軽量・スリム化で装着感も改善
<IFA>ソニー「WH-1000XM3」開発者インタビュー。新しい専用チップ「QN1」で音質・NC性能が大幅向上
■新開発のノイズキャンセリングプロセッサー「QN1」を搭載、処理能力が約4倍に
初代のMDR-1000Xから評価の高かったアクティブノイズキャンセリング機能は、ソニーが本機のため独自に開発した高音質ノイズキャンセリングプロセッサー「QN1」を搭載したことによって、その効果がさらにブラッシュアップされている。
前モデルのWH-1000XM2にもノイズキャンセリング処理のための専用プロセッサーは搭載されていたが、最新モデルではその処理能力が約4倍にアップしている。“業界最高クラス”をうたっていたノイズキャンセリング性能が、さらなる高みに到達したのだ。
また、従来は外付けとしていたフルデジタルアンプ「S-Master HX」のICチップに含まれていたDACとアンプの機能を、今回はノイズキャンセリングプロセッサーのQN1に専用のDACとアナログヘッドホンアンプを統合。これによってS/Nが向上し、不要な音の歪みを減らして忠実な原音の再現性に磨きをかけた。また駆動時の消費電力を下げる効果もある。
今回専用チップ「QN1」の開発にまでこだわった理由について、大庭氏は次にように語っている。
「昨年に発売した“業界最高クラスのノイズキャンセリング性能”をうたうWH-1000XM2を開発する時、MDR-1000Xから内部構造やハウジングの形状変更など、ハードウェアによる性能向上はすべてやり尽くしました。したがって、M3でより一層の飛躍を実現するためには、いよいよプロセッサに手を入れることが必要でした。ノイズキャンセリングの使い勝手についても、人の話し声などいわゆるデイリーノイズの消音性能について、まだまだ高められるだろうという手応えが私たちにもありました。デジタルノイズキャンセリングの精度を高めるためにもプロセッサの処理スピードを上げる必要があり、今回新規にQN1を起こすという選択に踏み切りました」
「QN1」というアルファベットと数字の組み合わせには何かの意味があるのだろうか。ソニーとして特別な意図を込めた名前ではないようだが、もしかすると「Quality of Noise cancelling」をもじったものなのかもしれない。
「従来の1000Xシリーズでも追求してきた効果をさらに突き詰めた結果、すべての帯域に等しく自然な消音効果を実現できたことが大きな改善点です」という大庭氏の説明を受けて、あらためてその効果をIFAの会場に展示された実機で試してみた。
確かに従来のノイズキャンセリングヘッドホンが追求してきた高音域・低音域のノイズを消音するだけでなく、人の話し声やホール内にうずまく喧騒が効果的に消音され、自然で心地良い静寂に浸ることができた。ノイズキャンセリングのオンとオフをスイッチした時の変遷も、実に違和感なく感じられた。
■NC機能&DSEE HXのアップコンバート機能など「いい音の体験」が成功のカギ
ノイズキャンセリング用のマイク自体にはM2から大きな変更はないそうだ。アクティブノイズキャンセリングの仕組みについては、左右イヤーカップの表側と内側に1つずつ、合計4基のマイクでノイズを集めて打ち消す「デュアルノイズセンサーテクノロジー」を踏襲する。
スマホアプリ「Sony Headphones Connect」により、装着状態やリスニング環境の大気圧の状態に合わせて聴こえ方を最適化する「NCオプティマイザー」も今まで通り簡単に使える。
ワイヤレス再生時は高品位なハイレゾ相当のリスニングを実現するLDACとaptX HDに対応。LDACやaptX HD非対応の機器に接続してワイヤレス再生を楽しむ場合は、ソニー独自のアップコンバート機能「DSEE HX」が効果的で、96kHz/24bit相当の音質に引き上げることができる。
大庭氏は「日本国内やアジアではヘッドホンのハイレゾ対応、あるいはハイレゾ相当のワイヤレス再生というクオリティ訴求型のコミュニケーションが奏功して、多くのファンから支持が得られています」という。もちろん欧米で本機が成功している大きな理由も「音質」が認められているからであり、ノイズキャンセリングやDSEE HXによるハイレゾ相当のアップコンバート機能を含めた「いい音の体験」がファンのハートを掴んでいるようだ。
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