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今と昔、ゲームの音楽はどう変わった?

『真・女神転生』25周年記念作に参加したゲーム作曲家たちは25年前なにを聴いていたの?

公開日 2017/10/24 11:00 編集部:押野 由宇
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坂本:戦闘曲、大変じゃないですか?

目黒:いやもう、最悪ですよね(笑)。一番苦手です。

戦闘曲は「大変」

坂本:求められることが近しいですよね。速いテンポで、マイナー調で、タイトルによりますけどメロディーが覚えられるとか。中ボスは通常戦闘よりもっと派手に、大ボスは中ボスより派手に。かと言って通常戦闘を抑えめにすると「もっと派手に」と言われてしまう。

柴田:こういう風にというサンプルをもらうんですけど、この世界に長くいると、過去に自分が作ったものが出てきたりするんですよ。それで「こういう感じが欲しいのかな」と作ったら、「原作者の意図を汲んでいない」と言われて「すいません」って(笑)。似て非なるものにするとなると、難しいですよね。

坂本:ゲームの戦闘曲は、RPGの村は、フィールドはこうあるべき、というものがあるじゃないですか。偉大なる先輩方が作ってくれたお作法をあまり外れると、ゲームっぽくないと言われる。結構な制限のなかで、僕たち頑張っていますよね(笑)。

目黒:フリーのサウンドクリエイターの方と、我々はかなりその辺が違いますね。タイトルによるんですけれど、ディレクターやプランナーから指示をもらうことはないんです。ましてやサンプルを付けてくるなんてことは滅多にないですね。もし付けてきたら、聴かないです。聴く?

小塚:いや、付けられたことがないですね。きっと、近くにいるから何かあったらすぐ聞きに行けるから、ということだと思います。

坂本:サンプルを聴かない、というのはなぜなんでしょうか?

目黒:サンプルをそのままパクっちゃうからです! 会社で昔、『飛んでるプリクラボンバイエ』というプリクラを作っていたんです(笑)。そのBGMとして、アンダーワールドの曲をサンプルに渡されて、「これにかなり近い感じでお願いします」と依頼されました。

柴田:プリクラでアンダーワールドというのが凄いですね(笑)

目黒:飛んでるプリクラですから(笑)。かなり近い感じで作ったら、完全にアンダーワールドになってしまって、「流石にこれはアンダーワールドまんまなので駄目です」と。まったくさじ加減が分からなくなってしまうんです。

柴田:同じような話として、僕は『ペルソナ』の曲がサンプルとして渡されたことがありました。方向性はそれに似せないといけないので、作って出したんですが、「これはペルソナ過ぎる」と言われて採用されなかったことがあります。

坂本:ここしかないというストライクゾーンに、自分の個性を投げ込んでいくわけです。それが大変だけど、楽しい。

目黒:え、それが楽しんですか?

坂本:楽しいです、大好きですよ!

―― その個性と言うか、得意とするジャンルはどういったものになりますか?

坂本:僕はオーケストラですね。どうも転調が多いみたいで、『討鬼伝』は和楽器を扱うタイトルなんですが、和楽器奏者の方々にはたくさんご迷惑を掛けてしまったんですよ。2拍ごとに違う調で、その度に尺八を持ち替えなければいけないとか。そうしたアイデアって無意識に沸いて出てくるんですが、やはり自分の個性といわれるところが作品にないとその人にお願いした意味もないとも思いますから。

柴田:子供のころに繰り返し聴いたクラシックが、一番役に立っていると言うか、頭に残っていますね。あまり需要はないんですが、本当は大学に入ってから始めたジャズが好きで、たまにジャズを依頼されたときにはマニアックなものを作ります(笑)。でも、僕の名前で依頼が来る仕事はほとんどロックなんですよね。

坂本:おそらく、柴田さんギターを持っている写真が出回っているからでは?(笑)

柴田:そうか、それが原因で(笑)

小塚:『MARVEL VS. CAPCOM 2 NEW AGE OF HEROES』は柴田さんですよね? 当時プレイしていて、格闘ゲームにジャズって凄いなって思っていたんです。

柴田:そのソフトは、結構好き勝手にやらせてもらえたので、色々詰め込んでいますね。

小塚:僕は“ゲームに作らされる”と言うか、「このゲームの曲を作って」と言われたら、それまでとはまったく異なる発想で半強制的にプロデュースされるような部分があります。そのおかげで幅を広げてもらえるというところがあって、それがやっていて楽しいなと思いますね。『真・女神転生IV』あたりから本格的に携わっていますが、ゲーム自体が結構ひねくれているので、ひねくれた方向に行こうとする性格が身についてしまったかもしれません。(笑)

小塚氏は作品に携わるなかで、自身の表現の幅が広がっていくという

柴田:根本的な、音楽のルーツというものはどこにあるんでしょうか?

小塚:音楽の聴き始めはゲーム音楽だったのでメロディアスなものです。それをずっと聴いていたら、ある時期に反動というわけではないですがメロディのないテクノとかインダストリアルに移って、ごく最近またメロディアスなゲーム音楽が良いな、と気持ちが戻ってきました。

目黒:僕は2000年ごろから『ペルソナ5』のディレクターの橋野と一緒に作ることが多かったんですが、ゲーム自体の世界観をどういう風にしようか、という開発が始まってすぐの会議から参加しているので、音楽もゲームに合わせて好きに考えられる、という作風がずっと続いています。ですので完全に作品合わせでベストを考えつつ、ファンの方が「え、こう来たの」「変だと思ったけど意外と合ってる」となるのを毎回狙っています。

―― オールジャンルで対応される、ということでしょうか?

目黒:いえ、そんなに器用じゃないので。なるべく広いジャンルで、こういう風にやったらこの作品にはベストじゃないか、というものを作ろうとは思っているんですが、自分のなかにあるルーツ、アイデンティティにあるものを音楽にしよう、というのが僕のなかのルールです。例えば、「こういうゲームなので民族音楽みたいなもの」と言われたら、「それは僕のルーツにないので駄目です」と、そういう判断で作っていきたいと思っています。僕は小学校のころにクラシックから入っています。中学時代にフュージョンを聴きはじめたので、それが次のルーツになるのかな。それからはニューミュージックだったり、渋谷系だったり。狭いルーツですけど、頑張ってやっています。

坂本:『ペルソナ』がなぜああいった音楽なのか、それを聞いてしっくり来ました。尖っているというか、聴いてすぐ『ペルソナ』と分かりますし、これは頑張ってもなかなか手に入れられないことだと思うんです。

目黒:いやいや、とんでもないです。でも、皆さんともルーツは似ていますよね。

柴田:確かに、似ているのかもしれません。

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