公開日 2023/10/05 06:40
【特別企画】デンマーク・DALIの人気の秘密を探る(3)
DALIのブックシェルフスピーカー4モデル集結! それぞれの得意なジャンルや音の魅力を検証
土方久明
日本でも人気のスピーカーブランド、デンマーク発DALI(ダリ)の魅力を紹介する企画。第3弾では、前回紹介したOPTICON(オプティコン)1 MK2を含む同社を代表するブックシェルフ型4モデルを集め、それぞれの音の魅力を紹介しつつ、どんな音楽にマッチするのか?を検証。すべてホワイト色で統一された今回の試聴モデル。そのなかで、ダリのスピーカーに関しての新境地を探っていくことにしよう。
オーディオ機器の高価格化が進んでいる昨今だが、市場に安価で質の良いものはないのかといえば、決してそんなことはないだろう。特に今どきのスピーカーにはお薦めしたいモデルが多い。
そんななかで、今回はコストパフォーマンスと音楽性の高さで評価されているデンマークのスピーカーブランド、DALIを代表するスタンダードな2ウェイのブックシェルフ・スピーカーの4モデルを試聴する。
DALIの設立は1983年。以後はご存知のスピーカーブランドとしての地位を確立してきたのだが、そのラインアップは非常に多彩だ。最上位シリーズとなる「EPICON」からエントリーモデルの「SPEKTOR」まで実に6シリーズを揃える。その一方で小型のBluetoothスピーカーやヘッドフォンなど、パッシブスピーカー以外のラインアップも充実している。そして創業40周年を迎える今年は、記念碑的な素晴らしい弩級モデル「KORE」を発売した。読者の方の中にも、DALIのスピーカーの音を一度は体験された方も多いのではないだろうか。
そんななかで、今回試聴した4モデルのスピーカーは、いずれもトゥイーターの振動板にソフトドームを採用。ウーファーは木の繊維(ウッドファイバー)と微粒子パルプを混ぜて振動板を作ったウッドファイバーコーンを搭載し、バスレフ方式を採用していることなど、基本構成は似ているのだが、やはりそれぞれの音質には異なる魅力がある。
そこで、今回のレビューではグレードの音質差はもちろんのこと、さらに得意な音楽ジャンルやどのような方に向いているのかなどもチェックした。
なおスピーカーセッティングについては小型のキャビネットサイズを考慮し、トゥイーターのセンターを基準に左右の間隔を約1.6mとして、軽く内ぶりにしている。
まずは最もリーズナブルな「SPEKTOR1」から試聴しよう。横幅は14cmで写真で見るより実物はコンパクトだ。ユニット構成は超軽量のシルク繊維をベースにした21mmのトゥイーターと、シリーズ用に専用設計された新型の115mm口径のウーファーを搭載する。手軽なアンプで駆動しやすいというコンセプトも備える。
サイズを感じさせない本格的なサウンドが魅力だ。サウンドキャラクターとしては、音楽性を下支えするような温度感があり、低音の量感もサイズ以上のため重心が高域寄りにならずバランスが良い。サービスエリア(良い音がする角度)が広く、小音量でも音が痩せないこともポイント。小型なのであまりにも大音量聴くタイプではないが、ダイアナ・パントンや石川紅奈などの女性ヴォーカルとの相性も良かった。
「SPEKTOR1」はコンパクトなエンクロージャーを生かして、話題のデスクトップオーディオや、部屋の出窓などのちょっとした空間に設置したりできるし、昔使っていたミニコンポのスピーカーを本機に変えてグレードアップするなどしたら、かなり楽しめそうだ。
ピュアオーディオの入門モデルとして高い評価を得ている定番モデル。29mmソフト・ドームトゥイーターとDALIの特許技術であるSMCテクノロジーを採用した130mmウッドファイバーコーンのウーファーを搭載する。
サウンドキャラクターは、試聴した4モデルの中で最も明るい音。若干、中〜高音域の密度が欲しい気もするが、その分解像感に優れている。「SPEKTOR1」よりひと回り以上大きくなったキャビネットのため、口径の大きいユニットの装着を可能にしたことで、音質アップに貢献している。
