<山本敦のAV進化論 第42回>人気ヘッドホンとの相性もチェック
ウォークマン新旧フラグシップガチンコ対決!「NW-ZX2」&「NW-ZX1」を聴く
・TM Network「Self Control」から『Maria Club(百億の夜とクレオパトラの孤独)』(96kHz/24bit・FLAC)
ZX2はハイスピードでダイナミックな躍動感。ボーカルのプレゼンスが明瞭で、バンドの楽器も一つ一つの音が力強いエネルギーに溢れている。エレキギターやブラスの高域は煌びやかさが華開き、豊かな音色を堪能できる。
続いてZX1を聴くと、中高域の音像がかちっとフォーマルな感じの音に抑制された印象にきこえてくる。ZX2に比べると線が若干細めだが、無駄なくビシッっと鋭く響くタイトなリズムセクションが心地良い。全体の音はZX2に比べて広がりが抑えられている感じだが、統一感が高くまとまりが良い。
・ミロシュ・カルダグリッチ「Latino Gold」から『Barrios Mangore: Un Sueno en la Floresta』(96kHz/24bit・FLAC)
ZX2は高さ方向にふわっと広がっていき、ガットギターの中高域の響きが何とも美しい。サスティーンの粘り気が濃く、余韻の消え入り際も上品で心地がよい。トレモロの音の立ち上がりが俊敏で、軽やかな指の動きをトレースしながらピュアなハイトーンが空間に散華していく。低域もクリアで、余韻が透き通っている。音像が引き締まっていてフォーカス精度も高いのはZX1だと思うが、ZX2はより音楽性を色濃く引き出してくる。
・ノラ・ジョーンズ「Come Away With Me」から『The Nearness of You』(192kHz/24bit・WAV)
ZX2はビブラートやブレスなどディティールをやや強めに再現する。そのぶんボーカリストとの距離感が近く、唇の官能的なイメージが生々しく再現される。浮かんでくるのは、オトナの色気が内面から漂い溢れる女性というよりも、生気に満ちて若々しい芳香を発散する女性のイメージ。伴奏のピアノも響きが太くゴージャスだ。
続けてZX1で聴くと音符に曖昧さがなく、ストレートで生真面目なタイプのプレーヤーだと感じる。ボーカリストの息づかいもリアルに描くが、声がすうっと抜けるミント系の清涼感は本機ならではの持ち味。
・ビル・エヴァンス・トリオ「Waltz For Debby」から『Milestones』(192kHz/24bit・FLAC)
ZX2ではプレーヤーの位置関係が奥深く立体的にみえる。こちらの楽曲も芳醇な余韻が味わえた。セパレーションも高く、ウッドベースのディティールもぶれなく正確に細かな所まで浮き彫りにする。流れるようなピアノのアドリブも一つ一つの音の粒立ちが絶妙だ。ただ高域の余韻があまりにリッチであるが故に若干オーバーラップ気味に感じられるところもあり、よりカッチリとした定位の明瞭感を好むならZX1を選ぶという手もある。
・ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団「ドヴォルザーク:交響曲第9番『新世界より』」から『第4楽章:フィナーレ(アレグロ・コン・フォーコ)』(96kHz/24bit・FLAC)
ZX2では金管楽器の明るく煌びやかな音が痛烈に印象に残った。ダイナミックレンジが広く、オーケストラの演奏は懐が深い。弦楽器は音がすっと立ち上がって伸びかにハーモニーを重ね合わせていく。生き物のような躍動感だ。高域のヘッドルームが高いヘッドホンなので、クリアでフレッシュなハイトーンを残響の消え入り際までたっぷりと味わうことができる。ZX1は一音ずつ輪郭がくっきりと描かれる。クラリネットのソロも、ピアニッシモの音量でも音像が明瞭。解像度はともに高いが、カメラでいうところの被写界深度の深さというか、アタックの柔らかさとしなやかさではZX2の方に軍配が上がる。
続いてZX2でDSD 5.6MHzの楽曲を再生してみた。曲は坂本龍一のアルバム「Coda」から『Merry Christmas Mr.Lawrence』だ。