開発の背景も担当者に聞いた
Unique MelodyのカスタムIEM「MAVERICK」を導入した理由 - リスナーに寄り添うモニターサウンドとは?
■補聴器や工業用耳栓で培ったノウハウと独自のカスタムIEM技術を融合させたUnique Melody
今回、改めて宮永氏に聞きたかったのは、Unique Melodyというブランドのバックボーンである。MAVERICKのような特異なドライバー構成で多くのカスタムIEMファンを納得させる音質を実現するためには、確かな技術力が必要となるはずだ。
Unique Melodyは、中国・広東省南部の珠海(ズーハイ)市に本拠を置いている。ズーハイはマカオ特別行政区に隣接する経済特区で、中国内外から様々な研究施設が集まる土地柄なのだという。Unique Melodyのラボも、多数の研究施設やラボが入居する集合施設の中にある。
Unique Melodyのオーナーであるリー氏は補聴器メーカーのフォナック出身で、もともと“ヒアリングプロテクション”と呼ばれる工業用耳栓の開発・製造を行うRoothというブランドを展開していた。工業化が急速に進む中国において、工場労働者の騒音被害が問題になっていたのである。このRoothはカスタムシェルを用いたヒアリングプロテクションも手がけていたのだが、この技術を応用して、イヤホンのリモールド(ユニバーサルモデルのカスタム化改造)ビジネスも平行してスタートさせていた。
そして2008年、リー氏は新たにUnique Melodyを設立した。きっかけとなったのは、現在も同社でサウンドエンジニアを務めるサム氏との出会いだった。サム氏は愛好家としてカスタムIEMの研究や開発を個人的に行っていた。リー氏は、サム氏のカスタムIEMに対する確かな見識を認め、彼を迎え入れて自らの出資でカスタムIEMブランド「Unique Melody」を立ち上げた。サム氏のカスタムIEMに対する見識と、リー氏が培ってきた補聴器や耳栓の技術を持ち合わせ、優れたカスタムIMEの開発を目指したのである。現在、珠海市の本社では約10人の社員がカスタムIEMの開発・製造に携わっている。
■Unique Melodyとミックスウェーブが「MAVERICK」を共同開発した理由
Unique Melodyの確かな技術力と可能性に目を付けた宮永氏であったが、日本で広く展開するにはまだ足りないものがあると感じていた。JH Audioや1964 EARSといった世界規模でカスタムIEMを展開するブランドと深い交流があった宮永氏にとって、それは切実なものだったという。
「ミックスウェーブが取り扱うカスタムIEMブランドは必ず、“ある一定の基準”を満たしています。それは例えばJH Audioや1964 EARSもしかりです。そこに比べるとUnique Melodyは、技術力も独創的な発想も持っていましたが、その“ある一定の基準”には達していないところがありました」と宮永氏は語る。
前述のサム氏もプロのエンジニアではなく、元々アマチュアから趣味が高じてカスタムIEM開発を始めた人物だ。プロ用途のカスタムIEMを長年手がけ、北米の音楽産業の中で徹底的に揉まれたJH Audioや1964 EARSとは根本的に成り立ちが違うのだという。
「ブランド名に『Unique Melody』とつけるくらいですから、そもそも万人受けは狙っていなかったわけです(笑)。ドライバー構成を見てもわかりますよね。しかし、プロ向けモニターとは根本的にコンセプトが異なるという点で、コンシューマー向けとしては面白いと感じました」(宮永氏)。
それでも、ミックスウェーブとして取り扱う製品としては、“ある一定の基準”をクリアする必要があった。宮永氏はその点を非常にシビアに捉えていた。
「“ある一定の基準”とは、楽曲制作の現場で鳴らされる音を、イヤホンがどれだけ忠実に再現できるかの基準です。そしてそれは、ミックスウェーブがスタジオ向けやミュージシャン向けのプロ機材を取り扱うなかで学んできたものです。Unique Melodyにはその基準とはちがったところに魅力があったのですが、逆にその基準さえ満たすことができれば、マニアックという枠を超えて多くのファンに受け入れられる製品になると直感しました。だからUnique Melodyとミックスウェーブの共同開発を実現させたのです」。
「私の仕事はディーラー業ですから、海外のイベントでまったく知らないブランドの製品を聴いて、自分の耳でそれを取り扱うかどうか判断しなくてはいけません。そういうときにこの“ある一定の基準”が製品を見極める上ではやはり重要になります」(宮永氏)。
Unique Melodyのスタッフはそれほど英語が堪能ではなかったこともあって、展示会などのイベントにはほとんど出展していなかった。製品展開も中国・韓国などのローカルな地域で行っていた。「だからこそ他のカスタムIEMブランドに比べると持っている情報が極端に少なく、しかしそのなかで試行錯誤をしていました。商品企画や技術的なアドバイスを、世界的なカスタムIEMブランドとの長年の交流でノウハウを蓄積してきたミックスウェーブが行うことには大きな意味がありました」と宮永氏は説明してくれた。
