公開日 2023/12/27 06:30
オーディオ銘機賞2024 受賞インタビュー
【インタビュー】ラックスマン 末吉達哉氏、ハイファイの原点を突き進み感じ取るさらなる手応え
PHILEWEBビジネス 徳田ゆかり
オーディオ銘機賞2024
受賞インタビュー:ラックスマン
国内オーディオマーケットに展開される数々の製品の中で、卓越した性能、革新的な内容を持ち、かつオーディオマインドに溢れる“真の銘機”を選定する一大アワード「オーディオ銘機賞」。先頃発表された「オーディオ銘機賞2024」において、ラックスマンのプリアンプ「C-10X」が金賞を受賞した。パワーアンプ「M-10X」とともに新増幅帰還エンジン「LIFES」を搭載し、フラグシップとして対を成すシリーズが完成した。2025年の同社創業100周年を見据え、末吉社長が大いなる意欲を語る。
ラックスマン株式会社
代表取締役社長 末吉達哉氏
ーー オーディオ銘機賞2024にて、プリアンプC-10Xが金賞を受賞されました。まことにおめでとうございます。2年前にオーディオ銘機賞2022でパワーアンプM-10Xが金賞を受賞された際、御社が2025年に創業100周年を迎えるにあたり、M-10Xの方向性を今後のラインナップに浸透させていくとのお言葉を受けての製品内容ですね。
末吉 ありがとうございます。パワーアンプM-10XのペアとなるC-10Xにて、同じく金賞という大きな栄誉を頂戴することができ、大変感慨深い思いです。
C-10Xには、M-10Xで新たに作り上げた増幅帰還エンジン「LIFES」を搭載し、フルバランスの構成のプリアンプ回路として、4基の増幅エンジンを完全に同一の条件で配置しています。増幅回路全体の動作構成が大きく改良され、ゲインを3dB上げたにもかかわらず、S/Nはトータル6dB改善されました。
こうしたことが大きな効果を及ぼして、表現する音楽性の向上に大きく寄与しています。一言で言えば、自然で素直な表現力ですね。それが一聴してわかります。最初に音が出た時の感覚が格段に違いますから。
ーー ブランドを象徴する存在であるフラグシップのセパレートアンプのシリーズが、これで完成したわけですね。
末吉 大変誇らしい思いです。製品ができ、評論家の方々やご販売店の方々にお聴きいただいて、本当にすばらしいというお言葉をいただきました。
ラックスマンはこれまでにいろいろなチャレンジを行ってきましたが、私が社長に就任して以降はラックスマンの原点に戻るかたちで方向性を定めてきました。それが皆様に受け入れられ、高いご評価をいただくことができ、安堵の思いがあります。定めた道筋が間違いではなかったと感じておりますし、この先に向けての自信にもつながります。
すでにC-10Xを発売してから数ヶ月が経ちますが、コロナ禍もひと段落し、ご販売店様の試聴会をはじめとする各地でのイベントに多くのお客様がいらっしゃるようになったことで、製品をご体感いただく機会が格段に増えました。多くの方が私どもの音楽表現の進化をお感じになり、ラックスマンへの期待が大きくなっているように感じております。
ーー コロナ禍にあったここ数年は、予期せぬことがいろいろとありましたね。
末吉 C-10Xは本来、2022年のリリース予定でした。コロナ禍でのパーツ不足の影響で、これが1年間遅れることになってしまったのです。しかしやっとこれを市場に投入することができて、我々にとっても非常に大きな、エポックメイキングな製品になったと捉えております。
このC-10Xとともに、2022年にリリース予定でおりましたのがプリメインアンプ「L-509Z」ですが、これは2022年内ぎりぎりで上梓することができました。双方とも追いかけるのは難しい状況でしたが、L-509Zの1本に絞ることによって、なんとか間に合わせることができたのです。そしてL-509Zの開発によって得られたものも、結果的にC-10Xにフィードバックすることもできました。
ーー 今おっしゃったプリメインアンプ L-509Zは、今回銀賞を受賞されました。
末吉 L-509Zはプリ部、パワー部それぞれに「LIFES」を搭載することができました。開発部の努力で性能を向上させ、コンパクトな増幅エンジンとして進化させたので、搭載が可能になりました。さらにフォノイコライザーもトーンコントロールも充実させ、機能面や操作性でも妥協なく仕上げることができました。
