[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第86回】今回もやります!「春のヘッドフォン祭2014」高橋敦の超個人的ベスト5
【第2位】DSD 11.2MHz=DSD256登場!
思えばオーディオの世界に「DSD」という言葉が広がり始めた当初には、DSDは単にDSDだというだけの認識だった。どういうことかというと「2.8MHz(DSD64)」「5.6MHz(DSD128)」といった、DSD内でのフォーマットの違いまではまだまだ考えが及んでいなかったのだ。
しかしいまや状況は一変しており、USB-DACにおいてDSD対応は「まるで、DSDのバーゲンセールだな」といったほどに普通のスペックのひとつだ。まあ残念ながら音源の方はまだまだ豊富ではないのだが…。
それにしてもハードウェア、再生環境の面では、単にDSD対応というだけでは特に先進的ということではなくなっている。ならば次は?
DSDを超えたDSDをもうひとつ越えてみるか…DSD 11.2MHz(DSD256)対応だ。
DSD 11.2MHzに対応した再生機器がいままでなかったわけではない。というか数年前からいくつかあるにはあった。ただ入手性や価格等に難があり、マニア中のマニアに向けた製品だった。
しかし今回登場したふたつのモデル、iFI-Audio「micro iDSD」とOPPO Digital「HA-1」は、おそらくはそれほど無理のない価格で登場してくれると期待できそうだ。というかHA-1の方はすでに16万円前後での登場と予想されている。
ただHA-1の場合だと11.2MHz再生についてはASIOでのネイティブ伝送のみという但しが付いているなど、まだ不透明な部分もあるので、今後はそのあたりも注視しておきたい。
しかしもちろん最大の課題になるのは音源。DSD 11.2MHzで配信されている音源は現時点では皆無だ。
まずは超高音質配信に積極的なノルウェー2Lレーベルあたりの動きに期待したい。例えば超高音質作品Hoff Ensemble「Quiet Winter Night」はDXD 352kHz/24bitで録音されており、こういった素材であればDSD 11.2MHzに落とし込んでの配信も有効だろう。
ちなみにmicro iDSDのデモでは、アナログテープのマスターからデジタル化されていた素材をさらにアナログで出してアナログのアウトボードで処理してDSD 11.2MHzでリマスターしたという素材が用意されていた。個人的にはDSDは様々な段でのアナログ処理との相性が良いと感じており、この音源からも、実に陳腐な表現だが「アナログの生々しさ」のようなものを感じ取ることができた。
さらに個人的にはDSDは、編集性の低さという難点があるのでProTools PCMマルチトラック録音編集環境の代わりにはなり得ないとは思う。
しかしマスタリングメディアとしてなら、音質さえ好ましければ編集性は必要ない。マスタリングにアナログテープを使うのと似た感覚でマスタリングにDSDを使うというのは、合理的かつ音楽的にも納得できる選択肢と思える。
そしてマスタリングがDSDで行われた音源であれば、それをそのまま配信してほしいし、それをそのまま再生できる環境がほしい。この分野のさらなる発展と普及を願う次第だ。
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