[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第88回】最新ハイレゾDAP全13モデル、音質・特徴・使い勝手を総まとめ<'14年上期版>
■Sony NW-F880シリーズ
▼実売目安|2万5,210円(NW-F885)
▼高橋主観評価
音質 |○
操作性|○
携帯性|○
コスパ|◎
圧倒的知名度の「ウォークマン」ブランド+これまた圧倒的なコストパフォーマンスで、ハイレゾポータブルプレーヤーというかハイレゾというもの全体の認知度向上に大きく貢献しているモデル。
他のハイレゾポータブルに対しての大きな特徴は機能の豊富さ。
・DSEE HX
・ノイズキャンセリング
の2点はハイレゾウォークマンのみ、特に後者は今回紹介する中で本モデルのみの搭載だ。DSEE HXは圧縮音源も含めて非ハイレゾの音源に含まれる音声データから本来あるべき音声情報を推測生成しつつ、ハイレゾスペックに引き上げて再生する機能。手持ちの音源の大半は非ハイレゾだろうから、それをいかにより楽しめるかという観点からの機能と言える。
これをハイレゾ再生と考えるか否かは個人個人の考え方次第ではある。しかしハイレゾとは認めない場合も、イコライザー等と同じく「結果より好ましい音になるなら手段は問わん!」ということで有効活用するのもよいだろう。ただしこれを使うと再生時間が大幅に短くなるとの話もあるので注意。
ノイズキャンセリングは付属の専用イヤホンとの組み合わせで利用できる。その環境でハイレゾの意義を感じられるのかという点は難しいが、「地下鉄での移動時は付属イヤホンでノイズキャンセリング!」といったようにハイエンドイヤホンと随時使い分けるのがよいのかもしれない。
システムやインターフェースはAndroidスマートフォンのそれをおおよそそのまま流用しており、音楽プレーヤーとして一から作り上げ磨き上げたものではない。その点は残念と言えば残念だ。しかし逆に、スマートフォンを使い慣れていればその感覚そのままで使いこなすことができる。スマートフォンとの2台持ち体制での扱いやすさという意味では悪くはない。
そして薄さ軽さはハイレゾポータブルでダントツのトップ!
音は明快な好音質。ほどよく明るく心地よくシャープ。じっくり聴けばわかる高音質ではなく、ぱっと聴いて楽しい好音質だ。この価格帯では実に納得の音作り。
■Sony「NW-ZX1」
▼実売目安|7万5,550円
▼高橋主観評価
音質 |○
操作性|○
携帯性|○
コスパ|△
スペックだけ見るとF880シリーズの方が多機能だが、それはこちらの方がよりオーディオ機器としてのクオリティに比重を置いているためだ。大手メーカーの量産機としては異例なほどのこだわりを随所に詰め込んでいる。
例えば最初に見たときには「いやなんで?」と思った方も多いであろう、筐体下部の膨らみ。ここには大型の「OS-CON」コンデンサーが4基搭載されている。安定してきれいな電源の供給を実現するためにはそのでかい(そして高い)コンデンサーが必要で、その搭載のためにはあの膨らみが必要。このモデルはそういう方向で設計されている。
アルミ切削による筐体もコストアップ要因だろうが、その剛性とノイズ遮断で音質向上に貢献すると同時に、その手応えや質感でも満足感を与えてくれている。そしてノイズキャンセル非搭載等を除いてのおおよその機能性や操作性はF880と同等であり、良好。
音質は、特にF880と聴き比べれば、まあ地味。しかし「ぱっと聴いて楽しい好音質」のF880に対してこちらは「じっくり聴いてこそわかる高音質」だ。丁寧に整えられ、鋭いけれど痛くはない、端正な音調に仕上げられている。メイク上手の派手美人ではなく、すっぴん美人のナチュラルメイクな感じだ。すっぴんではなく仕上げのメイクはしているというのもポイント。
次ページ次は、iBasso Audioの「DX90j」「HDP-R10」を見ていこう