これこそ初めて聴いた時は、表現の奥深さがあり、舞台は大きく、低域のエネルギーも格段に違う。歴然とした進化が感じられる、プリメインのトップエンドにふさわしい製品となっています。国内、海外ともにいちばんボリュームの大きいゾーンですから、こうした製品が高くご評価いただけるのは、大変ありがたいことです。
ーー さらに、ネットワークプレーヤー「NT-07」も銀賞を受賞されました。ブランド初のネットワークトランスポートということで、昨年のTIASでも話題になりましたね。
末吉 ストリーミングでハイレゾのコンテンツも楽しめる環境になる今、オーディオ専業メーカーとして我々は、ぜひそこに対応するべきだと思っております。音楽の楽しみ方はいろいろあり、ハイレゾの環境もそれに応じて広がっています。お客様が音楽を楽しむ環境をご提供するにあたって、クオリティの追求とともにその選択肢を広げるのは我々にとって非常に大事なことなのです。
ディスクプレーヤー、アナログプレーヤーをご提供するのと同様に、ストリーミングのコンテンツを再生するシステムも、ずっと実現したかったのです。オーディオ製品は趣味の世界のものですから、お客様にとってはどれも大切な存在です。我々はただ真摯にそれに対応させていただくということです。CDとネットワークは近いものがありますし、アナログはまったく別の存在ではありますが、どのカテゴリーにも全力で向き合っています。
これまで我々が全世界で販売してきた、USB搭載のSACDプレーヤーやCDプレーヤーをご愛用いただいてきた方々に、できるだけ使いやすく楽しんでいただけるようにと、NT-07はDAC非搭載の仕様としてご提案しています。当初2022年に発売する予定だったのですが、これこそ半導体不足の影響がもっとも大きかったですね。採用した新しいチップの供給がなかなか思うようにならなかったのですが、ようやく落ち着き、やっと日の目を見たという思いです。あとはストリーミング側の始動を待つばかりです。
ーー 全方向のフォーマットに対応するのは大変なことですね。どのような体制で開発されているのですか。
末吉 開発グループは少数精鋭で運営していますが、筐体や基板などのカテゴリーによってそれぞれ違う担当者がいます。社内の体制で完結できない場合は、パートナーのお力を借ります。アナログプレーヤーのアームに関しては、サエクコマースさんのお力をお借りしましたし、NT-07についてもソフトウェアの開発で協業を行いました。
自社での開発が難しい場合であっても、パートナーと協業することで大きな前進を望めますし、開発時間そのものも短縮できます。今後も製品によって積極的に協業を行うつもりですが、最終的にラックスマンの品質に仕上げるのは我々の領分です。そこは踏み外すことのないよう、しっかりと行っていきます。
ーー コロナ禍も沈静化しつつあり、国内は“日常”に戻った感がありますが、市況の手応えはいかがですか。
末吉 市場を見ていると、高価格帯の動きは従来同様にぶれがなく一定の需要がありますが、ベーシックな価格帯では値上げなどが顕著に需要に影響し、2極化が進んでいるように思います。しかし、“おうち時間”を充実させたいというニーズは変わらずありますね。世界情勢も不安定な現在にあっては、ますますそうした欲求が高まっているように思います。
コロナ禍で“おうち時間”が増え、世の中の流れは確実に変わりました。それをきっかけに、ライフスタイルを充実する手段のひとつとして、オーディオのニーズが定着しているようです。そうした新しいお客様は今も離れることなくいらっしゃると感じています。
まだ我々のことをご存じないお客様に対しては、これまで同様ではありますが、SNSで動画を含めた発信を継続しています。弊社からの発信以外でも、特にイベントレポートなどはいろいろな方が発信してくださっています。そういったコンテンツが多くなるほど、新しいお客様に我々の情報が触れる機会は多くなりますから、今後につながっていけばと期待しております。
ーー 御社の100周年の節目となる、2025年に向けた意気込みはいかがでしょうか。
末吉 100周年は長い歴史の結果ですが、私にとっては通過点の思いです。とは言っても大きな節目であり、ここで皆様の記憶に残る製品を作りたいと思っています。“ラックスマンらしさ”をより一層見据えながら、今後も頑張って参りますので、ぜひご期待ください。
ーー 新たな歴史の始まりも楽しみですね。ありがとうございました。
受賞インタビュー:ラックスマン
