公開日 2017/10/16 10:47
音数の多さにもしっかりと追従する
AKGの定番ヘッドホンがさらに進化。「K550MKIII」を山之内 正がレビュー
山之内 正
今月AKGから発売された「K550MKIII」。発売から長らく人気を保ち続ける密閉型ヘッドホンが、ケーブル交換対応となってリファインしたモデルだ。メンテナンスが容易になったほか、アップグレードケーブル「C200」にも対応し、従来モデルよりチューニングを突き詰めることも可能となった。
今回当サイトでは、前後編に分けてこのニューモデルのポテンシャルをチェック。前編では「K550MKIII」が備える基礎的な能力を山之内 正氏がレビューする。
■3代目となる密閉型ヘッドホン・リファレンスモデル
AKGの密閉型ヘッドフォンを代表するK550が最新仕様にリファインされ、K550MKIIIとして生まれ変わった。今回のリファインでは基本設計やドライバーユニットを先代から継承しながら着脱式ケーブルを新たに採用し、用途に応じたケーブル長の選択や音質チューニングを視野に入れたケーブル交換に対応。従来から強く望まれていた仕様に進化させることで、ロングセラー機の人気を再加速させる狙いがうかがえる。
K550は初代機以降大口径50mmドライバーを採用し、密閉型ながら閉塞感のない低域の再現を狙ってきた。本機もそのコンセプトを受け継ぎ、インナーハウジングを組み込んだ独自構造のベンチレーション機構による背圧コントロールと組み合わせることで、抜けの良い低音再生にこだわる。
ドライバーこそ大きいが、ハウジングはスリムで軽量。収縮性の高いイヤーパッドを採用することで耳を包み込むような心地よい装着感を実現している。わかりやすいL/R表記やラチェット機構と目盛りを導入したヘッドバンドなど、おなじみの機構に変更はない。
ケーブルコネクターはミニXLRを採用し、オプションで純正リケーブル「C200」も用意する。フラットに収納できる2D-Axis2構造は持ち運びに便利だが、従来機はケーブル断線が心配でラフに扱うことができなかった。今回交換に対応したことで、K550本来の使い勝手の良さが活かせるようになったことを歓迎したい。
ドライバーユニットの口径から重量級モデルと考えがちだが、実際には本体重量は305gしかなく、装着感は軽い。圧力を分散させる工夫が功を奏し、側圧もこのサイズとしては非常に弱く、長時間使い続けてもストレスを感じさせない。プロ用モニターヘッドフォンで培ったノウハウをさり気なく導入していることに好感を持った。
■初代から連綿と受け継ぐサウンドを聴く
再生音は前作「K550MKII」と基本的な方向に変わりはないが、標準ケーブルやコネクターが変更されているので、あらためて音質傾向を紹介しておこう。
周波数バランスは原音に忠実なフラット志向で、ハイファイモデルとして適切なバランスに仕上げている。とはいえダイレクト感重視のモニター志向はそれほど強くなく、リスニングに適した音調に追い込んでいることは明らかだ。多様なジャンルの音源からそれぞれの特徴を積極的に引き出し、聴かせどころを確実に押さえて聴き手を納得させるという志向が感じられる。そうした音調を確実に受け継いでいることに、本機のロングセラーの秘密をうかがうことができる。
アレッサンドロ・ガラッティのピアノトリオ『Wheeler Variations』を再生すると、ドラム、ピアノ、ベースの順に音像の距離が近付き、リズムの構造をかなり積極的に描き出してくることに気付く。耳元に迫るリアリティというと少し言い過ぎになるが、シンバルの抜けの良さと打点の精度の高さが抜きん出ている。ベースが刻むリズムはそこまで前面に出てこないが、E線の低いポジションでもテンションが緩まず、ピチカートの一音一音に芯が感じられる。
