公開日 2023/08/22 06:30
5万円未満から3モデルを比較レビュー
初めてのDolby Atmosに最適!エントリークラスの注目AVアンプを徹底チェック
岩井 喬
Dolby Atmosをはじめとするイマーシブサラウンドの認知度が高まり、エントリークラスのAVアンプでも対応モデルが増えてきた。そのスタートラインとしてお薦めできる10〜12万円台の製品から、今回はヤマハ「RX-A2A」、ソニー「STR-AN1000」、デノン「AVR-X2800H」の3製品をチョイス。この3製品はDolby Atmos入門にも最適であり、7chパワーアンプを内蔵し、5.1.2chに対応したものが基本となる。
しかしエントリークラスといっても、上位機譲りのハイレゾ音源再生にも対応した高音質設計であることはもちろん、Bluetooth接続の他、様々なストリーミングサービスも楽しめる機能性の豊かさも兼ね備えたものばかりだ。まさに現在のトレンドであるHDR映像+イマーシブな音楽コンテンツを集中的に楽しむためには必要不可欠なアイテムである。本稿ではその3製品の概要と共に、Dolby Atmos収録ソフトを使ったクオリティチェックを行った。
試聴用レファレンスソフトには、映画・アクション系に『トップガン マーヴェリック』(CH12)、映画・ドラマ系に『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』(CH8)、音楽系にOfficial髭男dismのシングル「Universe」付属BD、『ONLINE LIVE2020 -Arena Travelers-』(Tr2「宿命」)を用いた。
AVENTAGEシリーズのエントリーモデルだが、上位モデル譲りのシャーシを取り入れたことで余裕を持った筐体構造を実現。5番目の脚を設けたアンチレゾナンステクノロジーによって、シャーシ共振を効果的に分散・抑制し、電源トランスの発する僅かな振動も徹底して抑え込むよう、材質と形状、取り付け位置を入念に検討しているという。
独自の回路設計によって安定的な信号伝送を実現するとともに、ハイレゾ領域に至るまでの信号を正確に伝送する7chハイスルーレート・パワーアンプを内蔵している。マルチポイント計測による独自の音場補正「YPAO」を装備。室内の初期反射音を積極的に制御し、左右スピーカーの設置環境の違いによる音質や音場の偏りを補正する「YPAO-R.S.C.」も搭載している。
明瞭感がありソリッドでキレ鮮やかな描写
透明感の高い音場にすっきりと浮かぶシャープな音像感が特徴で、アクション系では飛行機のエンジン音をキレ良く軽やかにまとめてくれる。ソニックブームは密度良く感じられ、爆撃音もアタックをクリアに表現。BGMも分離良く、天井方向の広がりも十分に取っている印象だ。
ドラマ系のセリフは、芯をソリッドにまとめたメリハリ良い描写。ボディの太さは控えめだが、口元のキレ鮮やかな描写によって音離れも良い。BGMは弦楽器のハリが鮮やかで、浮き上がり感、定位も明瞭であり、SEも比較的硬質だ。音楽系はスラップベースや持ち替えたギターの音色など、個々の楽器のニュアンスをキレ良く引き出し、ボーカルもエッジが際立ったソリッドな描写となる。上方向への音の浮き立ちも自然で、イマーシブミックスの醍醐味を味わえる。
ソニーの国内向けAVアンプとしては久々の新製品であり、360 Reality Audioコンテンツもネイティブで楽しめる。独自の音場補正技術「D.C.A.C.?」との組み合わせにより、実使用のものに加え、さらに複数のファントムスピーカーを生成し、より臨場感ある3Dサラウンドが楽しめる「360 Spatial Sound Mapping(360SSM)」も用意。
GNDを含めて低インピーダンス化したリニア広帯域パワーアンプを搭載し、デジタル回路は従来モデルから一新。複数のチップを用いていた音声信号処理をワンチップSoCへまとめ、信号経路長を極限まで短縮したという。DACの次段に設けたバッファアンプにはJ-FETを設けて広帯域化を図るとともに、高精度プリアンプ用チップ「CXD90035」によってハイスルーレートを実現。パーツやハンダまでオリジナル品を投入するなど、伝統の高音質化ノウハウが満載だ。
落ち着いた音調ながら適度な派手さも備える
サウンドは粗さのない落ち着いた音調であり、セリフのボディの厚み、SEの太さも実感する。破裂音などは密度の濃さに加え、倍音の輪郭表現も相まって、適度な派手さも演出。アクション系の飛行機の動きも物体感が伴い、リアルな空間性を味わえるのも特長だ。
