「Mr.ブルーレイ」パナソニック小塚氏に直撃
次世代BD「ULTRA HD BLU-RAY」規格の詳細をキーマンに聞く。4K/HDRで“究極高画質”へ
■高画質のポイント「HDR」(ハイダイナミックレンジ)とは?
「HDR」については、最近になって薄型テレビの高画質化技術として紹介されることが増えているため、ある程度認識している人も多いと思うが、改めて確認していこう。
我々がふだん目にしている自然界の光の強さは、完全な暗闇に近いような0.01NIT以下の世界から、太陽の直射日光や真夏の太陽光を反射する自動車のボンネットのような10万NITの輝度まで、その幅は非常に大きい。この光の明るさを表す単位がNITだ。
映画をはじめとした映像の製作過程では、映像輝度は広いレンジで収録されており、カラーグレーディングの段階で指定の範囲に出力している。
現行のBDでは、その光のレンジが100NITまでの範囲に収められており、カメラに撮影した映像の輝度情報の範囲を制限し、その上で自然な映像になるよう調整が行われてきた。なお、現在のテレビに搭載されているHDR機能は、この100NITまでに制限されている映像をもとに、補間アルゴリズムを工夫することで、100NIT以上の輝度情報を作り上げる仕組みだ。
■規格上限は10,000NITだが、1,000NITをガイドラインで推奨
ULTRA HD BLU-RAYでは、この収録できる輝度の上限が10,000NIT、またオーサリングする際にはガイドラインとしてテレビの推奨値として1,000NITという基準が定められた。
「まず、消費電力や安全性などの問題もあり、家庭用では1,000NIT程度までが適当であると考えています。ただし、この絶対的な明るさについては映画スタジオさんによって考え方が異なっており、あるスタジオでは4,000NITくらいでマスタリングしたい、あるスタジオは1,000NITでいいけど、将来的に使うかもしれないから規格としては10,000NITまで入れたいといった要望があり、上限として10,000NITとしました」。
CESのパナソニックブースではユニバーサルが提供したコンテンツのデモが行われていたが、そこで用いられている上限は1,000NITで制作されているとのこと。ちなみに、パナソニックがデモに用いているディスプレイは最大輝度800NITの特別仕様のもので、実際にブースでクオリティを確認したところ、従来のBDでは白くつぶれて当たり前のように思われていた空の青のなかの色諧調が再現できていたり、太陽光の眩しいさまが再現できているなど、映画における有用性が高いことを実感できた。
HDRのソース作成については、フィルム制作の作品は技術的な熟成が進んでいる4Kスキャナが利用できる。もちろん、HDR版のデジタルマスター制作には再度カラーグレーディングからやりなおしになるが、3D版の制作のような大規模なものではなく、現在のBD制作と同じような作業によってHDRマスターを作ることができる。このため、最新タイトルだけでなく、旧作のHDR化なども期待される。
HDRの映像信号を具体的にどのような形で収録・識別するかは、他社方式も合わせて検討した結果、必須のHDR技術については、ソニーとパナソニックを中心に共同提案した、オープンな標準規格を利用する方式が採用された。オプションとして、Dolby、PhilipsのHDR方式の採用も検討されている(記事初出時にはオープンな標準規格のみと記載しましたが、その後新情報が明らかになったため追記しました 2015年2月5日)。EOTF(Electro Optical Transfer Function)にSMPTE ST2084、そしてHDR情報を表すスタティックなメタデータとしてSMPTE ST2086を利用する。