開発の背景も担当者に聞いた
Unique MelodyのカスタムIEM「MAVERICK」を導入した理由 - リスナーに寄り添うモニターサウンドとは?
■「BA+ダイナミック」という低域構成はいかにして生まれたのか
MAVERICKは先にユニバーサルタイプが発売され、その後にカスタムIEM版が登場した。ユニバーサル版もカスタムIEM版も、同様のドライバー構成をとっている。
その音を実際に聴くまで、MAVERICKの「低域:BA×1+ダイナミック×1」という構成には半信半疑だった。今ではBAドライバーとダイナミックドライバーを組み合わせたハイブリッド型は各社が展開しているが、低域をBA+ダイナミックというのはあまり聞いたことがない。イロモノと言っては失礼だが、そういう類いのモデルなのではないかとさえ最初は思った。だからこそ、初めてMAVERICKを聴いて実感したオーディオ的正攻法とも言える音作りには驚かされた。BA+ダイナミックという低域構成は、どのような過程で実現したのだろうか。
「低域をBA+ダイナミックという構成にするというアイデアは、開発段階の試行錯誤の中で生まれたものです」と宮永氏は開発当時を振り返った。MAVERICKのベースモデルになったのは5ドライバーのカスタムIEM「MERLIN」で、本機は低域:ダイナミック×1、中域:BA×2、高域:BA×2という構成をとる。当初はこのモデルの構成を下地にするはずだった。
ちなみにMAVERICKユニバーサルの開発は、当初は日本で行う予定だったという。ヘッドフォン祭やポタフェスといったイベントのためにUnique Melodyのスタッフは年に数回来日するのだが、その度に日本に専用機材を持ち込み、宿泊先のホテルなどに宮永氏が赴いて、夜を徹してチューニングを行ったのだ。しかし、音質チューニングはなかなか思い通りにいかず、結果的には宮永氏が中国に赴くことになった。
難航した音作りで、特に問題になったのが低域再現だった。宮永氏は学生時代にバンドを長く続けていたこともあって、楽器の再現には明確な到達目標があった。特に長い間プレイしていたドラムについては、妥協はできなかったという。MAVERICKの音作りで問題になったのは、バスドラムの再現。「MERLIN」は低域をダイナミックドライバー1基で担っていたが、これを踏襲する形ではバスドラムの音が思い通りに再現できなかった。
「Unique Melodyは、多種多様なダイナミック/BAドライバーをドライバーメーカーと共同開発しているのですが、それらを片っ端から試しました。ダイナミックでは、振動板が薄いアルミ製の軽量タイプから、直径8mmの小口径タイプまで試して、レスポンス向上を狙いました。しかし、BAドライバーとの相性というハイブリッド型ならではの難しさもあり、なかなか思うようにはいきませんでした」(宮永氏)。
この試行錯誤の過程で、低域にBAドライバーを加えるというアイデアが生まれた。「当たりを付けていたダイナミックドライバーがあったのですが、音の立ち上がりがどうしても足りない。そこでBAドライバーを組み合わせてみたところ、立ち上がりのスピードまで納得できる低音を鳴らすことができたのです」。
こうしてMAVERICKの斬新なドライバー構成が生まれた。これに合わせて各ドライバーのバランスや相性を追い込んだ結果、ダイナミック/BA共に、「MERLIN」と同じドライバーは一切使われなかった。「ハイブリッド型イヤホンの音をまとめるのは本当に難しいことです。帯域ごとにダイナミックとBAを並べただけでは、各帯域の継ぎ目が容易に聴きとれてしまいます。試行錯誤はありましたが、結果的にMAVERICKでは、MERLINよりも理想に近いサウンドを実現することができたと自負しています」(宮永氏)。
実際、MAVERICKカスタムの低音の立ち上がりは素晴らしい。録音の良い音源のフロアタムやバスドラムを聴けば、すぐにわかる。また、私がMAVERICKで気に入ったのは、低域がレスポンスの良さに加えて、質感再現にも優れていることだ。普段からダイナミックドライバー1発のイヤホンを愛用している私にとって、優れたBAマルチドライバー機であっても、低域の質感にどこか無機質さを感じることがあった。MAVERICKで聴くベースはエレクトリック/ウッドに関わらず実在感があり、音に芯が感じられる。