ドラマ系はSEやBGMの爽やかさ、ナチュラルな空間への広がりが没入感を生む。セリフの落ち着き感が耳当たり良く、口元の艶ハリも嫌味がなく適度に角が取れているのも好印象だ。音楽系も穏やかな傾向だが、ベースは太く、ギターの弦は艶やかに表現。ボーカルもどっしりと描く。360SSMを使うとメリハリ良く音像が浮き立ち、フォーカス感も向上した。
Amazon Music HDなどのハイレゾストリーミング再生にも対応した、独自のネットワーク・オーディオ・プラットフォーム「HEOSモジュール」を搭載する7.2ch対応AVアンプ。上位モデル同様、サウンドマネージャーがチューニングを行った全ch同一構成のディスクリートアンプを搭載している。
パワーアンプ入力段には上位モデルと同じフィルムコンデンサーを導入。電源トランスはプリ部/パワー部の巻線が独立した、低振動仕様の大型EIコア型を用いる他、専用チューニングの大容量カスタムブロックコンデンサー12000μFを2基備える。音場補正にはAudyssey MultEQ XTが導入されている。
輪郭も鮮明に表現しながら空間表現にも長ける
抑揚良い音像の密度感と自然な輪郭表現が特長で、細やかな音の分離、空間表現にも長けている。アクション系では飛行機のジェットエンジンの太さ、重厚さとともに、自然な移動感も演出。BGMも厚みがあり、セリフも低重心で腰の据わったトーンを聴かせる。ソニックブームや爆破音も量感があり、エッジの効いた高域によって定位感、輪郭も鮮明に表現する。非常に安定傾向なサウンドだ。
ドラマ系は艶ハリの良いセリフの際立ちやSEの自然な浮き上がり感が耳馴染み良く、全体的に滑らかなトーンでまとめている。BGMの重厚感あるストリングスも印象的。音楽系は楽器の際立ちも自然で、空間表現力も高い。キレ良く躍動感のあるリズム隊と、密度の高い明瞭なボーカルがクリアな音場へ立体的に描かれる。コシの太いホーンセクションやギターの音色は独特な色っぽさを持つ。
<取材で使用したレファレンスモデル>
超短焦点プロジェクター XGIMI 「AURA」 ¥329,890(税込)
フロア型スピーカー POLK AUDIO 「Signature Elite ES50」 ¥48,400(税込/1本)
センタースピーカー POLK AUDIO 「Signature Elite ES30」 ¥42,900(税込/1本)
ブックシェルフ型スピーカー POLK AUDIO 「Signature Elite ES15」 ¥46,200(税込/ペ)
ブックシェルフ型スピーカー POLK AUDIO 「Signature Elite ES10」 ¥37,400(税込/ペア)
サブウーファー POLK AUDIO 「Monitor XT12」 49,500円/1本
しかしエントリークラスといっても、上位機譲りのハイレゾ音源再生にも対応した高音質設計であることはもちろん、Bluetooth接続の他、様々なストリーミングサービスも楽しめる機能性の豊かさも兼ね備えたものばかりだ。まさに現在のトレンドであるHDR映像+イマーシブな音楽コンテンツを集中的に楽しむためには必要不可欠なアイテムである。本稿ではその3製品の概要と共に、Dolby Atmos収録ソフトを使ったクオリティチェックを行った。
試聴用レファレンスソフトには、映画・アクション系に『トップガン マーヴェリック』(CH12)、映画・ドラマ系に『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』(CH8)、音楽系にOfficial髭男dismのシングル「Universe」付属BD、『ONLINE LIVE2020 -Arena Travelers-』(Tr2「宿命」)を用いた。
YAMAHA「RX-A2A」
AVENTAGEシリーズのエントリーモデルだが、上位モデル譲りのシャーシを取り入れたことで余裕を持った筐体構造を実現。5番目の脚を設けたアンチレゾナンステクノロジーによって、シャーシ共振を効果的に分散・抑制し、電源トランスの発する僅かな振動も徹底して抑え込むよう、材質と形状、取り付け位置を入念に検討しているという。
独自の回路設計によって安定的な信号伝送を実現するとともに、ハイレゾ領域に至るまでの信号を正確に伝送する7chハイスルーレート・パワーアンプを内蔵している。マルチポイント計測による独自の音場補正「YPAO」を装備。室内の初期反射音を積極的に制御し、左右スピーカーの設置環境の違いによる音質や音場の偏りを補正する「YPAO-R.S.C.」も搭載している。
明瞭感がありソリッドでキレ鮮やかな描写
透明感の高い音場にすっきりと浮かぶシャープな音像感が特徴で、アクション系では飛行機のエンジン音をキレ良く軽やかにまとめてくれる。ソニックブームは密度良く感じられ、爆撃音もアタックをクリアに表現。BGMも分離良く、天井方向の広がりも十分に取っている印象だ。
