<山本敦のAV進化論 第46回>MWCで話題の製品に迫る
まるでハロ? それとも現代版Rolly? ソニーの球体スピーカーは踊るだけじゃない
「MWCの展示ではソフトウェアの開発が終わっていなかったので、“足”を使って踊るところまでお見せできませんでしたが、いまのところ“1辺30cm四方”のスペース内を動き回れるようにしたいと考えています」(宮澤氏)。
ホイールを使って動き回るときは、お掃除ロボットのように障害物を検知することはできない。落下防止のセンサーも内蔵されていないので、ある程度スピーカーが安全に動き回れるスペースを、ユーザーが事前に確保し、面倒をみてあげることも必要になりそうだ。
ほかにもユーザーのボイスコマンドが聴き取れなかった時には本体がバイブしたり、本体を左右に動いて「Yes/No」の受け答えもできるようになるという。本体のフロントパネルには文字を表示できるディスプレイが搭載されているので、本体の動きと合わせてスピーカーからのメッセージもここに表示されるようになれば、ある程度コミュニケーション能力は充実してきそうだ。
「“踊る”スピーカーを企画した意図は、“アクション”がユーザーと本機のようなタイプのコミュニケーションデバイスとの距離を縮めてくれるきっかけになると考えたからです。スマートウォッチも含めて、機械に向かって話しかけるのはどことなく違和感があるという方もいらっしゃいますが、呼びかけに対してリアクションが得られることで、デバイスに対する親しみが生まれて、コミュニケーションもスムーズになるのではないでしょうか」(宮澤氏)。
プラットフォームはソニーが独自に開発したものだが、先々はSDKの公開も検討しているという。宮澤氏は「ソニーが自らアプリを開発する計画は今のところありませんが、SDKを公開して、アプリケーションやソフトウェアを開発している皆様に、面白いアイデアを活かした機能を追加してもらえるようにしたいと考えています」。
「例えば“踊り方”のパターンを色々と増やしていただくこともできるでしょうし、あくまで私の思いつきですが、本体をラジコンのように動かせるようになるかもしれません。今回のMWCで紹介した本機の内容が完成型だとは考えていません。可能性の間口を広く取りながら、ソニーが提案する新しいコミュニケーションデバイスの姿を提案していきたいと考えています」と語る。
ユーザーとのコミュニケーション機能という新しい価値をスピーカーに加えることを追求した製品が「BSP60」というわけだ。もしかすると、これはモバイル機器におけるIoT(モノのインターネット)を身近に実現する一つのカテゴリーに成長するかもしれない。本機の企画意図について、さらに宮澤氏に話を聞いた。
「本機はいくつかの角度から企画された製品です。ポータブルスピーカーでハンズフリー音声通話にも対応する製品は数多くありますが、私たちはそこにコミュニケーション機能を加えることで“その先の進化”も見せたいと考えました。また、“ポータブル機器”である携帯電話によるボイスコマンド機能は少しずつユーザーのライフスタイルに浸透してきましたが、一方で “部屋の中” でボイスコマンドを使って楽しむ製品にはどんなものが考えられるのか、検討を続けてきました。家にいながら、よりリラックスした状態で、ボイスコマンドを使って音楽を楽しめる商品をつくりたいと考えたことも企画意図としてあります」
ソニーが2007年に発売した、踊るスピーカー付きのポータブルオーディオプレーヤー“Rolly”「SEP-10BT」(関連ニュース)と、本機「BSP60」との間に何か関係性はあるのだろうか。宮澤氏はこう答える。