[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域
【第112回】高橋敦の “オーディオ木材” 大全 〜 音と木の関係をまるごと紹介
■オーディオにおける木材の意義
まずはオーディオ機器において木材を使うその意義や意図について考えてみよう。僕が思うにそれはざっくりと次のようなところに大別できる。
●響かせるため
●響かせないため
●強度を得るため
●外観や手触りのため
それぞれを簡単に説明していこう。
●響かせるため
これは木材の音響特性をわかりやすく生かす使い方だ。例えばスピーカーやヘッドホンのキャビネットで「響きを感じられるウッド素材」とか謳われているのは、そこを意図し、売りにしていると受け取ってよいだろう。後述するように木材は樹種等によってそれぞれが異なる響き、固有の音色のようなものを持っている。しかし「木材らしい響き」というようなおおよそ共通のものはあり、それはおおむね多くの人にとって心地よい。だからこそ「木の響き」はオーディオにおいて積極的に取り入れられることも多い。
●響かせないため
いきなり「響かせる」と相反するが、そこが木材の奥深さ。樹種によっては、あるいは使い方によっては、木材はいわゆる「制振材」としても有用だ。ラックやスタンド、インシュレーターといった分野ではこの狙いで木材を採用している例が多い。
●強度を得るため
いや強度なら金属とかカーボンとかだろ?というのは感覚的には当然だが、重量やコストや諸々との兼ね合いで考えると強度的にも結局木材がベターということも往々にしてあるようだ。古くは飛行機の翼だって木材だったわけで、ラックやスタンドに求められるくらいの強度は軽く満たせる。鳥人間コンテストでは翼が折れて墜落する光景もおなじみだが…。
●外観や手触りのため
音色や響きと同じく、木材の外観や手触りを心地よいものと感じる方は多い。例えばスピーカーキャビネット表面等に薄い木材を貼り付ける「突き板」「化粧板」は、音響的な意味合いは微小。外観や手触りのために木材を用いているものとしてわかりやすい。
また、ここを表面的にやるとなると、木目を模した樹脂シートやプラスチックパーツなどに行き着く。しかし個人的には、フェイクの木目調よりは、しっかり仕上げられたプラスチックそのままの。プラスチックらしい質感やデザインの方が、よほど上質に感じられる場合が多い。
ただし、例えば鼈甲柄のセルロイドやその他の合成樹脂などは、本物の鼈甲は大規模な利用がもう現実的に不可能であることもあるのだろうが、鼈甲柄は鼈甲柄としてその素材感と存在感が確立されているように思える。フェイク全般がだめというわけではないので、木目調も巧く仕上げればよい具合にできることだろう。
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