今回、改めて宮永氏に聞きたかったのは、Unique Melodyというブランドのバックボーンである。MAVERICKのような特異なドライバー構成で多くのカスタムIEMファンを納得させる音質を実現するためには、確かな技術力が必要となるはずだ。
Unique Melodyは、中国・広東省南部の珠海(ズーハイ)市に本拠を置いている。ズーハイはマカオ特別行政区に隣接する経済特区で、中国内外から様々な研究施設が集まる土地柄なのだという。Unique Melodyのラボも、多数の研究施設やラボが入居する集合施設の中にある。
Unique Melodyのオーナーであるリー氏は補聴器メーカーのフォナック出身で、もともと“ヒアリングプロテクション”と呼ばれる工業用耳栓の開発・製造を行うRoothというブランドを展開していた。工業化が急速に進む中国において、工場労働者の騒音被害が問題になっていたのである。このRoothはカスタムシェルを用いたヒアリングプロテクションも手がけていたのだが、この技術を応用して、イヤホンのリモールド(ユニバーサルモデルのカスタム化改造)ビジネスも平行してスタートさせていた。
そして2008年、リー氏は新たにUnique Melodyを設立した。きっかけとなったのは、現在も同社でサウンドエンジニアを務めるサム氏との出会いだった。サム氏は愛好家としてカスタムIEMの研究や開発を個人的に行っていた。リー氏は、サム氏のカスタムIEMに対する確かな見識を認め、彼を迎え入れて自らの出資でカスタムIEMブランド「Unique Melody」を立ち上げた。サム氏のカスタムIEMに対する見識と、リー氏が培ってきた補聴器や耳栓の技術を持ち合わせ、優れたカスタムIMEの開発を目指したのである。現在、珠海市の本社では約10人の社員がカスタムIEMの開発・製造に携わっている。
■Unique Melodyとミックスウェーブが「MAVERICK」を共同開発した理由
Unique Melodyの確かな技術力と可能性に目を付けた宮永氏であったが、日本で広く展開するにはまだ足りないものがあると感じていた。JH Audioや1964 EARSといった世界規模でカスタムIEMを展開するブランドと深い交流があった宮永氏にとって、それは切実なものだったという。
「ミックスウェーブが取り扱うカスタムIEMブランドは必ず、“ある一定の基準”を満たしています。それは例えばJH Audioや1964 EARSもしかりです。そこに比べるとUnique Melodyは、技術力も独創的な発想も持っていましたが、その“ある一定の基準”には達していないところがありました」と宮永氏は語る。
前述のサム氏もプロのエンジニアではなく、元々アマチュアから趣味が高じてカスタムIEM開発を始めた人物だ。プロ用途のカスタムIEMを長年手がけ、北米の音楽産業の中で徹底的に揉まれたJH Audioや1964 EARSとは根本的に成り立ちが違うのだという。
「ブランド名に『Unique Melody』とつけるくらいですから、そもそも万人受けは狙っていなかったわけです(笑)。ドライバー構成を見てもわかりますよね。しかし、プロ向けモニターとは根本的にコンセプトが異なるという点で、コンシューマー向けとしては面白いと感じました」(宮永氏)。
それでも、ミックスウェーブとして取り扱う製品としては、“ある一定の基準”をクリアする必要があった。宮永氏はその点を非常にシビアに捉えていた。
「“ある一定の基準”とは、楽曲制作の現場で鳴らされる音を、イヤホンがどれだけ忠実に再現できるかの基準です。そしてそれは、ミックスウェーブがスタジオ向けやミュージシャン向けのプロ機材を取り扱うなかで学んできたものです。Unique Melodyにはその基準とはちがったところに魅力があったのですが、逆にその基準さえ満たすことができれば、マニアックという枠を超えて多くのファンに受け入れられる製品になると直感しました。だからUnique Melodyとミックスウェーブの共同開発を実現させたのです」。
「私の仕事はディーラー業ですから、海外のイベントでまったく知らないブランドの製品を聴いて、自分の耳でそれを取り扱うかどうか判断しなくてはいけません。そういうときにこの“ある一定の基準”が製品を見極める上ではやはり重要になります」(宮永氏)。
Unique Melodyのスタッフはそれほど英語が堪能ではなかったこともあって、展示会などのイベントにはほとんど出展していなかった。製品展開も中国・韓国などのローカルな地域で行っていた。「だからこそ他のカスタムIEMブランドに比べると持っている情報が極端に少なく、しかしそのなかで試行錯誤をしていました。商品企画や技術的なアドバイスを、世界的なカスタムIEMブランドとの長年の交流でノウハウを蓄積してきたミックスウェーブが行うことには大きな意味がありました」と宮永氏は説明してくれた。
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