公開日 2023/12/23 07:00
【特別企画】デンマーク・DALIの人気の秘密を探る(4)
DALIのエッセンスが凝縮されたスタンダードクラス4スピーカーを検証!
土方久明
日本でも人気のスピーカーブランド、デンマーク発DALIの魅力を紹介する企画。第4弾である今回は、ダリの最もスタンダードな2つのラインである「FAZONシリーズ」と「SPEKTORシリーズ」を検証。コンパクトにシアターシステムを組むこともできる両シリーズのなかからデスクトップオーディオにも最適な3つのスピーカーと、コンパクトなフロア型モデル「SPEKTOR6」を試聴モデルにセレクト。スタンダードクラスでも決して手を抜くことなく、ダリのエッセンスが凝縮された実力機を検証しよう。
オーディオの価格が上がっているように感じる昨今だが、2023年のスピーカーシーンはコストパフォーマンスが高いモデルが揃っていた。その代表格といえば1983年に設立されたデンマークのオーディオブランドDALIを想像する方は多いはず。
今年は創業40周年を記念する弩級スピーカー「KORE」と、これからのDALIの方向性を明示する「EPIKOREII」という上位モデルを発表した。また、EPICON、RUBICON、OPTICON Mk2、OBERON、MENUETという多彩なシリーズ展開もDALIの魅力である。
そんななかで今回は、さらにこれよりもリーズナブルな価格帯となる「FAZON」と「SPEKTOR」という2つのシリーズのなかから4モデルのスピーカーに関してクオリティチェックを行った。
試聴ソースはCD、ハイレゾ、アナログ、ジャンルはジャズ、女性ヴォーカル、クラシック、ポップスからを1曲ずつ選択した。また、これらのスピーカーに組み合わせたシステムには“現実に近い環境“を意識して、実売価格10万円前後のアンプ内蔵CD/ネットワークレシーバーであるDENON「RCD-N12」を選んだ。
試聴したモデルに共通するのは、トゥイーターにソフトドーム、ウーファーには木繊維(ウッドファイバー)と微粒子パルプを混ぜた振動板を採用していること。そしてFAZON SAT以外はバスレフ方式を採用している。セッティングはトゥイーターのセンターを基準に左右の間隔を約1.5mとして軽く内ぶりにした。
「FAZON SAT」は、DALIには珍しい密閉型かつアルミダイキャスト製のエンクロージャーを採用した小型の2ウェイスピーカー。キャビネットは美しい光沢ラッカー仕上げで美しく、トゥイーターは28mm、ウーファーは110mmとなる。
音色を決めているのは透明感がある高〜中音域で、ディテールはシャープだ。メロディ・ガルドーのピアノは美しい響きと浸透力を感じ、ヴォーカルの肉付きは細めだがリアル。リー・モーガンのトランペットは音離れが良い。音にスピード感がありテイラー・スイフトなど現代のポップスとは相性が抜群に良い。クラシックの久石譲は洗練された音で、アコースティック楽器の質感にはふくよかさを感じるものの分解能が高く楽器の音がリアルで、美しい湖を見ながら音楽を聴いているような気持ちになる。
デザインの良さを活かしたオーディオ向けの本格的な2チャンネル再生から、付属のテーブルスタンドを利用してのデスクトップ/リビングオーディオ環境、さらにホームシアター用途にも使用できるなど応用範囲も広い。
「SPEKTOR1」は最エントリーラインに属すシリーズだ。ラインナップはブックシェルフ、フロア型のビジュアル用途のセンタースピーカーと幅広い。トゥイーターは21mmで、ウーファーは115mmのスタンダードな2ウェイ構成。横幅は140mmとかなりコンパクト。しかし音のディテールをしっかりと出してくるし、音楽的な完成度は高い。
わずかな箱鳴りを伴っているが上手にコントロールされており、ヴォーカルはふくよかで中音域がしっかり表現されているし、センターにしっかりと音像が定位する。クラシックの弦楽器の色艶の良さはDALIの真骨頂で、空気感も出している。そして特にジャズとは相性が良かった。音がへばり付かず、しっかりと前へ出てくるし、ソフトドームながらトランペットの金属的な質感の印象が良い。