チョ・ソンジンはアーティストの凄みがより表現できるようになった。ダイアナ・パントンの艶やかなヴォーカルも印象的だ。ローレンジは無理に伸ばすようなことをしないでリアリティの追求に向けている印象で、石川紅奈のベースはキレがある。また4モデル中最も音が前に飛び出してくるので、チャーリー・プースなどのシンセサイザーを使う現代ポップスとの相性も良い。
本格的なオーディオに興味のある多くの方はもちろん、ヘッドフォンユーザーがスピーカー再生にチャレンジする最初の1台としてもお薦めできる。
モデル名の末尾の「MK2」の通り、第2世代となるモデル。価格的にはミドルクラスに入ってくる。前モデルから大口径化された29mmトゥイーターとウッドファイバーコーンウーファーを搭載して磁気回路も新規設計、さらにクロスオーバーネットワークもハイグレード化されている。
サウンドキャラクターは4モデルのうち、最も自然な質感を持つことが印象的。カタログのスペックでは大差ないが、聴感上、高〜低音域のレンジがもっとも広く、音楽表現に余裕を生む。石川紅奈の弾くベースの迫力は本日ナンバー1。素直な音色なのでヴォーカルや主旋律を執る楽器の質感が伝わりやすい。音楽を馴染み良く表現するタイプのスピーカーなので、ベテランオーディオファイルやハイエンドモデルを使っている方のセカンドシステムとしても重宝されそうだ。
「MENUET」は、1992年に初代MENUET(DALI150MENUET)が登場してから4世代目にあたる。本試聴の中では最上位モデルであり、一聴してオーディオ的な再生能力の高さに感心する。高域の質感とスピード感が素晴らしく、低域は適度なfレンジを伸ばす余裕を感じる。シリーズを通じて感じる密度の高さや優れた音楽性は当然持ち合わせている。
石川紅奈のベースの音量は多すぎず少なすぎず適切だが、低域のレンジはより広い。小レベルの音が明瞭なので、チョ・ソンジンのピアノタッチのディテールや余韻などの分解能が上がり、音数も増えて聞こえる。キャビネットの美しいピアノフィニッシュにより1つ上の高級感を付与してくれる。
ブックシェルフ・スピーカーという使い勝手の良さを活かしつつも、1歩上のハイファイ再生と音楽性を目指す本気のオーディオファイルに自信を持って進めたい。購入後の満足感も高いと判断している。
また今回はスタンダードなブックシェルフ型スピーカーを中心にレビューしたが、 DALIではコンパクトで壁やデスクトップに設置しやすい「FAZON/MIKRO」や「FAZON/SAT」などユニークかつ音の良いスピーカーもラインアップしている。ぜひ注目していただきたい。
(提供:ディーアンドエムホールディングス)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.190』からの転載です
DALIを代表するスタンダードな2ウェイのブックシェルフ型の魅力
オーディオ機器の高価格化が進んでいる昨今だが、市場に安価で質の良いものはないのかといえば、決してそんなことはないだろう。特に今どきのスピーカーにはお薦めしたいモデルが多い。
そんななかで、今回はコストパフォーマンスと音楽性の高さで評価されているデンマークのスピーカーブランド、DALIを代表するスタンダードな2ウェイのブックシェルフ・スピーカーの4モデルを試聴する。
DALIの設立は1983年。以後はご存知のスピーカーブランドとしての地位を確立してきたのだが、そのラインアップは非常に多彩だ。最上位シリーズとなる「EPICON」からエントリーモデルの「SPEKTOR」まで実に6シリーズを揃える。その一方で小型のBluetoothスピーカーやヘッドフォンなど、パッシブスピーカー以外のラインアップも充実している。そして創業40周年を迎える今年は、記念碑的な素晴らしい弩級モデル「KORE」を発売した。読者の方の中にも、DALIのスピーカーの音を一度は体験された方も多いのではないだろうか。
得意な音楽ジャンルは?どんな方に向いているか?
