USB-DAC機能まで徹底レポート
【レビュー】“Astell&Kern”新ハイレゾDAP「AK120」の実力を全方位検証
■AK120の“真骨頂”、ハイレゾ再生を徹底的に味わう!
さて、ここからはAK120の真骨頂ともいえるハイレゾ音源を試していくことにしよう。『Pure2-Ultimate Cool Japan Jazz-』〜届かない恋、夢であるように(192kHz/24bit・WAVマスターデータ)では、AK100が解像感中心で音像を細身で描くのに対し、AK120では低域から高域まで的確なエナジーコントロールができており、ドラムはタイトに引き締めながら音像の厚みはしっかり確保。ピアノはタッチの重みを表現しつつ、高域への音ヌケを階調細やかに描き、落ち着きある響きを演出している。
AK100ではシャープで爽やかに浮かんでいるだけのイメージだったホーンセクションに厚みが生まれ、タンギングの細やかなニュアンスもキレ良く描写。アンビエンスの響きも豊潤だ。ハイレゾならではの音場のリアリティも高く、奥行き表現も程よく感じられる。ドラムの抑揚ある描写は非常に音楽的であり、スタジオの雰囲気がそのまま再現されているかのようだ。ボーカルにおいても肉付き良く口元の輪郭を素直に表現。付帯感なくナチュラルな浮き立ちは非常にリアルである。
続いて筆者自身が録音した長谷川友二『音展2009・ライブレコーディング』〜「ゲット・バック」(SonicStageMasteringStudioにてDSD・2.8MHzから192kHz/24bit変換)も聴いてみる。ギターの弾き語りとウッドベースのみの演奏であるこの音源は、ステレオワンポイント録音であるため、音場の空気感や位相感、定位情報などを主に確認している。AK100ではギターはカラッとしたヌケ良い音、ウッドベースはむっちりとしたいずれも倍音の強い傾向である。ボーカルはソリッドで口元のハリが強めであり、空間の描写はやや平面的だ。
それがAK120では楽器のボディ感がしっかりと見えるようになり、弦のタッチもリアルに表現されている。ウッドベースの胴鳴りも太く、弦のハーモニクスもリッチに響く。ボーカルにも厚みが出ており、口元の描写は有機的な艶が乗ってくる。音場の位相表現も正確で、演者の動きの定位感も素直だ。AK100も十分きめ細やかで解像度の高いサウンドを実感できるが、AK120の持つリアルな音像感、空間の緻密さ、S/Nの優れた音場表現を比較してしまうと、原音に忠実なサウンドを限りなく実現しているAK120に軍配が上がる。そしてオーバーヘッド型ヘッドホンも平然と鳴らし切るアンプ部のドライブ能力の高さについても併せて評価したい。