続いて標準的なサイズの2ウェイ・ブックシェルフスピーカー「SPEKTOR2」を試す。キャビネットの横幅が282mmとひと回り以上大きくなり容積に余裕が生まれたことや、ウーファーが130mmと大きくなるので、低域に迫力が出る。
久石譲はオーケストラのスケールとオーケストラを構成する各楽器の分解能が高く、リー・モーガンのトランペットのディテールや質感表現がよりリアルになるし、ボブ・クランショウのベースは迫力が出てくる。コストを最小限にオーディオの醍醐味である音質向上効果を楽しむなら、このスピーカーを薦めたい。
「SPEKTOR6」はシリーズ中唯一のフロアスタンディングタイプのスピーカーだ。余裕あるキャビネットサイズと3ウェイ構成により、絶対的な分解能と低域表現はエントリーシリーズとは思えないほど。ナチュラルな音、つまり表現力に無理がなくなるのだ。
メロディ・ガルドーのピアノのアコースティック表現は本試聴でも最上級だったし、大型スピーカーだが音像が大きくなることもないので、久石譲はサウンドステージが広大だ。リー・モーガンは音数が多く、トランペットの連続するフレーズが良く表現されている。テイラー・スイフトなど現代の楽曲はfレンジが広いため、大型スピーカーで聴くとよりアーティストの世界観がわかってくる。
ある程度予想はしていたものの、各モデルとも価格以上の表現力だ。上位シリーズが持つ音楽表現および音色のエッセンスが、「FAZON」と「SPEKTOR」からも聴こえてくることは特筆点。エントリーモデルのスピーカーの何が良いかといえば、多くのブランドが自社のスピーカーの良さを知ってもらおうと、コストを超えるような物量を投入し、上位モデルから技術をスライド投入していることだが、そこはコストパフォーマンスの高さで知られるDALIだけあり、自社が持つ技術と音の感性を惜しげもなく投入したことが出音からはっきりと伝わってきた。大変意義のあるテストとなったことをご報告したい。
(提供:ディーアンドエムホールディングス)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.191』からの転載です
話題の一体型レシーバーでリーズナブルな4製品を比較
オーディオの価格が上がっているように感じる昨今だが、2023年のスピーカーシーンはコストパフォーマンスが高いモデルが揃っていた。その代表格といえば1983年に設立されたデンマークのオーディオブランドDALIを想像する方は多いはず。
今年は創業40周年を記念する弩級スピーカー「KORE」と、これからのDALIの方向性を明示する「EPIKOREII」という上位モデルを発表した。また、EPICON、RUBICON、OPTICON Mk2、OBERON、MENUETという多彩なシリーズ展開もDALIの魅力である。
そんななかで今回は、さらにこれよりもリーズナブルな価格帯となる「FAZON」と「SPEKTOR」という2つのシリーズのなかから4モデルのスピーカーに関してクオリティチェックを行った。
試聴ソースはCD、ハイレゾ、アナログ、ジャンルはジャズ、女性ヴォーカル、クラシック、ポップスからを1曲ずつ選択した。また、これらのスピーカーに組み合わせたシステムには“現実に近い環境“を意識して、実売価格10万円前後のアンプ内蔵CD/ネットワークレシーバーであるDENON「RCD-N12」を選んだ。
試聴したモデルに共通するのは、トゥイーターにソフトドーム、ウーファーには木繊維(ウッドファイバー)と微粒子パルプを混ぜた振動板を採用していること。そしてFAZON SAT以外はバスレフ方式を採用している。セッティングはトゥイーターのセンターを基準に左右の間隔を約1.5mとして軽く内ぶりにした。
「FAZON SAT」 :透明感がある高〜中音域、現代ポップスと相性抜群
「FAZON SAT」は、DALIには珍しい密閉型かつアルミダイキャスト製のエンクロージャーを採用した小型の2ウェイスピーカー。キャビネットは美しい光沢ラッカー仕上げで美しく、トゥイーターは28mm、ウーファーは110mmとなる。