そんななかで、今回試聴した4モデルのスピーカーは、いずれもトゥイーターの振動板にソフトドームを採用。ウーファーは木の繊維(ウッドファイバー)と微粒子パルプを混ぜて振動板を作ったウッドファイバーコーンを搭載し、バスレフ方式を採用していることなど、基本構成は似ているのだが、やはりそれぞれの音質には異なる魅力がある。
そこで、今回のレビューではグレードの音質差はもちろんのこと、さらに得意な音楽ジャンルやどのような方に向いているのかなどもチェックした。
なおスピーカーセッティングについては小型のキャビネットサイズを考慮し、トゥイーターのセンターを基準に左右の間隔を約1.6mとして、軽く内ぶりにしている。
「SPEKTOR 1」:サイズ以上の重厚なサウンド、小音量でも音が痩せない
まずは最もリーズナブルな「SPEKTOR1」から試聴しよう。横幅は14cmで写真で見るより実物はコンパクトだ。ユニット構成は超軽量のシルク繊維をベースにした21mmのトゥイーターと、シリーズ用に専用設計された新型の115mm口径のウーファーを搭載する。手軽なアンプで駆動しやすいというコンセプトも備える。
サイズを感じさせない本格的なサウンドが魅力だ。サウンドキャラクターとしては、音楽性を下支えするような温度感があり、低音の量感もサイズ以上のため重心が高域寄りにならずバランスが良い。サービスエリア(良い音がする角度)が広く、小音量でも音が痩せないこともポイント。小型なのであまりにも大音量聴くタイプではないが、ダイアナ・パントンや石川紅奈などの女性ヴォーカルとの相性も良かった。
「SPEKTOR1」はコンパクトなエンクロージャーを生かして、話題のデスクトップオーディオや、部屋の出窓などのちょっとした空間に設置したりできるし、昔使っていたミニコンポのスピーカーを本機に変えてグレードアップするなどしたら、かなり楽しめそうだ。
「OBERON 1」:最も明瞭で解像感に優れた音質で、現代ポップスとも好相性
ピュアオーディオの入門モデルとして高い評価を得ている定番モデル。29mmソフト・ドームトゥイーターとDALIの特許技術であるSMCテクノロジーを採用した130mmウッドファイバーコーンのウーファーを搭載する。
サウンドキャラクターは、試聴した4モデルの中で最も明るい音。若干、中〜高音域の密度が欲しい気もするが、その分解像感に優れている。「SPEKTOR1」よりひと回り以上大きくなったキャビネットのため、口径の大きいユニットの装着を可能にしたことで、音質アップに貢献している。
チョ・ソンジンはアーティストの凄みがより表現できるようになった。ダイアナ・パントンの艶やかなヴォーカルも印象的だ。ローレンジは無理に伸ばすようなことをしないでリアリティの追求に向けている印象で、石川紅奈のベースはキレがある。また4モデル中最も音が前に飛び出してくるので、チャーリー・プースなどのシンセサイザーを使う現代ポップスとの相性も良い。
本格的なオーディオに興味のある多くの方はもちろん、ヘッドフォンユーザーがスピーカー再生にチャレンジする最初の1台としてもお薦めできる。
「OPTICON 1 MK2」:自然な質感が印象的で、ヴォーカルや楽器の質感がよく伝わる
モデル名の末尾の「MK2」の通り、第2世代となるモデル。価格的にはミドルクラスに入ってくる。前モデルから大口径化された29mmトゥイーターとウッドファイバーコーンウーファーを搭載して磁気回路も新規設計、さらにクロスオーバーネットワークもハイグレード化されている。
サウンドキャラクターは4モデルのうち、最も自然な質感を持つことが印象的。カタログのスペックでは大差ないが、聴感上、高〜低音域のレンジがもっとも広く、音楽表現に余裕を生む。石川紅奈の弾くベースの迫力は本日ナンバー1。素直な音色なのでヴォーカルや主旋律を執る楽器の質感が伝わりやすい。音楽を馴染み良く表現するタイプのスピーカーなので、ベテランオーディオファイルやハイエンドモデルを使っている方のセカンドシステムとしても重宝されそうだ。
「MENUET」:本格オーディオファンに推奨したい使い勝手の良さと優れた音楽性
「MENUET」は、1992年に初代MENUET(DALI150MENUET)が登場してから4世代目にあたる。本試聴の中では最上位モデルであり、一聴してオーディオ的な再生能力の高さに感心する。高域の質感とスピード感が素晴らしく、低域は適度なfレンジを伸ばす余裕を感じる。シリーズを通じて感じる密度の高さや優れた音楽性は当然持ち合わせている。
石川紅奈のベースの音量は多すぎず少なすぎず適切だが、低域のレンジはより広い。小レベルの音が明瞭なので、チョ・ソンジンのピアノタッチのディテールや余韻などの分解能が上がり、音数も増えて聞こえる。キャビネットの美しいピアノフィニッシュにより1つ上の高級感を付与してくれる。
ブックシェルフ・スピーカーという使い勝手の良さを活かしつつも、1歩上のハイファイ再生と音楽性を目指す本気のオーディオファイルに自信を持って進めたい。購入後の満足感も高いと判断している。
また今回はスタンダードなブックシェルフ型スピーカーを中心にレビューしたが、 DALIではコンパクトで壁やデスクトップに設置しやすい「FAZON/MIKRO」や「FAZON/SAT」などユニークかつ音の良いスピーカーもラインアップしている。ぜひ注目していただきたい。
(提供:ディーアンドエムホールディングス)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.190』からの転載です