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[連載]高橋敦のオーディオ絶対領域

【第112回】高橋敦の “オーディオ木材” 大全 〜 音と木の関係をまるごと紹介

公開日 2015/01/16 10:44 高橋敦
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●オーク

日本で言うところの「楢(ナラ)」であり、里山とか雑木林とかにデフォルトで生えててクワガタとかが樹液を吸ってたりクマが実を食べてたりするあれ。木材としては北米産のホワイトオークが特に広く利用されている。比重はやや重めでかなり頑強。家具や建築どころか、船や枕木といった高度な対腐食性や耐久性が求められる分野にも利用されるほどだ。またその筋のマニアの方はウイスキーやワインを熟成させる樽の素材として思い浮かべることだろう。

JVCのコンポ「EX-HR11」のスピーカー部は複数の木材を巧みに組み合わせてある。オーク材はドライバー背面のウッドブロックとして音のチューニングに用いられている

楽器の分野でも、ドラムのスティックという特に強度が必要な分野でオークは定番。ちなみにスティック素材の定番は他にメイプルとヒッコリーで、それらに対してオークは最も重く硬く、パワーヒットに適している素材という扱いだそうだ。楽器では他に、リヴェラ氏によるフェンダーアンプ1980年代の名機、Super Champにはオーク材キャビネットのレアな限定モデルが存在する。さて、その頑強さからすればオーク材はボードやラック、スタンドの素材として実に適当に思える。しかしオーディオでは、もちろん採用例をちょいちょい見かけはするが、主材としての採用例はあまり見かけない印象。何かしら弱点があるのだろうか。

●スプルース

軽くて柔らかな材。というとそれって使い道あるの?と思われた方もいらっしゃるかもしれない。しかし軽くて柔らかいからこその響きのおかげなのか楽器分野においては、ヴァイオリンやアコースティックギターの表板やピアノの響き板といった音響上極めて重要な箇所に用いられている。

同じくJVCのコンポ「EX-HR11」のスピーカー部で、スプルースもチューニングに用いられている

ちなみにソリッドのエレクトリックギターだとフェンダーカスタムショップのユーリ・シスコフ氏などは稀にこの材でストラトキャスターを製作するが、メイプルネック、アルダーボディ、ローズウッド指板という通常仕様のカスタムショップ製ストラトの平均的な重量が3.4〜3.6kg程度であるのに対して、スプルースネック&ボディにローズウッド指板だと3.0kg前後と圧倒的に軽くなる。それほどに軽量な木材。伝統的にヴァイオリン製作等の「ハイエンド」な世界で用いられてきたためか、ヨーロッパにおいてはその産地やグレード分けなどにも特に大きな注意や敬意が払われているようだ。

●チーク

オーディオと楽器の世界においては大きな存在感を放ってはいない気がするのだが、家具や建築の分野においては古くから名木として扱われているとのこと。比重はマホガニーと同程度で、アルダー等と比べればやや重いかなという程度。頑強な割には加工性も良好。しかし最大の特徴は油分を適度の含むことのようだ。そのため耐水性や耐腐食性が高く、船舶の甲板などにも利用されるほど。また家具材としても、天然の艶、使い込んでいったときの日焼けによる色合いの深みなど、その油分がもたらすものは大きい。オーディオにおいては後者、その美しさが大きな意味を持つだろう。

オーディオテクニカのウッドハウジングヘッドホンシリーズ最新の「ATH-W1000Z」はチーク材を採用

●竹

竹が木なのか草なのかは専門家でも意見が分かれるところのようなのだが、オーディオ的には金属でも合成樹脂でもないし、どこかに括れっていうなら木材に入れておくしかない。その竹だが、他の木材と並べるとやはり特異な存在ではある。身の回りでの利用例にしても幅広いし、オーディオにおいても一般的にこう使われるという定型パターン的なものは見い出しにくい。各製品ごとに見てもらいたい。あと資源として見た場合には、その成長の速さが大きな強みだ。

iFi-Audioの最新コンポ「iFi Retro Stereo 50」は本体もスピーカーも竹筐体

パナソニックは竹を繊維にまで砕いてから特殊技術で整形したものを振動板に使うのがお家芸。写真は「SC-HC39」「SC-HC29」

次ページ続いては、お好きな方には胸キュン必死の「特に希少な木材」を紹介する

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