの問題を一発で解決したいと思った」という。
さらにトゥイーターについても、「MENUETのオリジナルのドームは20mmで、低域に少しストレスがあった。そこで自分たちで作った28mmのものを使うことにした。そうすれば中域のオーバーラップが非常に大きくなり、中域をシームレスにするためのチューニングが可能になる」と考え改良を行った。
ドライバーを変え、トゥイーターも大型化するのだから、普通に考えれば筐体サイズも必然的に大きくなることだろう。しかし、検討を重ねるうちに、筐体サイズを変えずに済んだという。むしろ新たに設計し直した結果、最適だったのが最初のサイズだった、というのだから驚きだ。
その後このモデルは、3代目の「MENTOR MENUET」として2009年に発売。キャビネットの前面にはゆるやかなカーブが付けられ、このデザインは最新モデルの「MENUET」や「MENUET SE」にも受け継がれている。また背面のターミナルには角度を設けることで、壁に近づけて配置できるようにも配慮している。
「もちろん世代ごとに常に改善を行っているが、進化すればいいのではなく、変わるべきではない部分もある。マツダのMX-5(国内ではロードスター)と同じように、簡単に変えてはいけない」とウォーレ氏は考えを述べる。「我々にとって、このMENUETが存在することはとても重要。昔はまだMENUETが若い製品だったので、DALIのことを知らない人が多かったが、今ではエバーグリーン(常緑樹/時を経ても色褪せない名曲の意味もある)のようになった」という言葉からも、ウォーレ氏の思い入れが伝わってくる。
MENUETは、そのコンパクトなサイズ感はもちろん、本格的なハイファイスピーカーながら比較的手頃なプライスで手に入れられることも支持される理由だ。
ちなみにMENUETの通常モデルは、定価としては22万円(税込/ペア)だが、実勢価格としては実質13万円ほどで購入できる。近ごろは実質15-16万円くらいだったが、10月末くらいから値段が下がっている様子。またMENUET SEについても現在は実質18万円ほどと、同じくプライスダウン。値上げが相次ぐ昨今のなか、価格的にもより魅力が増したといえる。
そんなMENUETだが、ちょうど東京インターナショナルオーディオショウ(TIAS)に合わせて、本国デンマークからDALIの社長が来日。CEOのラース・ウォーレ(Lars Worre)氏に話を訊くことができたので、この機会にあらためて30年を振り返ってみたい。
日本で好評を博したコンパクトサイズ
ウォーレ氏は2004年からCEOを務めているが、DALIに入社したのは1991年。初代MENUETである「DALI 150 MENUET」が発売されたのが1992年なので、ちょうどMENUET登場の1年ほど前に入社したことになる。
そんなウォーレ氏だが、「MENUETは私が作った最初の製品の1つ」とのことで、かなりの思い入れがある製品のようだ。この後詳しく紹介していくが、開発に際してのエピソードなども沢山伺うことができた。
MENUETが登場した1992年は、スピーカーは大きなサイズのものが主流だった。現在では小型のスピーカーは少なくないが、当時はコンパクトで手頃な製品が存在しなかったことから、「MENUETの目的は、非常にコンパクトなスピーカーを作ること」に決まったという。そして、「小さなスピーカーが実際よりも遥かに大きな音を出すことを証明」しようと試行錯誤したとのことだ。
かくしてMENUETの歴史がスタートすることになるが、日本ではそのコンパクトさが受け入れられ、発売初日から大きな反響があったという。そしてこの人気は今日まで続いており、30年経ってもなお、日本で人気を維持しているとのことだ。ちなみに、音楽のメヌエットは英語だと「MINUET」で、MENUETが “I” ではなく “E” なのはデンマークの綴りなのだとか。
日本で受け入れられた理由について、コンパクトなので「近距離で聴くことができる」とウォーレ氏。「といってもニアフィールドモニターではなく、ニアハイファイ。ミキシング用とは違い、パノラマを再現するために作った」と説明するように、そのコンセプトが正しく反映されたスピーカーであることが魅力なのだろう。
またMENUETが日本以外でヒットした理由について、ちょうどヒットモデルであったRogers「LS3/5A」が製造中止したことも大きいとのこと。「いくつかのレビューで、“DALIが新しいLS3/5Aを持っている” と書かれた」とウォーレ氏が話すように、コンセプトは違うものの、市場ではMENUETがそのポジションを引き継ぐかたちになったのだという。
「変わるべきではない部分」がある
2代目となるのが1994年発売の「ROYAL MENUET」。開発のきっかけとなったのが、「(初代の発売から)しばらくして、もっと高級なキャビネットを作るように勧められた」ことだそうだ。ちなみに初代のDALI 150 MENUETは現在とはキャビネットの構造が異なり、簡素な作りだったという。板を上下左右に組み立て、そこに前後の板をはめ込むような構造をしていた。
しかし、キャビネットを良くすると値段も上がってしまうことから、当時は心配が勝っていたという。だが、箱を塩ビから突板仕上げに変更し、他のチューニングはそのままで発売したところ、価格は上がったものの売上がかなり伸びた。
「2004年頃だっただろうか。MENUETについて1つのアイデアがあった」と話すウォーレ氏。「このスピーカー(MENUET)をもっと印象的にしたいと思い、ウッドファイバーコーンを開発した」という。現在のDALIといえば、このウッドファイバーファイバーコーンがブランドのアイコンにもなっているが、それが誕生したのがこの頃だった。
これまで搭載していたドライバーユニットはポリプロピレン製で、ノルウェーのSEAS社で製造されたもの。しかし、「接着にいくつかの問題があったので、よりよいコーンに変えて、これらの問題を一発で解決したいと思った」という。
さらにトゥイーターについても、「MENUETのオリジナルのドームは20mmで、低域に少しストレスがあった。そこで自分たちで作った28mmのものを使うことにした。そうすれば中域のオーバーラップが非常に大きくなり、中域をシームレスにするためのチューニングが可能になる」と考え改良を行った。
ドライバーを変え、トゥイーターも大型化するのだから、普通に考えれば筐体サイズも必然的に大きくなることだろう。しかし、検討を重ねるうちに、筐体サイズを変えずに済んだという。むしろ新たに設計し直した結果、最適だったのが最初のサイズだった、というのだから驚きだ。
その後このモデルは、3代目の「MENTOR MENUET」として2009年に発売。キャビネットの前面にはゆるやかなカーブが付けられ、このデザインは最新モデルの「MENUET」や「MENUET SE」にも受け継がれている。また背面のターミナルには角度を設けることで、壁に近づけて配置できるようにも配慮している。
「もちろん世代ごとに常に改善を行っているが、進化すればいいのではなく、変わるべきではない部分もある。マツダのMX-5(国内ではロードスター)と同じように、簡単に変えてはいけない」とウォーレ氏は考えを述べる。「我々にとって、このMENUETが存在することはとても重要。昔はまだMENUETが若い製品だったので、DALIのことを知らない人が多かったが、今ではエバーグリーン(常緑樹/時を経ても色褪せない名曲の意味もある)のようになった」という言葉からも、ウォーレ氏の思い入れが伝わってくる。