[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第86回】今回もやります!「春のヘッドフォン祭2014」高橋敦の超個人的ベスト5
【第4位】新世代ケーブルは純粋VS不純!?
当連載でも以前にお伝えしたように、各種オーディオケーブルの導体素材として定番であった「PCOCC-A」の生産販売が停止されてしまった。それらを採用していたイヤホンやヘッドホンのリケーブル製品も、遠からず「次の素材」を見つけなくてはならない。
その最有力はPCOCC-Aの正当な後継とも言える「PC-Triple C」だ(関連インタビューはこちら)。特殊な製法によって独特な結晶構造を与えることで異物を徹底排除。超高純度な銅素材だ。今回具体的な展示こそなかったものの、アコースティックリバイブではそれを用いたリケーブルの発売予定があるとのことで、まずはそれに期待したい。
さて一方で、主力にはならないだろうがオルタナティブなアプローチとして注目してほしいのがBeat Audioというハンドメイドブランドのリケーブル製品だ。
同社の「Vermilion」というケーブルの導体は、高純度無酸素銅をベースにそこにあえて少量のミネラルを配合してあるという。「ミネラル」と言えば何か身体に良さそうで聞こえはいいが、「いやそれ不純物でしょ?」という捉え方もできる。
しかし、だ。オーディオの世界にもレコーディングやエレクトロニック楽器の世界にも、ビンテージのケーブルが持つ独特な音質を好む方がいる。そして一説には、そのビンテージケーブルの音質の鍵のひとつは、当時の金属精錬の技術レベルや生産管理の甘さ、さらには銅山ごとの成分の違いによる、導体への不純物の混入であるとも言われているのだ。
つまりそのビンテージ当時の場合は「偶然に混入した不純物が偶然にも好ましい音質をもたらした」という説なわけだが、このケーブル、Vermilionの場合はそういったことを「意図的に再現している」…のかもしれないと僕としては勝手に想像している。
まあ想像にすぎないのだが、面白くて可能性を感じさせるアプローチと思えるのでこの機会に紹介させていただいた。