国内オーディオマーケットに展開される数々の製品の中で、卓越した性能、革新的な内容を持ち、かつオーディオマインドに溢れる“真の銘機”を選定する一大アワード「オーディオ銘機賞」。先頃発表された「オーディオ銘機賞2024」において、ラックスマンのプリアンプ「C-10X」が金賞を受賞した。パワーアンプ「M-10X」とともに新増幅帰還エンジン「LIFES」を搭載し、フラグシップとして対を成すシリーズが完成した。2025年の同社創業100周年を見据え、末吉社長が大いなる意欲を語る。
ラックスマン株式会社
代表取締役社長 末吉達哉氏
■新たな増幅帰還エンジン「LIFES」を搭載して格段の進化を遂げたフラグシップ機「C-10X」
ーー オーディオ銘機賞2024にて、プリアンプC-10Xが金賞を受賞されました。まことにおめでとうございます。2年前にオーディオ銘機賞2022でパワーアンプM-10Xが金賞を受賞された際、御社が2025年に創業100周年を迎えるにあたり、M-10Xの方向性を今後のラインナップに浸透させていくとのお言葉を受けての製品内容ですね。
末吉 ありがとうございます。パワーアンプM-10XのペアとなるC-10Xにて、同じく金賞という大きな栄誉を頂戴することができ、大変感慨深い思いです。
C-10Xには、M-10Xで新たに作り上げた増幅帰還エンジン「LIFES」を搭載し、フルバランスの構成のプリアンプ回路として、4基の増幅エンジンを完全に同一の条件で配置しています。増幅回路全体の動作構成が大きく改良され、ゲインを3dB上げたにもかかわらず、S/Nはトータル6dB改善されました。
こうしたことが大きな効果を及ぼして、表現する音楽性の向上に大きく寄与しています。一言で言えば、自然で素直な表現力ですね。それが一聴してわかります。最初に音が出た時の感覚が格段に違いますから。
ーー ブランドを象徴する存在であるフラグシップのセパレートアンプのシリーズが、これで完成したわけですね。
末吉 大変誇らしい思いです。製品ができ、評論家の方々やご販売店の方々にお聴きいただいて、本当にすばらしいというお言葉をいただきました。
ラックスマンはこれまでにいろいろなチャレンジを行ってきましたが、私が社長に就任して以降はラックスマンの原点に戻るかたちで方向性を定めてきました。それが皆様に受け入れられ、高いご評価をいただくことができ、安堵の思いがあります。定めた道筋が間違いではなかったと感じておりますし、この先に向けての自信にもつながります。
すでにC-10Xを発売してから数ヶ月が経ちますが、コロナ禍もひと段落し、ご販売店様の試聴会をはじめとする各地でのイベントに多くのお客様がいらっしゃるようになったことで、製品をご体感いただく機会が格段に増えました。多くの方が私どもの音楽表現の進化をお感じになり、ラックスマンへの期待が大きくなっているように感じております。
ーー コロナ禍にあったここ数年は、予期せぬことがいろいろとありましたね。
末吉 C-10Xは本来、2022年のリリース予定でした。コロナ禍でのパーツ不足の影響で、これが1年間遅れることになってしまったのです。しかしやっとこれを市場に投入することができて、我々にとっても非常に大きな、エポックメイキングな製品になったと捉えております。
このC-10Xとともに、2022年にリリース予定でおりましたのがプリメインアンプ「L-509Z」ですが、これは2022年内ぎりぎりで上梓することができました。双方とも追いかけるのは難しい状況でしたが、L-509Zの1本に絞ることによって、なんとか間に合わせることができたのです。そしてL-509Zの開発によって得られたものも、結果的にC-10Xにフィードバックすることもできました。
■コロナ禍中の困難を乗り越え妥協なく仕上げたプリメイン「L-509Z」
ーー 今おっしゃったプリメインアンプ L-509Zは、今回銀賞を受賞されました。
末吉 L-509Zはプリ部、パワー部それぞれに「LIFES」を搭載することができました。開発部の努力で性能を向上させ、コンパクトな増幅エンジンとして進化させたので、搭載が可能になりました。さらにフォノイコライザーもトーンコントロールも充実させ、機能面や操作性でも妥協なく仕上げることができました。
これこそ初めて聴いた時は、表現の奥深さがあり、舞台は大きく、低域のエネルギーも格段に違う。歴然とした進化が感じられる、プリメインのトップエンドにふさわしい製品となっています。国内、海外ともにいちばんボリュームの大きいゾーンですから、こうした製品が高くご評価いただけるのは、大変ありがたいことです。
