[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第88回】最新ハイレゾDAP全13モデル、音質・特徴・使い勝手を総まとめ<'14年上期版>
■iBasso Audio「DX90j」
▼実売目安|未定
▼高橋主観評価
音質 |○*
操作性|○
携帯性|○
コスパ|ー
2014年における高価格帯での注目が新世代AKシリーズとすれば、低価格帯で発売前から注目を集めているのがこのモデル。といっても価格はまだ発表されていないのだが、大枠としてはエントリークラスに来ると考えておいてよさそうだ。
DAC部分はES9018K2Mデュアル構成だし、アンプ部分もポータブルアンプブランドとして定評がありHDP-R10の実績もあるブランドなので、期待値が高いのは当然だ。ライン出力と同軸デジタル出力を装備という、ちょいマニアックな拡張性も備える。
操作性は「ソフトウェア(タッチパネル)部分は悪くはない程度だけれどハードウェア(ボタン)部分はよい感じ」というパターン。スキップと再生停止の大きくて押しやすいボタンは、鞄のポケットの中とかに入れたままの手探りでも操作しやすい。またそれはデザイン上のアクセントにもなっている。
音質面は、まだ開発中個体しか聴いていないのだが、その時点でおおむね良好だった。近い価格帯での勝負になりそうなAK100MKIIと比べると、「DACの音調が主体でストレートなAK100MKII」に対して「アンプの力を発揮してぐいっと力強さも光るDX90j」といったような印象。個性が分かれていて面白い。あとは「j」の名にふさわしいローカライズがどこまで達成されるかに期待したい。漢字周りとか。
■iBasso Audio「HDP-R10」
▼実売目安|6万1,500円
▼高橋主観評価
音質 |◎
操作性|△
携帯性|×
コスパ|◎
ハイレゾポータブルプレーヤー初期の製品なのだがいまだ現役で通用する力を持っている。…ただし、音質一点勝負ならだ!
というか「現在の観点から言うと」とかではなく登場した当時から「ひたすらでかい!物理的にも動作的にも重い!発熱ヤバい!動作の安定性と操作性がアレ!」といった感想はそこかしこから溢れていたのだが、それでも「だが音はいい!」ということへの定評は揺るぎない。
そこに加えて現在では、発売から二年という歳月がこのモデルにもたらした大きな武器がある。登場時には予想実売価格8万8000円という価格帯であったところが、現在の実売は6万円ちょいにまでこなれてくれているのだ。僕の主観評価で音質◎とした製品の中で、これが圧倒的に安い。また新しくはないモデルであるのにPCM変換で2.8MHzまでとはいえ、DSD再生にまで対応していることにも注目に値する。
音質だが、まあとにかく充実感がある。細やかな描写力やよい具合に肉厚な中低域といったところもハイレベルだが特に、音色の筆圧が適当に強くてぐいぐいっという音の流れ、推進力を感じさせるところが秀逸。他には例えばシンバルの、薄刃すぎずに鋭さと厚みを兼ね備えて抜ける描き方も、なかなか希有だ。
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