ドラマ系のセリフは、芯をソリッドにまとめたメリハリ良い描写。ボディの太さは控えめだが、口元のキレ鮮やかな描写によって音離れも良い。BGMは弦楽器のハリが鮮やかで、浮き上がり感、定位も明瞭であり、SEも比較的硬質だ。音楽系はスラップベースや持ち替えたギターの音色など、個々の楽器のニュアンスをキレ良く引き出し、ボーカルもエッジが際立ったソリッドな描写となる。上方向への音の浮き立ちも自然で、イマーシブミックスの醍醐味を味わえる。
SONY「STR-AN1000」
ソニーの国内向けAVアンプとしては久々の新製品であり、360 Reality Audioコンテンツもネイティブで楽しめる。独自の音場補正技術「D.C.A.C.?」との組み合わせにより、実使用のものに加え、さらに複数のファントムスピーカーを生成し、より臨場感ある3Dサラウンドが楽しめる「360 Spatial Sound Mapping(360SSM)」も用意。
GNDを含めて低インピーダンス化したリニア広帯域パワーアンプを搭載し、デジタル回路は従来モデルから一新。複数のチップを用いていた音声信号処理をワンチップSoCへまとめ、信号経路長を極限まで短縮したという。DACの次段に設けたバッファアンプにはJ-FETを設けて広帯域化を図るとともに、高精度プリアンプ用チップ「CXD90035」によってハイスルーレートを実現。パーツやハンダまでオリジナル品を投入するなど、伝統の高音質化ノウハウが満載だ。
落ち着いた音調ながら適度な派手さも備える
サウンドは粗さのない落ち着いた音調であり、セリフのボディの厚み、SEの太さも実感する。破裂音などは密度の濃さに加え、倍音の輪郭表現も相まって、適度な派手さも演出。アクション系の飛行機の動きも物体感が伴い、リアルな空間性を味わえるのも特長だ。
ドラマ系はSEやBGMの爽やかさ、ナチュラルな空間への広がりが没入感を生む。セリフの落ち着き感が耳当たり良く、口元の艶ハリも嫌味がなく適度に角が取れているのも好印象だ。音楽系も穏やかな傾向だが、ベースは太く、ギターの弦は艶やかに表現。ボーカルもどっしりと描く。360SSMを使うとメリハリ良く音像が浮き立ち、フォーカス感も向上した。
DENON「AVR-X2800H」
Amazon Music HDなどのハイレゾストリーミング再生にも対応した、独自のネットワーク・オーディオ・プラットフォーム「HEOSモジュール」を搭載する7.2ch対応AVアンプ。上位モデル同様、サウンドマネージャーがチューニングを行った全ch同一構成のディスクリートアンプを搭載している。
パワーアンプ入力段には上位モデルと同じフィルムコンデンサーを導入。電源トランスはプリ部/パワー部の巻線が独立した、低振動仕様の大型EIコア型を用いる他、専用チューニングの大容量カスタムブロックコンデンサー12000μFを2基備える。音場補正にはAudyssey MultEQ XTが導入されている。
輪郭も鮮明に表現しながら空間表現にも長ける
抑揚良い音像の密度感と自然な輪郭表現が特長で、細やかな音の分離、空間表現にも長けている。アクション系では飛行機のジェットエンジンの太さ、重厚さとともに、自然な移動感も演出。BGMも厚みがあり、セリフも低重心で腰の据わったトーンを聴かせる。ソニックブームや爆破音も量感があり、エッジの効いた高域によって定位感、輪郭も鮮明に表現する。非常に安定傾向なサウンドだ。
ドラマ系は艶ハリの良いセリフの際立ちやSEの自然な浮き上がり感が耳馴染み良く、全体的に滑らかなトーンでまとめている。BGMの重厚感あるストリングスも印象的。音楽系は楽器の際立ちも自然で、空間表現力も高い。キレ良く躍動感のあるリズム隊と、密度の高い明瞭なボーカルがクリアな音場へ立体的に描かれる。コシの太いホーンセクションやギターの音色は独特な色っぽさを持つ。
<取材で使用したレファレンスモデル>
超短焦点プロジェクター XGIMI 「AURA」 ¥329,890(税込)
フロア型スピーカー POLK AUDIO 「Signature Elite ES50」 ¥48,400(税込/1本)
センタースピーカー POLK AUDIO 「Signature Elite ES30」 ¥42,900(税込/1本)
ブックシェルフ型スピーカー POLK AUDIO 「Signature Elite ES15」 ¥46,200(税込/ペ)
ブックシェルフ型スピーカー POLK AUDIO 「Signature Elite ES10」 ¥37,400(税込/ペア)
サブウーファー POLK AUDIO 「Monitor XT12」 49,500円/1本
- トピック
- AVアンプ