ーー さらに、ネットワークプレーヤー「NT-07」も銀賞を受賞されました。ブランド初のネットワークトランスポートということで、昨年のTIASでも話題になりましたね。
末吉 ストリーミングでハイレゾのコンテンツも楽しめる環境になる今、オーディオ専業メーカーとして我々は、ぜひそこに対応するべきだと思っております。音楽の楽しみ方はいろいろあり、ハイレゾの環境もそれに応じて広がっています。お客様が音楽を楽しむ環境をご提供するにあたって、クオリティの追求とともにその選択肢を広げるのは我々にとって非常に大事なことなのです。
ディスクプレーヤー、アナログプレーヤーをご提供するのと同様に、ストリーミングのコンテンツを再生するシステムも、ずっと実現したかったのです。オーディオ製品は趣味の世界のものですから、お客様にとってはどれも大切な存在です。我々はただ真摯にそれに対応させていただくということです。CDとネットワークは近いものがありますし、アナログはまったく別の存在ではありますが、どのカテゴリーにも全力で向き合っています。
これまで我々が全世界で販売してきた、USB搭載のSACDプレーヤーやCDプレーヤーをご愛用いただいてきた方々に、できるだけ使いやすく楽しんでいただけるようにと、NT-07はDAC非搭載の仕様としてご提案しています。当初2022年に発売する予定だったのですが、これこそ半導体不足の影響がもっとも大きかったですね。採用した新しいチップの供給がなかなか思うようにならなかったのですが、ようやく落ち着き、やっと日の目を見たという思いです。あとはストリーミング側の始動を待つばかりです。
ーー 全方向のフォーマットに対応するのは大変なことですね。どのような体制で開発されているのですか。
末吉 開発グループは少数精鋭で運営していますが、筐体や基板などのカテゴリーによってそれぞれ違う担当者がいます。社内の体制で完結できない場合は、パートナーのお力を借ります。アナログプレーヤーのアームに関しては、サエクコマースさんのお力をお借りしましたし、NT-07についてもソフトウェアの開発で協業を行いました。
自社での開発が難しい場合であっても、パートナーと協業することで大きな前進を望めますし、開発時間そのものも短縮できます。今後も製品によって積極的に協業を行うつもりですが、最終的にラックスマンの品質に仕上げるのは我々の領分です。そこは踏み外すことのないよう、しっかりと行っていきます。
■創業100周年目前、長い歴史の節目を迎えて自らの立ち位置を再確認する
ーー コロナ禍も沈静化しつつあり、国内は“日常”に戻った感がありますが、市況の手応えはいかがですか。
末吉 市場を見ていると、高価格帯の動きは従来同様にぶれがなく一定の需要がありますが、ベーシックな価格帯では値上げなどが顕著に需要に影響し、2極化が進んでいるように思います。しかし、“おうち時間”を充実させたいというニーズは変わらずありますね。世界情勢も不安定な現在にあっては、ますますそうした欲求が高まっているように思います。
コロナ禍で“おうち時間”が増え、世の中の流れは確実に変わりました。それをきっかけに、ライフスタイルを充実する手段のひとつとして、オーディオのニーズが定着しているようです。そうした新しいお客様は今も離れることなくいらっしゃると感じています。
まだ我々のことをご存じないお客様に対しては、これまで同様ではありますが、SNSで動画を含めた発信を継続しています。弊社からの発信以外でも、特にイベントレポートなどはいろいろな方が発信してくださっています。そういったコンテンツが多くなるほど、新しいお客様に我々の情報が触れる機会は多くなりますから、今後につながっていけばと期待しております。
ーー 御社の100周年の節目となる、2025年に向けた意気込みはいかがでしょうか。
末吉 100周年は長い歴史の結果ですが、私にとっては通過点の思いです。とは言っても大きな節目であり、ここで皆様の記憶に残る製品を作りたいと思っています。“ラックスマンらしさ”をより一層見据えながら、今後も頑張って参りますので、ぜひご期待ください。
ーー 新たな歴史の始まりも楽しみですね。ありがとうございました。
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