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[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第78回】オーディオファンのための“コンプ”基礎知識 − 名曲で実例解説つき!

公開日 2014/03/07 14:42 高橋敦
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■「コンプで昆布でも結果的に格好良い録音」はある

さて、最初に述べたように曲展開とも関係するのだが、過度にコンプされた曲の音量レベルは一様に高くなり、そのグラフは塗り潰された帯のようになる。このグラフの見た目から過度にコンプされた音源は、だいたいは悪い意味を込めて、「昆布」と呼ばれたりもする。「コンプ」と「昆布」は語感もそっくりだしなかなか秀逸な表現だ。

しかし例出の曲をご存知であれば、「いやコンプで昆布になってるかもしれないけど、でもこの録音かっこいいよね?」と思う方もいるはずだ。さらに「コンプ控えめの高音質録音の例の曲も聴いたことあるけど、自分にはしょぼい音に感じられちゃうんだけど…」という方もいるかもしれない。

しかしさらに、コンプで昆布なロックを聴いてやっぱり「これはだめだ。完全に潰れて歪んでてオーディオ的にも音楽的にも死んでるよ…」と感じた方もいることだろう。それはそれで真っ当な感覚だ。

つまりあまりにも当然の結論になるが、「ミュージシャンやエンジニアが意図して適当にコンプした音源は彼らと感性の一致する音楽ファンにはかっこいい音として届く」し、逆に「ミュージシャンやエンジニアが意図してコンプを控えた音源も彼らと感性の一致する音楽ファンには豊かな音として届く」し、「どちらにせよ彼らと感性の一致しない音楽ファンにはひどい音やしょぼい音としてしか届かない」ということなのだ。

まあそんなわけなので、コンプを一概には悪役呼ばわりはしないであげてほしいというのが、その手のロックやポップスを好む僕の願いだ。

しかし、それはあくまでも「ミュージシャンやエンジニアが意図して適当に」コンプした場合の話だ。「不適当に」コンプされている音源は話が違う。それはダイナミクスレンジと同時に作品本来の音楽性を潰す行為だ。ダイナミクスレンジが潰されたくらいでその音楽の本質が殺されるわけではないが、その伝わり方が弱まる、というか損なわれることは否めない。前述の「音圧競争」を引きずっている類いの過剰コンプはロック的なかっこよさとかとは別のものであり、全く歓迎できない。

次ページコンプの効果を聴き比べられるハイレゾ音源&高橋敦からのお詫び(?)

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