密閉型ヘッドフォンのなかには太さや重さで低音感を強調する製品が少なくないが、K550MKIIIはそうした演出とは無縁で、本来の低音の質感を引き出す。筆者もそうだが、床を這うような低音を許容できない人にはぜひ本機をお薦めしたい。ドラムとベースの対比にピアノが隠れてしまうかというけっしてそんなことはなく、和音の進行もなめらかで不自然な凹凸がない。
今回当サイトでは、前後編に分けてこのニューモデルのポテンシャルをチェック。前編では「K550MKIII」が備える基礎的な能力を山之内 正氏がレビューする。
■3代目となる密閉型ヘッドホン・リファレンスモデル
AKGの密閉型ヘッドフォンを代表するK550が最新仕様にリファインされ、K550MKIIIとして生まれ変わった。今回のリファインでは基本設計やドライバーユニットを先代から継承しながら着脱式ケーブルを新たに採用し、用途に応じたケーブル長の選択や音質チューニングを視野に入れたケーブル交換に対応。従来から強く望まれていた仕様に進化させることで、ロングセラー機の人気を再加速させる狙いがうかがえる。
K550は初代機以降大口径50mmドライバーを採用し、密閉型ながら閉塞感のない低域の再現を狙ってきた。本機もそのコンセプトを受け継ぎ、インナーハウジングを組み込んだ独自構造のベンチレーション機構による背圧コントロールと組み合わせることで、抜けの良い低音再生にこだわる。
ドライバーこそ大きいが、ハウジングはスリムで軽量。収縮性の高いイヤーパッドを採用することで耳を包み込むような心地よい装着感を実現している。わかりやすいL/R表記やラチェット機構と目盛りを導入したヘッドバンドなど、おなじみの機構に変更はない。
ケーブルコネクターはミニXLRを採用し、オプションで純正リケーブル「C200」も用意する。フラットに収納できる2D-Axis2構造は持ち運びに便利だが、従来機はケーブル断線が心配でラフに扱うことができなかった。今回交換に対応したことで、K550本来の使い勝手の良さが活かせるようになったことを歓迎したい。
ドライバーユニットの口径から重量級モデルと考えがちだが、実際には本体重量は305gしかなく、装着感は軽い。圧力を分散させる工夫が功を奏し、側圧もこのサイズとしては非常に弱く、長時間使い続けてもストレスを感じさせない。プロ用モニターヘッドフォンで培ったノウハウをさり気なく導入していることに好感を持った。
■初代から連綿と受け継ぐサウンドを聴く
再生音は前作「K550MKII」と基本的な方向に変わりはないが、標準ケーブルやコネクターが変更されているので、あらためて音質傾向を紹介しておこう。
周波数バランスは原音に忠実なフラット志向で、ハイファイモデルとして適切なバランスに仕上げている。とはいえダイレクト感重視のモニター志向はそれほど強くなく、リスニングに適した音調に追い込んでいることは明らかだ。多様なジャンルの音源からそれぞれの特徴を積極的に引き出し、聴かせどころを確実に押さえて聴き手を納得させるという志向が感じられる。そうした音調を確実に受け継いでいることに、本機のロングセラーの秘密をうかがうことができる。
アレッサンドロ・ガラッティのピアノトリオ『Wheeler Variations』を再生すると、ドラム、ピアノ、ベースの順に音像の距離が近付き、リズムの構造をかなり積極的に描き出してくることに気付く。耳元に迫るリアリティというと少し言い過ぎになるが、シンバルの抜けの良さと打点の精度の高さが抜きん出ている。ベースが刻むリズムはそこまで前面に出てこないが、E線の低いポジションでもテンションが緩まず、ピチカートの一音一音に芯が感じられる。
密閉型ヘッドフォンのなかには太さや重さで低音感を強調する製品が少なくないが、K550MKIIIはそうした演出とは無縁で、本来の低音の質感を引き出す。筆者もそうだが、床を這うような低音を許容できない人にはぜひ本機をお薦めしたい。ドラムとベースの対比にピアノが隠れてしまうかというけっしてそんなことはなく、和音の進行もなめらかで不自然な凹凸がない。