MAVERICKは先にユニバーサルタイプが発売され、その後にカスタムIEM版が登場した。ユニバーサル版もカスタムIEM版も、同様のドライバー構成をとっている。
その音を実際に聴くまで、MAVERICKの「低域:BA×1+ダイナミック×1」という構成には半信半疑だった。今ではBAドライバーとダイナミックドライバーを組み合わせたハイブリッド型は各社が展開しているが、低域をBA+ダイナミックというのはあまり聞いたことがない。イロモノと言っては失礼だが、そういう類いのモデルなのではないかとさえ最初は思った。だからこそ、初めてMAVERICKを聴いて実感したオーディオ的正攻法とも言える音作りには驚かされた。BA+ダイナミックという低域構成は、どのような過程で実現したのだろうか。
「低域をBA+ダイナミックという構成にするというアイデアは、開発段階の試行錯誤の中で生まれたものです」と宮永氏は開発当時を振り返った。MAVERICKのベースモデルになったのは5ドライバーのカスタムIEM「MERLIN」で、本機は低域:ダイナミック×1、中域:BA×2、高域:BA×2という構成をとる。当初はこのモデルの構成を下地にするはずだった。
ちなみにMAVERICKユニバーサルの開発は、当初は日本で行う予定だったという。ヘッドフォン祭やポタフェスといったイベントのためにUnique Melodyのスタッフは年に数回来日するのだが、その度に日本に専用機材を持ち込み、宿泊先のホテルなどに宮永氏が赴いて、夜を徹してチューニングを行ったのだ。しかし、音質チューニングはなかなか思い通りにいかず、結果的には宮永氏が中国に赴くことになった。
難航した音作りで、特に問題になったのが低域再現だった。宮永氏は学生時代にバンドを長く続けていたこともあって、楽器の再現には明確な到達目標があった。特に長い間プレイしていたドラムについては、妥協はできなかったという。MAVERICKの音作りで問題になったのは、バスドラムの再現。「MERLIN」は低域をダイナミックドライバー1基で担っていたが、これを踏襲する形ではバスドラムの音が思い通りに再現できなかった。
「Unique Melodyは、多種多様なダイナミック/BAドライバーをドライバーメーカーと共同開発しているのですが、それらを片っ端から試しました。ダイナミックでは、振動板が薄いアルミ製の軽量タイプから、直径8mmの小口径タイプまで試して、レスポンス向上を狙いました。しかし、BAドライバーとの相性というハイブリッド型ならではの難しさもあり、なかなか思うようにはいきませんでした」(宮永氏)。
この試行錯誤の過程で、低域にBAドライバーを加えるというアイデアが生まれた。「当たりを付けていたダイナミックドライバーがあったのですが、音の立ち上がりがどうしても足りない。そこでBAドライバーを組み合わせてみたところ、立ち上がりのスピードまで納得できる低音を鳴らすことができたのです」。
こうしてMAVERICKの斬新なドライバー構成が生まれた。これに合わせて各ドライバーのバランスや相性を追い込んだ結果、ダイナミック/BA共に、「MERLIN」と同じドライバーは一切使われなかった。「ハイブリッド型イヤホンの音をまとめるのは本当に難しいことです。帯域ごとにダイナミックとBAを並べただけでは、各帯域の継ぎ目が容易に聴きとれてしまいます。試行錯誤はありましたが、結果的にMAVERICKでは、MERLINよりも理想に近いサウンドを実現することができたと自負しています」(宮永氏)。
実際、MAVERICKカスタムの低音の立ち上がりは素晴らしい。録音の良い音源のフロアタムやバスドラムを聴けば、すぐにわかる。また、私がMAVERICKで気に入ったのは、低域がレスポンスの良さに加えて、質感再現にも優れていることだ。普段からダイナミックドライバー1発のイヤホンを愛用している私にとって、優れたBAマルチドライバー機であっても、低域の質感にどこか無機質さを感じることがあった。MAVERICKで聴くベースはエレクトリック/ウッドに関わらず実在感があり、音に芯が感じられる。
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