[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第86回】今回もやります!「春のヘッドフォン祭2014」高橋敦の超個人的ベスト5
【第1位】 FitEar「fitear」
僕は今回は二日目の夕方という終了間際の時間帯に取材をしていたのだが、その時間でもなお試聴に列ができていたのがこれだ。なぜ列ができていたかというと、聴き始めた人が聴き始めたが最後なかなか席を離れない!その事実がこのモデルがプロトタイプにしてすでに「そういうレベルの音」を出していたことを明示していると言えるだろう。
国内におけるカスタムイヤーモニターの最右翼であり、いまや海外でも高い知名度を得るに至っているFitEar。そのFitEarがいまにして「fitear」の名を冠して提示するユニバーサルタイプの新モデルだ。去年の「Parterre」と同じく、ドライバー構成を始めとして技術的な情報はあえて伏せられている。なので今回もこちらもそういうことは気にせずに音だけ聴いてみよう。
…良い。そして好い。
全体的なことを言えば、Parterreでも突出していた音色と空間の透明性はそのままかそれを超えており、そしてそこにベース等の自然でしなやかな存在感が加わっている。無論、普通に低音がプッシュされているわけではない。低音が「速い」というのとも少し違う。何というか、もっとごく当たり前のような感じで充実している。
ピンポイントで言えば、坂本真綾さんの声の感触が素晴らしい。真綾さんの「30minutes night flight」という歌は、歌い方にしても録音にしても、ちょっと挑戦的なほどにあえて声を刺してきていることが特徴だ。それによって歌、言葉を、聴く者の心にまさに強く刺してきているのだが、このfitearはその刺してくる感触が絶妙!刺してくるのに乱暴ではなくむしろ優しい。でもやっぱりぐさっとくる。fitearは真綾さんの歌声のそんな魅力、表現力を存分に届けてくれる。
まあこの点については、FitEarの須山氏は真綾さんのラジオでも「イヤーモニターを作ってくださっているメーカーの方が、私のライブとか音楽をとても気に入ってくださっていて、ライブがすごくよかったんでって言って、新しいイヤーモニターを、私の耳型がそこに保管されていますから、勝手に作って持ってきてくれたんですよ」と笑いながら言及されており、ライブBDのクレジットにもお名前が載っている方だ。意図的にチェック音源としていたかは定かではないが、そもそもの感性として、真綾さんの歌声と相性が良いイヤホンを作るのは至極当然と言えるだろう。
…というわけで今回もヘッドフォン祭りの超個人的ベスト5を挙げさせていただいた。アンティークヘッドフォン成分こそ不足していたものの、今回も実に満腹な内容。同志諸君も大満足だったことだろう。では来秋のヘッドフォン祭りまでдо свидания!
高橋敦 TAKAHASHI,Atsushi 趣味も仕事も文章作成。仕事としての文章作成はオーディオ関連が主。他の趣味は読書、音楽鑑賞、アニメ鑑賞、映画鑑賞、エレクトリック・ギターの演奏と整備、猫の溺愛など。趣味を仕事に生かし仕事を趣味に生かして日々活動中。 |
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