【特別企画】実録:ネットオーディオガチ鼎談
高級オーディオNAS “fidata”「HFAS1」開発の裏側に迫る!アイ・オー&土方久明が本音でNAS談義
■「NASで音が変わるわけない」から、アイ・オー・データ機器全社でfidata開発を応援するようになるまで
開口: 元々は、製品のサポートを担当する部署との打ち合わせで、サポートに向けて製品のことを知ってもらう目的で、HFAS1を聴いてもらう場を設けたんです。それを上司が見て「もっと大々的にやろうよ」と言ってくれて。「RockDiskNext」をオーディオ向けに訴求し始めた時からの上司で、オーディオNASのニーズや、この製品の意義を理解してくれていたんです。
そうして「NASで音が変わるぞ」と経験した人たちから、社内に噂が広がって、「私もオーディオNASを聴いてみたい」と盛り上がってどんどん拡大していきました。ならば社内向けに試聴会をやろうと。これは私としては、今後HFAS1を市場に出すときに、どうしたらお客さまに音の違いが伝わるかを検証するテストでもあったんです。結果、社内でトータル100人以上に聴いてもらい、ほとんどの社員が「NASで音が変わる」と実感してくれたんですよ。それまで首を傾げていた人たちも、音を聴いた後は真剣に相談に乗ってくれました。結局のところ、この製品を知ってもらうには音なんだ、と(笑)
土方: いやあ、それは感動的ですねえ。
開口: 実はfidataブランドのサポート担当者は、この試聴会をきっかけに何度か「HFAS1を聴かせてほしい」とやってきて、そのうちに「この製品を担当したい」と自ら手を挙げてくれたんです。
土方: なんて良い話! 嬉しくなってきた(笑)。誰だってサポートを頼りにしますから、そういう熱意のある担当さんが窓口にいるというだけで安心できて、製品を買いたくなりますよ。開口さんを筆頭に、アイ・オー・データ機器社内にネットワークオーディオが好きな方がいること、そして会社全体でプロジェクトを後押ししてきたというのは素晴らしいことです。その結果がこのように全方位的に完成度の高い製品を生み出したのか〜。すごいな。
北村: ありがとうございます。最初に「NASの違いによって、オーディオシステムから発せられる音が変わるんでやらせて下さい」って言ったときは、「北村、毒されたな」とか言われましたけど(笑)。デジタルの世界の考え方では、データの音が変わってはいけないじゃないですか。
開口: ははは。「毒された」って(笑)
土方: わかりますよ(笑)「NASで音が変わるわけないだろう」って普通は思いますしね。実は僕も前はそうでした。
北村: 土方さんもそうだったんですね。
土方: ええ。僕は仕事でネットワーク構築や大規模な映像配信サービスにも携わってきたので、数億円もするような巨大なものも含め、様々なNASを使ってきましたけど、データの正確性さえ保証されていれば、音質は一律だとずっと思っていたんです。NASによって音が変わるなんて、そんな発想さえありませんでした。その考え方が変わったのが、以前1人のオーディオファンとして参加した、あるネットワークプレーヤーの試聴イベントでした。たまたま会場に複数のNASが置いてあり、イベント終盤にオマケみたいな感じで「NASが2台あるから聴き比べてみよう」という話が出たんです。当時、僕はNASには全く注目していなかったので「なぜそんなことするんだろう?」と思ってたんですよ。
開口: それが次の瞬間に…?
土方: そう、完全に覆ってしまいました。2台のNASで再生されたヒラリー・ハーンを聴いて、衝撃を受けました。NASによって音質が大きく変わることを初めて体感したんです。これはとんでもないことだと思いましたよ。それで今に至ります。
開口: そんな土方さんが聴いた、HFAS1の音の印象をぜひ改めて教えてほしいです。
土方: わかりました。なんか逆にインタビューされちゃってますね(笑)
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