音色を決めているのは透明感がある高〜中音域で、ディテールはシャープだ。メロディ・ガルドーのピアノは美しい響きと浸透力を感じ、ヴォーカルの肉付きは細めだがリアル。リー・モーガンのトランペットは音離れが良い。音にスピード感がありテイラー・スイフトなど現代のポップスとは相性が抜群に良い。クラシックの久石譲は洗練された音で、アコースティック楽器の質感にはふくよかさを感じるものの分解能が高く楽器の音がリアルで、美しい湖を見ながら音楽を聴いているような気持ちになる。
デザインの良さを活かしたオーディオ向けの本格的な2チャンネル再生から、付属のテーブルスタンドを利用してのデスクトップ/リビングオーディオ環境、さらにホームシアター用途にも使用できるなど応用範囲も広い。
「SPEKTOR1」 :小型ながら完成度が高い、弦の色艶の良さは真骨頂
「SPEKTOR1」は最エントリーラインに属すシリーズだ。ラインナップはブックシェルフ、フロア型のビジュアル用途のセンタースピーカーと幅広い。トゥイーターは21mmで、ウーファーは115mmのスタンダードな2ウェイ構成。横幅は140mmとかなりコンパクト。しかし音のディテールをしっかりと出してくるし、音楽的な完成度は高い。
わずかな箱鳴りを伴っているが上手にコントロールされており、ヴォーカルはふくよかで中音域がしっかり表現されているし、センターにしっかりと音像が定位する。クラシックの弦楽器の色艶の良さはDALIの真骨頂で、空気感も出している。そして特にジャズとは相性が良かった。音がへばり付かず、しっかりと前へ出てくるし、ソフトドームながらトランペットの金属的な質感の印象が良い。
「SPEKTOR2」 :最小限のコストのなかで 醍醐味が味わえるモデル
続いて標準的なサイズの2ウェイ・ブックシェルフスピーカー「SPEKTOR2」を試す。キャビネットの横幅が282mmとひと回り以上大きくなり容積に余裕が生まれたことや、ウーファーが130mmと大きくなるので、低域に迫力が出る。
久石譲はオーケストラのスケールとオーケストラを構成する各楽器の分解能が高く、リー・モーガンのトランペットのディテールや質感表現がよりリアルになるし、ボブ・クランショウのベースは迫力が出てくる。コストを最小限にオーディオの醍醐味である音質向上効果を楽しむなら、このスピーカーを薦めたい。
「SPEKTOR6」 :エントリーとは思えない絶対的な分解能と低域表現
「SPEKTOR6」はシリーズ中唯一のフロアスタンディングタイプのスピーカーだ。余裕あるキャビネットサイズと3ウェイ構成により、絶対的な分解能と低域表現はエントリーシリーズとは思えないほど。ナチュラルな音、つまり表現力に無理がなくなるのだ。
メロディ・ガルドーのピアノのアコースティック表現は本試聴でも最上級だったし、大型スピーカーだが音像が大きくなることもないので、久石譲はサウンドステージが広大だ。リー・モーガンは音数が多く、トランペットの連続するフレーズが良く表現されている。テイラー・スイフトなど現代の楽曲はfレンジが広いため、大型スピーカーで聴くとよりアーティストの世界観がわかってくる。
技術と感性を惜しげもなく投入した価格以上の表現力
ある程度予想はしていたものの、各モデルとも価格以上の表現力だ。上位シリーズが持つ音楽表現および音色のエッセンスが、「FAZON」と「SPEKTOR」からも聴こえてくることは特筆点。エントリーモデルのスピーカーの何が良いかといえば、多くのブランドが自社のスピーカーの良さを知ってもらおうと、コストを超えるような物量を投入し、上位モデルから技術をスライド投入していることだが、そこはコストパフォーマンスの高さで知られるDALIだけあり、自社が持つ技術と音の感性を惜しげもなく投入したことが出音からはっきりと伝わってきた。大変意義のあるテストとなったことをご報告したい。
(提供:ディーアンドエムホールディングス)
本記事は『季刊・Audio Accessory vol.191』からの転載です