公開日 2016/12/08 12:30
音楽配信サイト「GIGA MUSIC」にて、名門・日本コロムビアが擁する選りすぐりの未ハイレゾ化音源が、続々とハイレゾで登場している。しかも独占先行配信。既に様々なアーティストの音源が配信中で、今後も多彩なラインナップが予定されている。
Phile-webではこのハイレゾ音源を連続レビューする企画を展開している。リリース当時のエピソードや、ハイレゾになったからこそ注目したい聴きどころをたっぷりとご紹介したい。
エッセンシャル・ベスト 布施 明 布施 明
96kHz/24bit FLAC
[ 購入ページはこちら ]
唯一無比の美声と端正な容姿を兼ね備えた歌手・布施 明
GIGA MUSICからハイレゾ配信の始まった「エッセンシャル・ベスト 布施 明」を聴いて熱いものが込み上げてきた。忘れていた大事なものに気付いた感じ。美しい声でけれん味なく朗々と奏でられる全ての人間への贈り物とさえ思いたくなる歌の数々。端正なたたずまいのこうした歌が現代の日本でいつのまにか聞かれなくなった。
布施 明がデビューした時(1966年)、筆者は少年というより子供だったが、レコード店頭に貼られたこの新人歌手のポスターを陶然と見つめたことを覚えている。笑顔の似合う甘いフェイスは、日本よりイタリアや南仏の青空の下に佇んでいる方が似合いそうだ。それまでの醤油味の歌謡曲歌手と違う陽性の美貌の生まれながらのプリンス。まぶしいオーラを発散していた。僕がどれだけ努力してもこの人のようになれない。ああ、世界はなんて不平等なんだ! 人生で初めて味わう羨望と絶望の入り交じったほろ苦い気持ちだった。
彼の歌を聴いてもう一度ノックアウト。単にルックスがいい歌手ではなかった! 倍音が何オクターブも乗った明るく張りのある美声。ブレスが長く声量豊かで、バラードを演歌のこぶしでなく声楽のカンタービレで朗々とドラマティックに歌い上げる本格派。歌手のスケールという点でも布施 明は「桁外れ」だった。
愛をストレートに歌うことが歌謡曲は苦手だ。日本人の羞恥心なのかウェットな風土なのか、愛イコールセックスでジメジメと四畳半的に湿っぽくなりやすい。布施 明は違った。男女の愛を衒いなく胸を張って品格豊かに熱く歌い上げる。セクシーだが健康的な人間讃歌。声質や発声に止まらず、歌のマインドという一番大事な点で日本を代表する(歌謡曲歌手にして)ポピュラー歌手だ。その点も規格外。
若くして数々のヒット曲を連発、「シクラメンのかほり」で日本レコード大賞始め音楽賞を総なめにして頂上に立った後に渡米、ブロードウェイミュージカルに出演もしたが、期待された程成功はしなかった。フリオ・イグレシアスのような国境を越えたスーパースターになれなかった。
実力は申し分なかったが正統派歌手過ぎた。「日本人離れ」「インターナショナル性」がアメリカでは「無国籍」「無個性」に変わり埋没したのかも。でも、だからどうだというのだ。「日本一のポピュラー歌手」でいいではないか。名だたるプロ作曲家が彼のために心を込めて書き下ろした日本語オリジナル曲を大切に歌ってほしい。それが出来るのが布施 明だ。
今回GIGA MUSICから96kHz/24bitで配信開始される「エッセンシャル・ベスト 布施 明」は、日本コロムビア時代の1985年〜87年にリリースされた名曲の数々をメインに再録した2007年の好盤。ハイレゾが唯一無比の輝く声をどう奏でてくれるか、興味が尽きない。
連続企画:日本コロムビアのハイレゾ音源レビュー
GIGA MUSIC独占先行配信!「エッセンシャル・ベスト 布施 明」不変のビューティフルボイスをハイレゾで聴く
大橋伸太郎音楽配信サイト「GIGA MUSIC」にて、名門・日本コロムビアが擁する選りすぐりの未ハイレゾ化音源が、続々とハイレゾで登場している。しかも独占先行配信。既に様々なアーティストの音源が配信中で、今後も多彩なラインナップが予定されている。
Phile-webではこのハイレゾ音源を連続レビューする企画を展開している。リリース当時のエピソードや、ハイレゾになったからこそ注目したい聴きどころをたっぷりとご紹介したい。
エッセンシャル・ベスト 布施 明 布施 明
96kHz/24bit FLAC
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唯一無比の美声と端正な容姿を兼ね備えた歌手・布施 明
GIGA MUSICからハイレゾ配信の始まった「エッセンシャル・ベスト 布施 明」を聴いて熱いものが込み上げてきた。忘れていた大事なものに気付いた感じ。美しい声でけれん味なく朗々と奏でられる全ての人間への贈り物とさえ思いたくなる歌の数々。端正なたたずまいのこうした歌が現代の日本でいつのまにか聞かれなくなった。
布施 明がデビューした時(1966年)、筆者は少年というより子供だったが、レコード店頭に貼られたこの新人歌手のポスターを陶然と見つめたことを覚えている。笑顔の似合う甘いフェイスは、日本よりイタリアや南仏の青空の下に佇んでいる方が似合いそうだ。それまでの醤油味の歌謡曲歌手と違う陽性の美貌の生まれながらのプリンス。まぶしいオーラを発散していた。僕がどれだけ努力してもこの人のようになれない。ああ、世界はなんて不平等なんだ! 人生で初めて味わう羨望と絶望の入り交じったほろ苦い気持ちだった。
彼の歌を聴いてもう一度ノックアウト。単にルックスがいい歌手ではなかった! 倍音が何オクターブも乗った明るく張りのある美声。ブレスが長く声量豊かで、バラードを演歌のこぶしでなく声楽のカンタービレで朗々とドラマティックに歌い上げる本格派。歌手のスケールという点でも布施 明は「桁外れ」だった。
愛をストレートに歌うことが歌謡曲は苦手だ。日本人の羞恥心なのかウェットな風土なのか、愛イコールセックスでジメジメと四畳半的に湿っぽくなりやすい。布施 明は違った。男女の愛を衒いなく胸を張って品格豊かに熱く歌い上げる。セクシーだが健康的な人間讃歌。声質や発声に止まらず、歌のマインドという一番大事な点で日本を代表する(歌謡曲歌手にして)ポピュラー歌手だ。その点も規格外。
若くして数々のヒット曲を連発、「シクラメンのかほり」で日本レコード大賞始め音楽賞を総なめにして頂上に立った後に渡米、ブロードウェイミュージカルに出演もしたが、期待された程成功はしなかった。フリオ・イグレシアスのような国境を越えたスーパースターになれなかった。
実力は申し分なかったが正統派歌手過ぎた。「日本人離れ」「インターナショナル性」がアメリカでは「無国籍」「無個性」に変わり埋没したのかも。でも、だからどうだというのだ。「日本一のポピュラー歌手」でいいではないか。名だたるプロ作曲家が彼のために心を込めて書き下ろした日本語オリジナル曲を大切に歌ってほしい。それが出来るのが布施 明だ。
今回GIGA MUSICから96kHz/24bitで配信開始される「エッセンシャル・ベスト 布施 明」は、日本コロムビア時代の1985年〜87年にリリースされた名曲の数々をメインに再録した2007年の好盤。ハイレゾが唯一無比の輝く声をどう奏でてくれるか、興味が尽きない。
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