【特別企画】実録:ネットオーディオガチ鼎談
高級オーディオNAS “fidata”「HFAS1」開発の裏側に迫る!アイ・オー&土方久明が本音でNAS談義
■ゼロからのスタート。音質と性能を両立し、オーディファンに認められるNASを作る
土方: そもそも、PC周辺機器メーカーであるアイ・オー・データ機器が、ハイエンドオーディオ向けとしてNASの音質に意識を持ったきっかけは何だったんでしょうか?
北村: ハイレゾ音源の登場で「オーディオ向けのNAS」にニーズがありそうだから取り組んでみようと思ったことが発端です。しかし、アイ・オー・データ機器ではHi-Fi製品を手掛けた経験は全く無いので、ゼロからのスタートでした。製品設計・開発に進む以前に、「そもそも現存のNASで何ができるのか?」を調査する社内プロジェクトを発足させるところから始めたんです。「まずNASを動かして音を聴いてみよう」という、本当に基本的なスタートです(笑)。そうして開発陣で色々なことを試していくうちに、NASの繋ぎ方や置き方、製品によって音に違いが出てくることを実感することになりました。
土方: しかし、なぜいきなりここまでレベルの高いハイエンドなNASを出そうとしたんですか? 音質でも性能面でも。
北村: NASによって音が変わるということがわかったと同時に、生半可な製品ではオーディオファンに受け入れられないと考えたからです。
開口: 「良い音」と「オーディオ的な利便性」を両立しなければ、オーディオ製品として多くのユーザーさんに認めてもらえないですしね。
土方: 言葉で言うと簡単ですが、それを製品として実現するのは本当にすごいことだと思います。具体的にはどういう風に開発を進めていったんですか?
北村: この分野の開発に関しては全く知識がない状態だったので、まずは現行のオーディオ製品をたくさん見て聴かせて頂いて、オーディオ機器としてこだわるポイントを探っていった感じでした。
土方: オーディオ機器としての面と、普通のNASとしての面があるわけですよね? それぞれをゼロから開発していったんですか?
北村: 実は、いわゆる通常のNASとしての機能的な回路構成のベースは、既に展開しているPC用のNAS「HDL2-A」とほぼ一緒なんです。つまり、元々アイ・オー・データ機器が持っているNASとしての基本技術は従来のシステムを応用して、あとは開発期間のほとんどを音質対策にかけたという形ですね。
土方: なるほど! 僕はエンジニア出身なのですが、システム開発に携わる者としても、PC周辺機器メーカーとしてのアイ・オー・データさんに信頼を置いています。そういった、既に定評のある技術をそのまま投入しているのは素晴らしいですね。では、その時間をかけた音質面の開発について、どのように行われたのか聞かせて下さい。